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コンピテンシーの意味とは|モデル・具体例・歴史・例文・類語・活用方法まで完全ガイド

コンピテンシーとは、デキる人の行動特性

コンピテンシーとは、組織で高い業績を上げる人の行動特性のこと。ビジネスの場で「組織」とは企業。つまり仕事でデキる社員とそうじゃない人との違いを指します。これらは個人の学歴や能力とは関係のない行動特性を示すことが多く、人事評価や新人育成、採用時にも関係する用語です。

コンピテンシーの意味を詳しく解説

コンピテンシーとは、前述した通りデキる社員の行動特性。ここでコンピテンシーの意味をさらに詳しく分析していきましょう。

辞書的なコンピテンシーの意味

辞書ではコンピテンシーはどのように訳されているのでしょうか。ランダムハウス英和大辞典では,「(特に専門的な)能力、力量、適性」とされています。日本のビジネスの場では、スキルとコンピテンシーは異なるものとされていますが、辞書では、能力や適性の用語としても用いられていることが分かります。

専門的なコンピテンシーの意味

専門的には「competency:動機、行動特性、態度・指向・性格、知識技術・スキル、知的能力・実践的能力。またそれらを有効に組み合わせてバランスよく発揮する能力」。こちらも「スキル」を含めて訳され、個人の資質を総合的に示しています。

実際はデキる人ではなく最低限の一人前を指す言葉?

competencyの形容詞は「competent」。「一人前の」という意味で、「仕事を任せられる」というニュアンスで使われます。看護師の能力段階を示したベナーのドレファスモデルにもcompetentは登場しており、5段階のうち下から3段階目がcompetent、つまり「一人前」レベルです。その上が「proficient:プロ」「expert:エキスパート」レベルです。

つまり、業務上の個人に全て託せる最低ラインをコンピテントとしているのです。コンピテンシーは「優れた人の特性」とされていますが、「エキスパート」の文字を使用しないのは、何とも不思議ですね。

コンピテンシーの歴史

コンピテンシーの言葉は、1950年代から、心理学用語として文献に登場しました。70年代には、マクレランドがコンピテンシーを人事用語として世界に広め、世間に知られるところとなりました。90年代には、日本企業でも人事評価制度や採用面接で使用されるようになりました。

コンピテンシーは心理学用語として登場

コンピテンシーは、米国ハーバード大学の心理学者マクレランド教授が論文にて「人の能力を知能テストや適性テストで測定するのは難しい」と指摘し、コンピテンシーの可能性を示したことで社会の関心を集めるようになりました。

発端は、米国国務省とマクバー社

このマクレランド教授は、米国国務省から依頼を受け、好業績の職員と他の職員の違いを研究し始めました。マクバー社の創業者でもある彼は、286の職種別・760の行動特性にコンピテンシーモデルを分類、細分化していきました。

よりコンピテンシーの体系化につとめたボヤディズ氏

マクレランド氏による研究を6個のクラスターと21項目の指標に整理整頓したのが、マクバー社の社員のリチャード・ボヤディズ氏。コンピテンシーをより体系化させた人物です。

スペンサー夫婦がコンピテンシーを広く普及させた

コンピテンシーを広く普及したのは、スペンサー夫婦。コンピテンシー・モデルの作り方や採用・育成・評価・報酬などの運用について書かれた“Competenceatwork”の出版により、一般的なビジネスマンにも知られるところとなりました。

日本では1990年代から活用されはじめた

日本でも1990年代からコンピテンシーの言葉は使用されるようになります。例えば、前項で述べた看護師の能力におけるコンピテンシーモデルや、人事の場で盛んに用いられるようになりました。医療現場以外でも、コンピテンシーモデルを導入する業界は多岐に渡り、あらゆる業界で活用されています。

コンピテンシーの具体例

コンピテンシーの例を見ていきましょう。銀行窓口係のAさんは、窓口営業として優秀な成績のBさんの行動を観察していました。すると、Bさんは気持ちの良い取引をしてくれた顧客に必ず手紙を書いていることに気付きました。「自分とBさんの営業力の違いはここにあったのか!」とAさんも手紙を書くことを取り入れ、その結果過去最高の営業成績を収めました。これがコンピテンシーによる自己評価と改善のプロセス一例です。

コンピテンシーテスト

コンピテンシーテストにより、コンピテンシーを測定することもできます。コンピテンシーテストとは、河合塾によるマーク式のテスト。自分を取巻く環境の中で実践的に働きかけ対処する力を知ることができます。

https://www.kawaijuku.jp/jp/research/prog/tst/contents.html#block1

コンピテンシーの使い方例文

コンピテンシーはどのように使用されるのでしょうか。ビジネスのシーンで、以下のように用いられます。

「コンピテンシーをどう活かすか、人事課の課題です」
「コンピテンシーモデルに習った目標を設定すべきだ」
「コンピテンシー面接では、過去の経験が非常に重要となります」
「わが社の採用制度にコンピテンシー採用を取り入れ、候補者の潜在能力も推し量る採用を行いましょう」
「“能力”と“コンピテンシー”とは、別ものとして採用制度を整えましょう」

コンピテンシーの活用シーン

コンピテンシーを活用するシーンとはどのような場面なのでしょうか。人材育成、採用の面から見ていきましょう。

人材育成

企業では、組織全体の生産性を高め、多くの成果を達成していくことを目標とします。ハイパフォーマーを増やすことが必要不可欠の課題。そこで有効なコンピテンシーモデルを構築し、大多数の社員にコンピテンシーモデルに従って行動を促します。人事の評価基準にもこのコンピテンシーモデルが組み込まれていることが多くなりました。

人材採用|コンピテンシー採用

コンピテンシー採用とは、採用において能力や学力だけでなく、個人の潜在能力を重んじる採用方式。転職支援サイトdodaの調べでは、企業が最も重要視するコンピテンシーは、「対人理解力」です。社内で円滑に人間関係を構築できる人材、営業や商談で人間力を売りにできる人材が選ばれることを示しています。

https://doda.jp/guide/saiyo/010.html

コンピテンシー面接と通常の面接の違い

コンピテンシー面接とは、実績よりも、その個人の資質を知ることにフォーカスした面接。過去の経験やエピソードを聞き出し、その人の行動特性や思考方法を掘り下げる面接スタイルです。一方、通常の面接では、過去の実績や志望動機などを元に、企業基準を用いて評価するスタイルです。通常の面接が個人よりも会社に合うかどうかで判断されているのに対し、コンピテンシー面接は、個人をより見ていると言えます。

コンピテンシーの類語・関連語

コンピテンシーには類語・関連語がいくつかあります。類語とコンピテンシーの違い、関連語についてご紹介しましょう。

コンピテンシーとスキルの違い

辞書的な意味でのコンピテンシーには、「スキル」も訳語として適切と前述しました。ここで注意したいのは、「デキる人の違いとは、結局はスキルなのではないか?」という考え。これは、ビジネスにおけるコンピテンシーの考えに当てはまりません。スキルは職務上必要となる知識や技能、これに対して、コンピテンシーはそれ以外の要素を含みます。

例えば、経理部で評価の高いAさんは、会計や税務や監査の専門知識、決算の数値把握能力、株主や経営者への説明能力どれにおいても他の社員との目に見えた違いは見つかりません。経理の職務に必要なスキルに違いは見られなかったののの、社内各部署に仲の良い社員がおり、太いパイプを持っています。

このことが、Aさんの経理事務の際の処理や伝達をスムーズにしており、スキルで測れない有能さを物語っています。コンピテンシーは、スキルと異なるのがお分かりいただけたことでしょう。

コンピテンシーと資質の違い

個人特性を客観的に表す「資質」も、コンピテンシーとは違いがあります。資質は、人間の性格や性向であり、個人差を網羅的に捉えるもの。性格にも関係する、人間にとって変えにくい部分です。

企業の採用でストレス耐性のある人材が必要な際、人事担当が採用したのはは面接で非常に緊張しておどおどしていたAさん。Aさんの上司は「大勢のクライアントの前で話す機会が多いのに、彼に務まるのだろうか」と心配していましたが、後日Aさんは弁舌巧みに顧客プレゼンテーションをやってのけました。

実は、彼は顧客プレゼンテーションにおいて過去に数々の成功をおさめ、資質以外の部分で「緊張しない要因」を持っていたのです。この例におけるコンピテンシーとは、資質以外の補完要因による行動特性と言えるでしょう。

コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは、自社の核となる技術や特色。ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」とされますが、確固たるこれらの能力を持つ企業はそれほど多くはありません。

しかし、多くの人事担当者は「うちでなければいけない理由を教えてください」などのような質問をしてきます。企業のコア・コンピタンスを見て就職・転職活動をしておくと、この質問にもスムーズに応えられるようになるかもしれませんね。

コンピテンス・コンピテンシーズ・コンピテンシーの違い

英語のcompetenceの形容詞系や複数形としてコンピテンシーやコンピテンシーズという言葉がありますが、日本語では、それぞれ意味や使い方が限定されています。コンピテンスは、平均的な社員と業績上位者の間にある違い。それらが集まった複数形コンピテンシーズは、コンピテンシーモデルなどを指すときに用います。コンピテンシーは、大枠やコンピテンシーを通した実務、人事制度などを指すときに主に使われます。

ルーティーンとコンピテンシーの違い

ルーティーンワークなどでよく使われる「ルーティーン」は決まりきった行動を示します。コンピテンシーは行動そのものではなく特性のことを表すため、両者は違う意味を持ちます。

参考文献集:より深くコンピテンシーを知るならコレ

最後に、コンピテンシーを深く理解するための参考文献を記載します。

新しい能力主義としてのコンピテンシーモデルの妥当性と信頼性

https://www.u-bunkyo.ac.jp/center/library/image/ba2001_eiron49-62.pdf

これまでの職能資格制度の限界と、新たな能力評価制度であるコンピテンシーを紹介した論文。今後のグローバリズムにおいて重要となるコンピテンシーの可能性を示唆しています。

日米におけるコンピテンシー概念の生成と混乱

http://www.eco.nihon-u.ac.jp/center/industry/publication/report/pdf/34/34-2-1.pdf

日米におけるコンピテンシーの違いを説明した論文。アメリカでのコンピテンシーを紹介した上で、アメリカ以上に複雑化した日本におけるコンピテンシーについて言及しています。

コンピテンシーとは何だったのか

https://www.works-i.com/pdf/w_057.pdf

こちらはワークス研究所発行のウェブビジネス誌。コンピテンシーについて65ページに渡って解説していますが、否定的な見方もあえて掲載しています。

日本におけるコンピテンシー活用の実際

http://www.jexs.co.jp/column024.html

コンピテンシーの複雑な意味を解説するJAXSによるビジネスコラム。「デキる人の行動の特徴」以外の意味や日本でのコンピテンシーの展開を紹介しています。