派遣とは
派遣は、正社員、契約社員、パート・アルバイトなどとともに、働き方の選択肢の一つです。派遣社員は、人材派遣会社から企業へ派遣されて就労します。
派遣社員を直接雇用しているのは人材派遣会社ですが、仕事の指示をするのは派遣された先の企業であることが一般的です。(派遣会社の社員が業務指示を行う「アウトソーシング」を扱っている派遣会社もあります。)
派遣の働き方には、登録型派遣と無期雇用派遣(常用型派遣)があります。
登録型派遣とは
登録型派遣は、派遣会社に登録しておき、仕事が決まったら契約を結んで、定められた期間だけ派遣先で働く働き方です。派遣先が決まったら「有期雇用契約」を結び、期限が終わると派遣会社との契約が終わります。
期限が終わるごとに仕事がなくなるため、長期的に安定した収入が得にくい反面、短期間だけ働きたい人には便利な働き方です。
無期雇用派遣とは
「常用型派遣」とも呼ばれるもので、登録型派遣と違って雇用期間が無期限となる派遣です。派遣先での仕事が終わっても雇用契約が続き、給料も継続してもらえます。
派遣会社で期限なく雇用されますが、派遣会社の正社員の待遇と同じではありません。また、派遣会社側は働く期間を途切れさせないようにする傾向があり、気に入らない仕事を押し付けられることも。仕事のえり好みがしにくい面はありますが、長期にわたって安定的に収入を得やすい働き方です。
ただし、まだあまり一般的ではなく、いわゆる「派遣」というと無期雇用派遣ではなく、登録型派遣を指します。
登録型派遣の仕組みと基本ルール
登録型派遣は、「有期雇用契約」を結んで一定の期間だけ働く派遣です。仕組みやルールについてもう少し詳しく知っておきましょう。
登録型派遣の仕組み
登録型派遣では、派遣労働者は派遣先で働きますが、雇用しているのは派遣元である派遣会社となります。派遣会社への登録や仕事紹介、応募までは「転職サイト」や「転職エージェント」と似ていますが、仕組みは全く違います。
転職サイトなどは一度仕事が決まったら、サイト利用は終わりますが、派遣社員と派遣会社の関係はずっと続きます。また、派遣社員は派遣会社の福利厚生を利用することも可能です。そのため、派遣会社の選択は長い目でみて、より慎重に行わなければいけません。
覚えておきたい3年ルール
派遣には、3年ルールと呼ばれる働き続けられる期間の決まりがあります。これは2018年に改正された派遣労働法上のルールで、以下のような内容になっています。
- 派遣社員は同じ派遣先の同じ部署で3年以上働けない
- 派遣社員は同じ派遣先の違う部署であれば3年後も働ける
- 3年以上派遣社員を受け入れるなら労働組合か労働者の代表者から意見聴取が必要
ただし、同じ人が3年以上就業する可能性が出ることもあります。その場合には、派遣会社は以下の措置をとることが求められます。
- 直接雇用してもらえるように派遣先に依頼する
ただし、派遣先は直接雇用の義務はありません。そのため、直接雇用されないこともあります。
- 3年後に別の派遣先を紹介する
- 派遣社員を無期雇用にする
- 有給で教育訓練を行う
- 紹介予定派遣を紹介する
また、3年ルールが例外になるケースもあります。
・派遣元に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
・60 歳以上の派遣労働者を派遣する場合
・終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
・日数限定業務(1 か月間の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ 10 日以下で
あるもの)に派遣労働者を派遣する場合
・産前産後休業、育児・介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣
する場合
あらかじめ期限が決められているプロジェクトや日数限定、産休の代替などの場合には3年ルールは例外…?
派遣とパートの違いとは?
派遣社員と同じく主に時給で働く方法に、パートやアルバイトがあります。派遣とパートは働き方は似ていますが、雇用の仕組みが異なります。
派遣社員は派遣会社に雇用されており、派遣先で働きますが、パートは就業する会社やお店などに直接雇用されています。また、派遣社員(いわゆる登録型派遣)は雇用に期限があります。
社会保険は、派遣社員もパートも一定の条件を満たせば加入できますが、加入する保険もパートは就労する会社、派遣は派遣元の保険になります。
派遣と正社員の違いとは?
派遣社員と正社員も、雇用されている会社がそれぞれ違います。さらに大きな違いとしては、非正規雇用と正規雇用の差が挙げられるでしょう。派遣社員は期間を定めた雇用契約により働く非正規雇用にあたり、正社員は期間の定めのない正規雇用契約です。
派遣は即戦力が求められがちですが、正社員は期間の定めがないため、時間をかけてゆっくり育成します。お給料も正社員は長期雇用によってコンスタントに上がりますが、派遣社員は一企業内で長くキャリアを積めず、ほぼ昇給が望めません。
■ 紹介予定派遣とは
派遣の働き方の中には、将来的に正社員(契約社員)を目指せる「紹介予定派遣」があります。最初の期間(最大6カ月)は派遣社員として働きますが、その後は派遣先企業が直接雇用することが前提となっています。
派遣社員も派遣先企業も、派遣就労中に相性をみることができ、マッチングミスを減らすことができる働き方です。
登録型派遣のメリット・デメリット
派遣の働き方は正社員やパート、アルバイトと違っており、その違いから派遣ならではのメリットもデメリットも生まれます。登録型派遣を選ぶ際のポイントとしていいことも悪いことも押さえておきましょう。
登録型派遣のメリット
■ 自分のライフスタイルに合わせて働きやすい
登録型派遣のメリットの一つは、自分のライフスタイルや家庭の事情などに合わせやすいことです。残業や労働時間など、就業の条件を絞りやすく、正社員よりも柔軟な働き方を選べます。
■ バイトよりも福利厚生が充実
派遣社員は、派遣会社の福利厚生サービスや社会保険を使えます。社会保険はパートやアルバイトでも、一定の条件を満たすと加入できますが、福利厚生までは十分に活用できないことも多いものです。また、中小規模の企業では福利厚生サービスが不十分なこともあります。
ところが派遣社員なら派遣会社の社会保険はもちろんのこと、質の高い福利厚生サービスをフル活用できます。派遣会社も登録してもらうための魅力として、さまざまな福利厚生サービスを展開、大きく宣伝しています。
■ 大手企業・人気企業でも就業しやすい
派遣社員の魅力の一つに、大企業や人気企業の求人が多いことも挙げられます。派遣社員なら正社員ではなかなか入れない大手企業や人気企業でも働くことが可能です。
正社員にはなれないものの、大企業の活気ある職場や充実した施設設備を体験でき、レベルの高い仕事に触れることができます。
登録型派遣のデメリット
■長期的なキャリアアップ・待遇アップがしにくい
派遣の仕事は、どちらかというと職務が限定的で長期的なキャリアアップは難しくなります。ずっと同じ会社で働き続けられないため、長期的で難易度の高い仕事を与えることができず、正社員の補佐的な内容が多くなりがちです。
仕事の内容が限られると、お給料等の待遇面もアップしにくくなります。また、たとえスキルや時給がアップしても契約期間が満了した時点でキャリアが途切れ、またほかの仕事を探さなければいけません。
■派遣先の社員との間に壁を感じる
派遣社員と正社員の間にメンタル上の壁を感じることもあります。派遣社員と正社員では、派遣先企業の待遇も違いますし、仕事内容や権限も違うことが多いものです。
また、正社員が派遣社員のことを「お客さん」「外部の人」として扱うこともあります。同じプロジェクトに関わっていてもお互いに仲間と思えないこともあるようです。
登録型派遣がおすすめの人とは
派遣はメリットもデメリットもある働き方ですが、それは正社員やパート・アルバイトも同じです。中には派遣で働く方が都合がいいと感じる人もいます。
子育て中の主婦(主夫)
派遣社員ならば、残業のない仕事や時短労働など、保育園のお迎えや家庭に重心を置いた働き方がしやすくなります。そのため、子育て中の家庭の主婦(主夫)などに派遣の働き方は人気です。
また、世帯収入の主を担っていない人が、配偶者や親の扶養内で働きたい時にも便利です。短時間労働はもちろん、曜日限定や週の労働日数を減らした働き方もできます。
主な世帯収入を稼ぐ人が転勤族
派遣は、最初から決まった期間だけ、無理なく働くのに適しています。たとえば、主な世帯収入を稼ぐ配偶者が転勤の多い仕事だったら…、正社員になれば転勤のたびに退職するか配偶者に単身赴任させることになるでしょう。
その点、派遣社員ならば派遣先も期限ありきで受け入れてくれるため、転勤が決まっても周りへの影響を最小限にとどめることができます。全国に支店や求人のある派遣会社ならば、転勤した先でも仕事を始めやすくてさらに安心です。
実践経験を積んでキャリアチェンジを目指す人
派遣の働き方は、経験を積むための修行の場としても使えます。未経験の場合、いきなり正社員転職は厳しいものですが、派遣で得た経験を元にすれば、転職の可能性が高まりそうです。
未経験から憧れの仕事に就きたい人や資格を得たのち、実践経験を積みたい人などに向いています。
進学や留学費用を貯めたい人
派遣はパートやアルバイトよりも時給が高めに設定されていることが多いものです。そのため、まとまったお金を一定期間で稼ぎたい人にも向いています。有期雇用だから、効率よく稼げて、あと腐れなく辞められます。
キャリア・スキルを余すところなくいかしたい人
派遣であれば、プロジェクトや部署単位で仕事を選ぶことも可能です。より自分のスキルや希望に合うポストを探しやすく、思う存分能力を発揮して働けます。キャリア形成やスキルアップの足掛かりとしても一つの選択肢になりそうです。
無期雇用派遣のメリット・デメリット
無期雇用派遣の働き方は、正社員やバイトとは違いますし、同じ派遣でも登録型派遣とも違います。無期雇用派遣ならではのメリット・デメリットをみてみましょう。
無期雇用派遣のメリット
■ 月給制で収入が安定
無期雇用派遣は、正社員に準ずる形で働けるため、収入が安定します。基本的には期限のない月給制で、派遣期間満了後、次の仕事までの期間も収入が得られます。
■ 未経験可が多く研修も充実
無期雇用派遣では、未経験でも働ける環境が整っており、経験がなくても雇用して育ててもらえるチャンスがあります。ただし、未経験から育ててもらう都合、20代など若年層をターゲットとする会社も多くなります。
無期雇用派遣のデメリット
■ フルタイム・残業もある
無期雇用派遣の働き方は、登録型派遣とは違い、時短勤務や週休3日以上など、自由ではありません。基本は週休2日のフルタイムで、残業も派遣先の社員と同じようにあります。
比較的残業の少ない職場が多いとは言われていますが、実際に派遣されてみないとわからないことも多いものです。
■ 休みが取りにくい
無期雇用派遣では、登録型派遣のような自由な働き方は難しいかもしれません。派遣先が決まらない期間も少なくなり、長期休みは取りにくい傾向です。
無期雇用派遣の場合、常にお給料が発生しているため、派遣元もムダに社員を遊ばせないようにしているのでしょう。登録型派遣ならば、休んだ分は給料が発生しないので、派遣元もうるさくありません。
■ 働き方の割に収入が少ない
無期雇用派遣の収入は安定こそしていますが、金額に関しては登録型派遣に負けるかもしれません。正社員のようにフルタイムで働く割に、正社員ほどの昇給や賞与もなく、時給換算で登録型派遣ほど高給ではありません。
無期雇用派遣がおすすめな人とは
無期雇用派遣の働き方にもメリット・デメリットありましたが、人によっては無期雇用派遣が合っていることもあります。
ガンガン稼ぐより安定収入が欲しい人
共稼ぎで家計の主ではない人、一定の収入があれば金額はほどほどでいい人など、高収入よりも安定を目指す人には無期雇用派遣はおすすめです。ある程度長期的なスパンで、転職や転居、出産による退職などを考えている場合にもよいでしょう。
大手企業・人気企業でも働いてみたい人
無期雇用派遣では、普通に就職活動したら入れないような大手・人気企業で働くチャンスもあります。憧れの大企業、人気企業で正社員のように勤務してみたい人も無期雇用派遣ならよい経験ができるでしょう。たくさんの優秀な人の中で刺激的なビジネスライフを送れそうです。
一から事務スキルを身に付けたい人
無期雇用派遣は、未経験OKが多いため、働きながら一からスキルアップしたい人にもおすすめです。派遣元の実施している研修も無料で受けられることが多くなります。定期的にキャリア相談もあり、自分のキャリアを客観的にみつめながら働けます。
■ 直接雇用を目指せる育成型無期雇用派遣も
無期雇用派遣サービスの中には、派遣先での直接雇用を積極的に目指すものもあります。育成型無期雇用派遣といい、実力を付けたら、そのまま派遣先で直接雇用できるように派遣元スタッフもサポートするスタイルです。
派遣社員で自分らしい生き方・働き方を
派遣は、正社員や契約社員、パート・アルバイトと同じように、働き方の選択肢の一つです。雇用の仕組みや法律の定めなど、不便な面もありますが、働き方の好みや家庭の事情などで派遣が向いている人もいます。
派遣社員として働くなら、メリットもデメリットも把握した上で、よい点を生かして快適に働いてみましょう。派遣会社にも種類や特性があるので、自分に合うものを選ぶことが大切です。