会社との契約が満了。これからどうしよう?
「直接雇用が可能の会社だから社員になれるチャンスもありますよ」
仕事内容は、関西地方にあるオフィスチェアの製作工場の製造ラインに入っての部品の組み立て。またフォークリフトを扱って資材の運搬を担うことも。
34歳のとき、お世話になっていた派遣会社から紹介していただき、安定して働けそうだと興味を持ち入社しました。
直接雇用での採用ではありましたが、正社員ではなく契約社員としての採用でした。
正社員になりたいとは思えない環境だった
この仕事を続けていくためには契約社員から正社員に昇格しなければいけません。上長からの推薦があれば正社員になるチャンスはありましたが、この会社で正社員になりたいとは思いませんでした。
労働環境はいいとはいえず、残業がだいたい1日4時間、月にすると50時間ほどありました。1日4時間なので、7時から勤務を開始したとしても19時くらいまで仕事をしていることになります。遅番のときは深夜0時まで職場に残ることも珍しくはありませんでした。
また一般的な工場では、昼休み以外に午前午後10分ずつ休憩をとりますが、前職では5分しかありませんでした。移動するだけで終わってしまう時間のため一息つく間もありません。正直体力的にもかなりしんどいものでした。
4時間以上の残業が続いた時は帰って寝るだけの生活。休日も平日の疲れを取るため1日引きこもることも少なくありません。ただなんとなく仕事をこなして1日が終わる日々でした。
そして給料も決してよくありませんでした。残業代がもらえることは幸いでしたが、額面は18万円。残業代を入れて24万円ほどでした。
基本給は6年勤務して5,000円上がったくらいで、高いものではありません。またボーナスも5年以上勤務するまではもらえず、実際にもらえるようになってからも金額は決してよくありませんでした。
逆に、生産が落ち着く5、6月はコストを抑えるため週休3日制になります。もちろん残業はなく勤務時間が減るため、給料がいつもの半額くらいになる月もありました。このように収入の波が激しいため、やりくりにも困っていました。
何より一番辛かったのは上司との人間関係。
「入社したらこっちのもんや!」
面接の時は優しく接してくれていたのですが、入社が決まった時から突然態度が変わり、暴言を吐かれたりムリな仕事を強いられたりが当たり前のように行われていました。
「労基に言えるものなら言ってみろ」
と強気な態度を取られ続け、上司という立場を利用して仲間外れにしたり無視をしたり、気に入らないという理由で最低評価にされました。
契約社員から正社員への登用も上司の推薦が必要だったので、自分が推薦されることは絶対にないと悟りました。上司に気に入られた人間のみが推薦されていくのです。仕事ぶりではなく自分のお気に入りかどうかで評価する人が出世する会社自体に嫌悪感を覚えました。
今となっては後悔していますが、長く働いていたらいつかいいことがあると思って働いていました。石の上にも三年といいますが、今の時代は大変な職場でも長く勤める方がいいのか、それとも見切りをつけるべきなのか。そんなことを考えながら働き、結局最後まで上司との関係が改善されることはありませんでした。
最終的に、私の契約が満了になるタイミングで転職を決断しました。
40代での転職。すぐに転職先を見つけられた
退職は次を決めてから行うほうが精神的にも安心。退職時期がわかっていたので、その時期に合わせて、仕事の合間に転職先を探しました。
職種はいままでの仕事を活かせる工場勤務で絞り、今よりも残業が少なく安定して働ける企業を条件にスマホで求人を見ていたところ、中部地方にある大手自動車メーカーの工場勤務の求人に目が留まりました。
寮付きで給料もよく、とてもいい条件。こういった求人は実際に就業してみると、記載内容と実際の給料が違うことも少なくはありませんが、以前自動車メーカーで勤務した経験があり、記載通りの給料がもらえていたのである程度信用しました。
「超大手企業の工場で一度働いてみたい」という気持ちもあり、勤務体制やボーナスといった待遇がどれほど充実しているのか、純粋に興味がありました。
気になったら即行動する性格なので、ほかの求人はあまり調べず、まずは応募してみることに。
メーカーへの就業方法は期間工社員としての入社か、派遣会社の社員として出向するかの二択でした。
私は派遣社員として出向する形での入社となりました。
実は期間工社員として入社をすると採用祝い金がもらえるとのことでしたが、私の場合年齢を考慮して派遣社員を勧められ、1度の面談で採用が決まり、無事に転職活動を終えました。
転職して余裕が生まれた
給料が上がり、基本給が前職での残業込みの給料と同額になりました。前職では長くて月50時間残業することもあったので、その分時間が浮いたのと同じです(笑)。
大手企業なので労働環境も安定していました。丁寧なマニュアルもあるため仕事もしやすく、残業も長くて2時間。休憩もしっかり取れます。
また寮も家賃だけでなく、水道光熱費まで負担してもらえるのは大きかったです。結果的には給料が上がっただけでなく、生活費もかなり抑えられたので精神的にもかなり余裕を持てるようになりました。
人間関係に不安はありましたが、優しく話しかけてくれる先輩もたくさんいて、労働環境が大幅に改善されました。転職できてよかったなと感じながら働いてたのを覚えています。
このままでいいのか?
現在の工場に勤めて2年ほど経ったころ、再びこのままでいいのだろうかと考えている自分がいました。2年ほど勤めていると、やはり人間関係も変化していきます。入社当初は色々話しかけてくれたりと歓迎してもらえていたですが、毎日一緒に働くにつれて少しずつ会話も減っていきました。
仕事中は会話がなくても問題はないのですが、休憩中もコミュニケーションを取ることが少なくなっていることに気まずさを感じていました。
私は楽しく働きたいし仕事外でもコミュニケーションを取りたかったので、せめて休憩中くらいはワイワイ話せることが理想で、私自身が場を盛り上げようとしたこともありましたが、会話がうまく続かず。
さらに慣れてきた頃、上司から偉そうに指示されることが増えてきて、上司はどこもこんな人ばかりなの?と感じる一方で、自分にも悪い面があるのもしれないとか、向いていないのだろうと自信もなくなりました。
給料に関しても、前職よりも上がってはいますが、昇給は少なく残業も削減するという方針なので今より上がることはほぼありません。残業が少ないのは嬉しいのですが、もっと稼ぎたいという願いを叶えるのは難しいことでした。派遣という雇用形態もあり、切られたら収入がなくなってしまうという不安もありました。1つの収入に頼るリスクに対しても、少しずつ不安が募っていきました。
前職とは比べものにならないほど待遇がいいのは間違いありません。労働環境も整っているし、パワハラをしてくるような人もいません。
ただ自分の性格は変えられず、私はコミュニケーションが下手なのです。きっと対人関係の悩みはどの職場にいっても生まれてしまうだろうと悟りました。
2年近く勤務する中で、そういった新たな悩みが生まれ、再びこのままでいいのだろうかと感じはじめていました。
空いた時間で副業にチャレンジ
いろいろと考えた結果、私はMacのノートパソコンを所持していたので、以前から興味のあった副業に挑戦してみることに。
基本的に毎日定時で仕事を終えるので、アフターファイブや休日に自分の時間を多く確保できるので、十分に副業に充てられます。
そう考えていたときに、YouTubeを見て入会したオンラインサロンのオーナーが、動画のカットやテロップ入れなど編集してくれる人を募集していたので「やらせてください」と手を上げました。それから動画制作に関わらせていただけることに。
初めて自分の仕事以外でも収入を得られたことに、ワクワクしました。
自分の編集した動画が多くの人に見られ評価される。
閲覧数や登録者数と、仕事の結果が一目でわかるのでもっといい動画を作りたい!
という気持ちが徐々に湧いていきました。
「一生懸命情熱を傾けられる仕事」というのはこういうことなのかと、自分の好きなことに気づけました。
現在登録者も5万人と順調に増えています。その活動に自分も貢献できていると思うととてもうれしいです。
副業をする前は、本業の仕事をこなしていくことに精一杯で、職場内での世界しか見えていないような気がしていました。
しかしこの動画編集の仕事をきっかけに、クラウドソーシングで副業を始めたい、自分でYouTubeチャンネルを開設してみたいという内なる好奇心が芽生えていきました。
副業を始めたことで自分のやりたいことが見えた
思い立ったら即行動をしようと、動画編集の仕事を始めた翌月にはクラウドソーシングサービスであるランサーズに登録し、今年の始めから本格的に副業をスタートしました。
いくつかお仕事をいただいたことでお仕事ランクもレギュラーランクからシルバーランクに上がり、仕事における信頼も得られるようになりました。
ランサーズに登録している方の中にはクラウドソーシングだけで年収1,000万円を稼いでいる人もいて、夢があるなとモチベーションも上がります。自分も頑張ったらそうなれるんじゃないかって。
今では副業の時間がとても楽しく、仕事を終えたあと「さあ自分の仕事!」と意気込んでいます。
仕事後急いで家に帰り平日は3時間、土日は5時間と大体週25時間くらいを副業の時間に当てています。副業の時間を作るために家事なども効率的にこなすようになりました(笑)
クラウドソーシングの他にも、自分でYouTubeチャンネルを始めました。
今年の1月から50本の動画を投稿しています。最初はほとんど閲覧されなかったのですが、5月くらいに投稿した動画が2万回再生され、1ヶ月で77人も登録者が増えました。現在では150名に登録してもらっています。
何気なく始めたYouTubeですが、少しずつ芽が出始めているので登録者数1,000人を目指して、今後も投稿を続けていきたいと思っています。
また副業を始めたことで、自分に自信がついて本業も以前よりも楽しく働けるようになりました。本業でも副業でも今一番いきいきと働けています(笑)
「もっと自分のスキルを伸ばして自分にしかできない仕事を増やしていきたい」
「どんな人にも平等に与えられている時間、この時間を大切に有効に使いたい」
こんな目標を持てたことが転職して一番よかったことかもしれません。
取材・執筆:渡辺健太郎(けんわた)(けんわた@美容とジェンダー)
編集:chewy編集部 はら