「比喩」とは「例え」という意味
太陽のようにまぶしい笑顔
といっても実際に光輝いているわけではありません。明るく笑っている様を明るさの象徴である太陽に例えています。
「比喩」とは「例え」のこと。会話やニュース、小説など様々なシーンで見聞きしますよね。「比喩法」ともいいます。
「比喩」を使う理由
「直径10cm弱の球体」よりも「こぶし大」と説明された方がピンとくるはず。これはまだわかりやすいですが、「約47㎡」の広さと言われてもすぐにはピンとこないでしょう。ですが、「東京ドーム1個分」と言われるとなんとなくイメージできますよね。
わかりやすくするため
「比喩」を使う理由の一つが相手の理解を助けるため。「こぶし大」「ゴルフボールくらいの大きさ」と誰でも分かるようなものに例えることでわかりやすくしています。
印象付けるため
小説や詩、マンガなどは「比喩」を使っているのに、別にわかりやすくないと思いませんか。
それはわかりやすさを目的としているわけではないからです。文学的にするため、作品の特徴を出すためなどの理由で「比喩」を使っています。
お笑いで独特な「比喩」をするのも同様です。
主な「比喩法」
よく使われる「比喩法」を見ていきましょう。これら三つの「比喩」さえ押さえておけばとりあえず大丈夫です。
直喩
・熟れたリンゴくらい赤いほっぺ ・徹夜明けの彼は死んだ魚のような目をしている ・まるで闘牛のように人ごみに突っ込んでいった ・品は手のひらほどの大きさです
「直喩(ちょくゆ)」はもっとも一般的な「比喩法」。「比喩」といえばコレをイメージする人も多いでしょう。
「赤いほっぺ」を「熟れたリンゴ」に例えています。「くらい」「みたい」「ような」等の例えていることを表す言葉と一緒に使われているので、「比喩」であることはすぐにわかります。
隠喩
・彼のメンタルは豆腐だ ・心の扉を固く閉ざす ・仕事は戦いだ
「隠喩(いんゆ)」は「ような」等の例えていることを表す言葉がありません。とはいえ、正確には「彼のメンタル」=「豆腐」ではないため、「比喩」であることはうかがい知れます。
擬人法(活喩)
・10年物の洗濯機が唸り声をあげている ・たこ焼きに振りかけた鰹節が待ってましたとばかりに踊り出す ・田んぼのカエルたちが歌うのをやめないので集中できない
「擬人法」もよく使われる「比喩法」の一つ。「活喩(かつゆ)」ともいいます。
実際には、洗濯機は唸り声をあげませんし、鰹節は踊り出しません。無生物を人間の行動や感情に例えて表現する手法です。人間以外の生き物に対して使うこともあります。
その他の「比喩」
「比喩法」は他にも様々なスタイルがあります。中にはこれって「比喩」だったんだと驚くようなものもあるかもしれません。
引喩
・可愛い子には旅をさせよというように、子どものためを思うならいろいろ経験させた方がいいよ ・果報は寝て待てって言うけど、本当に寝てるうちに受賞の知らせがあったんです
「引喩(いんゆ)」はことわざや格言などを引用して自分の言いたいことを表す「比喩法」です。
諷喩
・能ある鷹は爪を隠す ・弱い犬ほどよく吠える
「諷喩(ふうゆ)」は寓話やことわざのように、他の話をしているように見せかけて遠回しに諭す「比喩法」。
「引喩」と似ているように思うかもしれません。「引喩」はことわざ等を使った「比喩」ですが、ことわざや寓話自体が「諷喩」といえます。
換喩
・諭吉が飛んでくる ・「ヒゲメガネどこにいる?」「部長なら出張だよ」
「換喩(かんゆ)」はあるものを別の単語に置き換えて例えた「比喩法」。
「諭吉」といえば歴史上の人物、「福沢諭吉」ですが、一万円札に描かれている人物でもあります。「諭吉」で「一万円札」を連想させるように、「ヒゲメガネ」で「部長」を連想させています。
提喩
・その哺乳類たちは私の顔をじっと見つめている ・頬を熱いものがつたった ・足がないから行けないなぁ
「提喩(ていゆ)」は「換喩」の一種。「提喩」と同様、あるものを別の単語に置き換えています。
「換喩」は連想さえできれば関係ないものでも問題ありませんが、「提喩」は例えるものと例えられるものに関連性が必要です。
哺乳類の一種である「人間」を「哺乳類たち」に例えています。「涙」には「熱い」という性質があり、「足」は移動手段の一つです。
転喩
・勉強熱心な彼はノートを1週間で埋め尽くす ・クレーマーは店舗に来て怒鳴り散らしていたが、数分後には逆に頭を下げていた
「転喩(てんゆ)」は物語の展開を直接触れずにその後の展開を描写する表現方法。アダルトやグロテスクなど直接表現するにはリスクがあるような展開によく使われます。
「ノートを埋め尽くす」ということはそのぐらい勉強に時間を費やしたことを表しています。クレーマーが「頭を下げた」ということは非を認めて謝罪、解決したと読者は想像することができます。
「比喩」を使う際の注意点
「比喩」はいろいろな種類があることがわかりました。文学作品や話芸などは別として、わかりやすさを狙って使う普段の会話やビジネスシーンではどれを使ったらいいのでしょうか。
また、その他の注意点も見ていきましょう。
どの「比喩」を使えばいい?
分かりやすさを目的に「比喩」を使うのであれば、やはり「直喩」が一番。何を何に例えているのか明確だからです。
とはいえ、その他の「比喩法」もそれぞれ特徴があり、話の持っていき方によっては他に最適なものがあるかもしれません。
比喩はセンスが必要
「テニスコート180面分の広さ」よりは「東京ドーム1個分」のほうがわかりやすいですよね。いくら「比喩」を使ったとしてもわかりにくいものに例えてしまったら意味がありません。
またあまりに「比喩」を連発するのも考えもの。くどくなってしまうので、「比喩」はここぞというときに使いましょう。
「比喩」で表現の幅を広げる
「比喩」は「みたい」や「ような」だけではありません。使うかどうかは別としていろいろな「比喩法」があることを知っておくと、表現の幅が広がるはず。