確かなプログラミングを学ぶなら>

キャズムの意味とは?キャズムを超える方法や事例、イノベーター理論との関係を解説

キャズムとは『普及するまでの溝』のこと

新人

今月発売開始したこの電気ポット、最初の生産分はほぼ売れたみたいですけど、伸び悩んでますよね。
勢いがあったからヒット商品になるかと思ってたんだけどね。もしかしたらキャズムが生まれてるのかもしれないわね。

先輩

新人

宣伝強化して待つしかないんですかねぇ。

新しい商品やサービスの提供が開始され、安定した売上をあげられるようになるまでに、一時的に売上が落ち込む期間があります

ビジネスでは、この落ち込みを『溝』にたとえ、『キャズム』というカタカナ用語で表現します。

そして、このキャズムについてしっかり理解するためには、ほかにも知っておいたほうがいい言葉があります。

ここではキャズムの基本的な意味だけでなく、キャズムが生まれる理由や超え方のポイントなどもわかりやすく解説します。

キャズムと一緒に覚えたい『イノベーター理論』

『イノベーター理論』とは、イノベーションを普及させていくことに関しての理論。この理論を理解していたほうが『キャズム』という言葉を理解しやすくなります。

キャズムについての解説を始める前に、まずここでは『イノベーション』と『イノベーター理論』について学んでいきましょう。

イノベーションとは?

イノベーションとは『革新』や『一新』という意味をもつカタカナ用語です。そして、『イノベーションを起こす』とは、これまでの常識を覆すほど社会的の大きな変化をもたらすことをいいます。

そして、このイノベーションを起こすのに重要な存在となるのが『イノベーター』と呼ばれる人です。

そして、それに関連してアーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードといった層にあてはまる人も存在します。

イノベーター
革新者。新しい物が好きで冒険心にあふれており、誰よりも早く新しいアイデアや商品を採用する人。
アーリーアダプター
初期採用層。イノベーターの次に新しい物が好きで冒険心にあふれている人。
アーリーマジョリティ
前期追随層。新しい物やサービスを取り入れることには慎重だが、一般の人よりは早く手を出す傾向にある人。
レイトマジョリティ
後期追随層。周りの人の様子をうかがいながら、慎重に新しい物やサービスを取り入れる人。
ラガード
遅滞層。もっとも保守的で、新しいものやサービスにあまり関心がなく、積極的に取り入れない人。

身近な人を思い浮かべてみても、「新しい物をすぐに買って取り入れている」「新しい物に興味がない」なんていう人がいませんか?

イノベーションを起こすのは、新しい物に興味があり、先駆けてアイデアや商品を採用できる人です。

なお、イノベーターについては次の『イノベーション』の記事でも解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください。
イノベーションを起こすとは?その意味や定義を具体例を交えて徹底解説

イノベーター理論とは?

イノベーター理論とは、簡単にいうと『イノベーション』を普及させていくための理論です。

たとえば、何か社会的革新をもらたすほどの新しいサービスが開発されたとします。そこで登場するのが『イノベーター』『アーリーアダプター』といった人です。

まず、イノベーターと呼ばれる層がいち早く新しいものを試します。そして、一部のイノベーターの情報や、新しいものやサービスの宣伝内容によりアーリーアダプター層の人達が試し始めます。

そして、アーリーアダプターにあたる人の「これいいよ」「これはオススメ!」という情報から「よし使ってみよう!」とすぐに手を出す人がアーリーマジョリティです。

このように、発売当初から、どのような形で新しい物やサービスが普及していくか示したものがイノベーター理論になります。これについては次の記事で詳しく解説しているので、キャズムをより理解するためにもぜひ読んでください。
イノベーター理論を一人勝ちしたLINEを事例に徹底解説

キャズムの意味

イノベーションやイノベーター理論についてわかったところで、本題のキャズムの解説に入っていくことにしましょう。

キャズムとは

新しい物やサービスが世の中に登場したからといって、すぐに一般消費者に浸透するわけではありません。

まず、イノベーターが利用し始め、アーリーアダプターが使い始めます。そして、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードと広まっていきます。

しかし、『アーリーアダプター』から『アーリーマジョリティ』に広まる前に、一時的に伸び悩む『溝』と呼ばれる期間が生まれてしまいます

ここにできる溝(=一時的な伸び悩み)をキャズムといいます。

キャズム理論とは

キャズム理論とは、マーケティング理論の一つです。

ラガード層の人達まで浸透した商品やサービスは、その市場の開拓はほぼ成功したといえるでしょう。しかし、そこに到達するには、必ずキャズムを超えなければいけません。これを提唱したものがキャズム理論となります。

キャズムが生まれる理由

各市場は大きく次の2つに分けられます。

■初期市場(革新者層)
→イノベーター、アーリーアダプター

 

■メインストリーム市場(一般層)
→アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード

そして、キャズムが生まれる理由は、この2つの市場にあてはまる消費者の価値観の違いにあります。

【初期市場の消費者】
新しいものは誰よりも早く試してみたい。

 

【メインストリーム市場の消費者】
本当に良いものかどうかわかるまでは手を出したくない。

初期市場にいる消費者が占める人数は市場全体と比較するとごくわずかです。

そのため、どんなにいい商品やサービスであっても、アーリーアダプターからアーリーマジョリティに浸透するまでにはどうしても時間がかかってしまいます。

そのため、キャズムが生まれてしまうというわけです。

メインストリーム市場の消費者が求めているのは『安心感』なんだね。

キャズム理論の成功事例2選

今では世間で当たり前に使っている商品やサービスでも、キャズムを超えるためにさまざまな工夫をしています。ここでは成功事例を2つ紹介します。

メルカリ

フリマアプリで有名なメルカリは、急速に世間に認知されたイメージを持つ人がいるかもしれません。しかし、CMを流し始めたのは200万ダウンロードを達成してからでした。

メルカリ初のCMは、全国放送のテレビ番組『テラスハウス』で人気の菅谷哲也さんと筧美和子さんを起用しました。また、地域限定ではなく全国放送にすることで、宣伝効果が拡大。それにより急速に認知度が高まり、キャズムを超えられたとされています[efn_note]参考:フリマアプリ「メルカリ」、初のテレビCMが5月10日(土)より全国でオンエア|mercari プレスリリース[/efn_note]。

LINE

LINEが日本でのサービスを開始したのは、mixi、Twitter、Facebookよりも後だということを覚えていますか?それなのに、今ではこれらのSNSに負けないほど大規模なサービスです。

LINEは、当初写真共有を目的としたツールとして開発をしていました。しかし、開発時期と東日本大震災の時期が重なり、『素早くメッセージのやりとりができるツール』が必要と考え、方向転換しました。そのため、LINEのサービス提供当初は単純なメッセージのやりとりしかできませんでした。

そこから、さらに開発を進め、4カ月後に『無料通話』と『スタンプ』の利用を開始。それにより、利用者はどんどん増え、レビューに書かれている要望や問題点も参考にし、機能の修正や追加を随時行っています。

必要な時期に必要なツールを配信したことで、キャズムを超えた成功事例になったといえます[efn_note]参考:どのようにしてLINEは生まれたのか|東洋経済ONLINE[/efn_note]。

キャズムを超える方法

市場で勝ち残るためには、必ずキャズムを超えなければなりません。ここではそのためにチェックしておきたいポイントを紹介しておきます。

キャズムの向こうとこちらの違いを明確にする

キャズムの向こう側に足を踏み入れるためには、こちら側との違いを明確にしなければなりません。しっかり調査して研究すれば、どこかにニッチ(隙間)な市場があるはずです。

アピールポイントや顧客層の見直しをしても、どうしても超えられない場合は、ブルーオーシャン戦略も視野に入れる必要があります。ブルーオーシャン戦略とは、競争相手のいない未開拓市場へ参入するための戦略のことです。
ブルーオーシャンの意味とは?ブルーオーシャン戦略って何?会社の事例もご紹介

安心感をアピールする

メインストリーム市場(一般層)にいる消費者は、「これは利用しても大丈夫」という安心感がなければ取り入れない傾向にあります。たとえば、こんな方法があります。

・よい口コミをサイトに掲載する
・メリットを強調して宣伝する
・どんな効果があるのかを実演してみせる など

自分の目で見て確認すると安心感も高まるというわけだね。

キャズムの使い方・例文

キャズムの意味がわかっても、実際の会話にどのように取り入れればいいのかわからないという人がいるかもしれません。そこで、使い方を例文でチェックしておきましょう。

例文1
売上が停滞しているため、マーケティング部全員でキャズム理論を勉強し直すことになった。
例文2

先月くらいから売上が伸びてきたわね。どうやらキャズムを超えたみたいね。
例文3
おそらくキャズムを超えたと思われるが、今後市場で生き残るために、顧客層や消費者ニーズの調査を強化しておこう。

キャズムを乗り越えられる戦略を練ろう

日本でただ一つの市場を切り開いているところは少なく、多くの企業が競合他社と戦っています。その中で、新しい製品やサービスもどんどん提供していくことでしょう。

勝ち残るためにもキャズムを乗り越えられる戦略を立てて事業を進めていきましょう。