【短編小説】2回目のスタートライン☆第8話

2回目のスタートライン_8話

チエの場合①

女の友情?

あ~あ。もうやってらんないよ。

結局、飲み会の勢いであの二人に強引に申し込みさせられちゃった、無期雇用派遣サービスの。

そしたら、書類選考に通っちゃってさ。これから説明会ってワケ。

だいたい勝手すぎるじゃん。別に本気で働きたくないんだし。友情の押し売りじゃん、好意の押し付けじゃん。

あ、いちおう自己紹介しとくね。私、チエ。

特技は笑顔。趣味は買い物とネイル。あと、カフェ巡りも好き♡

仕事? 今はいちおう(あ、口ぐせみたいになっちゃった)派遣社員で大企業の受付。

すごいんだよ~、ビジネス本なんか書いてる有名人社長とか~、来社するの。

オーラびんびんで、かっこいいんだ!

ウチもそういう人と結婚したいから、大手が多い派遣社員は辞めらんないよね、マジで。

派遣は慣れてるけど、無期雇用派遣ってゆうのは初めて。

親友のアキとカスミに強引に勧められちゃって、断り切れなかったんだよね。だって、2人が本気で心配しているのは分かったから。

でも(これは口ぐせじゃないよ)、女の友情ってちょっとうっとおしいかも~。実はウチ、ホントはそんなにアホじゃないから、アキがウチのこと嫌ってることも知ってる。

嫌ってる…とは少し違うのかもな。アレルギーだったりして。だとしたらウケる。

まあ、優等生ちゃんのアキがあんまり言うから、無期雇用派遣を受けてみたワケです、ハイ。

無期雇用派遣ってさ、一般派遣とは違って派遣会社が無期限で雇ってくれるみたいなんだけど、普通の派遣登録より採用、厳しいらしいんだよね。

説明会のあと、テスト受けて面接やって、合格しないと無期雇用派遣にはなれないんだって。でも、そこまでやっても正社員とはちょっと待遇が違うとか。

チエの場合、いつか結婚して専業主婦になって、ダンナ様のお給料で贅沢な暮らしをする予定だから、正社員じゃなくていいんだけどね♡

まだ未来のダンナ様は見つかっていないんだけどさぁ…。

だから、見つかるまで無期雇用派遣で働くのは悪くないかもとは思う。

…思うけどさぁ…なんか、アキに命令されて行くのはやだなぁ~

言ってることは正しいんだけど、硬いというか頑張りすぎというか…。口うるさいし。

アキのことは嫌いじゃないんだけど…なんかちょっとやりにくい。

女の友情って難しいんだよね。

活路?

着いた先は、某大手人材派遣会社。

ここは派遣登録したこともなく、初めて来る会社だけど、オフィスが綺麗でワクワクする。

綺麗なオフィスで疲れない仕事して、いい男ゲットしたいな~。そんなことを思いながら受付を済ませ、オフィス内の一室で待っていたら、説明会が始まった。

会社説明や無期雇用派遣の働き方、給料や福利厚生についての説明があって、その後でグループワークだって。ちょっとしたディスカッションみたいなんだけど、私はこうゆうの超絶得意分野!

口論するのは嫌だけど、あっちの人の意見とこっちの人の意見をまとめて、自分もちょこっとだけアイデアみたいなの出して円満解決! へと導く~みたいな?

さらにマンツーマンの面接を経て、無事帰宅の途へ。

 

疲れた~。最後の面接も、意外と突っ込んだこと聞かれてビックリしたよ。無期雇用派遣だって派遣は派遣だし、誰でも受かるのかと思ってたけど、なんだか厳しいんだね。

1週間~2週間で合否の連絡があるらしいけど、こりゃ無理だな、ちょっと残念。

説明会でしっかりと話を聞いてたら、「無期雇用派遣、いいじゃん!」ってガチで思っちゃったんだよね。

福利厚生もたっぷり使えるし、月給制だから毎月の出勤日数でお給料の増減を心配することもないし。しかも、事務未経験でも普通の事務のお仕事に就けるとか。

事務って、やはり魅力だよね。でも、PCとか事務スキルは今の派遣先の受付だと磨けないしなぁ。

…ちょっと、他の派遣会社の無期雇用派遣も調べてみよっかな?

まさかの合格…意外と狭き門?

あれから1カ月、ウチにしては頑張った方だと思うよ、ガチで。

結局、最初に受けた会社は落選…む、無念…。

で、それから4社受けた。無期雇用派遣ってね、大手の派遣会社がそれぞれにサービスを展開しているみたい。

その中で合格をもらえたのが、たった1件だけだった。

なんと狭き門! 無期雇用派遣って、マジで派遣社員なの? 厳しすぎるっしょ!

なんだか、いわゆる「圧迫面接」っていうの? そういう面接もあった。「どうして、その仕事をやってみたいんですか?」とかね。普通の派遣社員の登録ではありえない厳しいツッコミの連続で、チエにしてはちょっと苦戦しました、ハイ。

まあ、数々の合コンで鍛えた話術で何とか乗り切ったけどね!!(これ言うとアキが怒るだろうな~)

ホントのこと言うと、就職面接の攻略本を買ったんだけどね!!

ハウツー本って皆1,000円以上したけど、いろいろ勉強になったから、安いもんだったよ。

「相手の質問の意図を汲み取って答えを考える」とか、合コンにも生かせそう…。マナーの基本もステキ女子としては必須だよね~。

転んでもタダでは起きないチエ、偉い!

というわけで、無期雇用派遣はガッツリ対策して、ギリギリ合格でした。

その代わり、内定してからの流れはスムーズで、派遣される前の研修もみっちりと詰め込まれて「チエ、期待されてるかも~」とちょっと優越感あった。

同じタイミングで合格した人とも仲良くなって、研修後に祝杯あげたんだ。「みんながんばろーね」みたいに。

ちょっと青春っぽくない?

そして派遣先へ…女性の働き方とは?

電話

研修が終わって、派遣されたのは、以前の一般派遣と同じく、大手企業だった。ただし、今回は営業事務として営業部へ配属。

受付みたいにVIPに会うことはない職場だけど、活気があって社員は優しかった。

最初はパソコンで簡単な文書を作成したり、データを入力したり。

コピー機の使い方、書類のファイルの仕方など、細かいことも丁寧に教えてくれる。

来客対応の仕方は、受付経験が役立った。チエだって無能なわけじゃないし!

専属で仕事を教えてくれるのは、ちょっと年上の女性社員でシバサキさんという人。

結婚してて、今は子育て中のため時短勤務なんだって。

「子育て忙しそうなのに、仕事続けているんですね~」

「そうよ。だって、プライベートも大切だけど、自分のキャリアも諦めたくないもの」

先輩女性の放つ言葉は凛々しくて、大変なこともあるんだろうけど楽しそうに働いている姿がかっこよくて、シバサキさんのことが一気にスキになった。

アキが小生意気に説教してくるのとは違って、圧倒的な説得力。

小学校低学年の息子さんがいて、働きながら子育てしてる。朝は子どもの学童用のお弁当を作って、自分と子どもの身支度して…。あ、旦那さんは単身赴任中なんだって。だから無理なく子育ても仕事もできるように、時短勤務を選んだらしい。

めっちゃ大変そうだけど、働く女性ってかっこいいな~。

今日は珍しく息子さんが風邪をひいたらしく、シバサキさんはお休み。ちょっと不安だけど、頑張ろう。

「おはよう、チエちゃん。今日は分からないことあったら、俺に聞いてね!」

「チエちゃん、質問あったら内線○○番にかけてね」

みんなが心配して声をかけてくれる。チエ、あいかわらずモテモテですね♡

さあ、がんばりますか!…とデスクに付いた途端、一本の電話。

「もしもし、シバサキさんいる? 頼んでいた書類、ちょっと早めに準備してほしくて。急で悪いけど」

え~、マジか…。どうしよう~、せんぱ~い助けて~!!!

第9話に続く
2回目のスタートライン_9話【短編小説】2回目のスタートライン☆第9話

執筆:chewy編集部 みや (@miya11122258