「善処」とは「適切に対処」という意味だけど…
善処します
役所に何か相談や要望を伝えた際、このように一言だけで返答されたらどう感じるでしょうか。
「善処(ぜんしょ)」の意味は「適切に処置する」。問題や状況を正しく見極めて解決・改善していくという心強い言葉のはずなんですが、なんかモヤっとしますよね。
「善処」には辞書には載っていないニュアンスが含まれています。それを知らずに軽々しく「善処」を使うと痛い目を見るかもしれません。
「善処」の意味をもっと詳しく
善処という言葉の意味について、理解を深めていきましょう。
お役所言葉としての「善処」
政治家や官僚は時にわかりずらい表現を使いますよね。それが意図したものだったら…。あえて小難しい表現を使うことで、明言を避けたりあやふやにしたり…。
真偽は置いといて、このような表現を皮肉を込めて「お役所言葉・お役人言葉」と言われることがあります。
「善処する」はお役所言葉の代表例に挙げられる表現。「善処する」=「意見だけは受け取っておきます」「聞くだけ聞いておきます」といった意味で使われているとされています。
明確な回答を避けたり、その場しのぎをしたりするために「善処する」が使われることがあるようです。
・前例がありません=勝手にはできません ・担当者に伝えます=私ではわからないのでお帰りください ・現在調査中の為コメントできません=騒動が過ぎ去るのを待っています
「お役所言葉」は半分冗談みたいなもの。本心から使っている人も多いはずです。ですが、これらの表現を嫌う人がいるのも事実。「善処」の使い方には注意が必要です。
「善処」の別の意味
「善処」は仏教用語としても使われています。仏教における「善処」の意味は「善行を積んだ者が来世に生まれるいい場所」。具体的には「人間界」と「天上界」を指していると言われています。
「善処」の使い方
「善処」を使った言い回しにはどのようなものがあるでしょうか。
・善処を尽くしてまいります ・善処いたしますが、ご期待に沿えない場合はご了承ください ・善処のほどよろしくお願いいたします ・鋭意(えいい)善処してまいります
「善処」は自分に対してだけではなく、「善処してください」と相手に対しても使うことができる表現。
「一生懸命に頑張る」という意味の「鋭意」を付けて「鋭意善処」と表現することもあります。
意味通りに受け取るのであれば「善処」はとても耳障りのいい言葉です。しかし、「善処」を意味深に使う・捉える人もいることを念頭に入れておかなければなりません。
「善処」をうまく使うには
あえて「善処」を使う必要ないんじゃない?
ここまで読んだ人はこのように思うのではないでしょうか。その通りだと思います。濁したい意図がある場合は置いといて、そのままの意味として使う場合は誤解されるリスクがあります。
あえて使いたい場合は、前後でフォローする必要があるでしょう。「いつやるのか」「どのようにやるのか」など具体的に示せば、悪い意味に捉えられることはないはず。
「善処」の類語
「善処」の代わりに使える言い換え表現を集めました。
・対処 ・努力 ・前向きに検討する
「対処」や「努力」には「善処」のような「お役所感」は感じられません。
「前向きに検討する」だと逆に強まった感があります。
「善処」の対義語
「善処」の対義語を挙げるとしたらこちら。
・いい加減 ・おざなり
「善処」を悪い意味で捉えると、これらが対義語どころか類義語に見えてきます。
誤解を避けるには
「善処」は元々の意味はクリーンなのに、悪い意味をプラスされてしまったかわいそうな言葉。ですが、誤解を招く恐れがあるのでわざわざ「善処」を使う必要はないでしょう。