「他山の石」とは「他人の失敗を見て学ぶ」という意味
あなたを他山の石として自分を見つめ直します
このように同僚や後輩から言われたら…嬉しいと思った人は「他山の石」の意味を間違っているかドMかも。
「他山の石」の正しい意味は「他人のつまらない言動でも自分の成長の糧にする」。他人のミスや悪事でも、自分を磨くのには役立つという意味の表現です。この意味で言われたら100%悪口です。
「他山の石」の由来
「他山の石」は古代中国の詩集、『詩経』が由来。この中に以下のような一文があります。
他山之石可以攻玉 (他山の石を以て玉を攻むべし) ⇒よその山から出た石ころでも自分の玉(宝石)を磨くのに役立つ
「石」は取るに足らないものという意味で、他人の失敗や悪事を指しています。くだらない他人の言動(他山の石)でも自分(玉)を磨くことができるということ。
日本では前半だけを切り取って使うことが多いですが、中国では一文丸々。同じ意味の故事成語として残っています。
「他山の石」のよくある間違い
文化庁が2011年に行った調査では、「他山の石」の意味を正しく答えられた人は3割以下(26.8%)。
多くは間違えるか(18.1%)、知らない(27.2%)という結果でした(その他、併用してる等の回答)。
よくある間違い①
調査で約2割の人が選択したのが「他人のいい言動は自分の行いの手本となる」。全く逆の意味ですよね。誉めたつもりが相手を怒らせてしまうかも。とはいえ、相手も間違えているor知らない可能性も高いので何ともいえません。
この意味で使いたい場合は、「人の振り見て我が振り直せ」に言い換えましょう。「人のいい行いや悪い行いを見て自分の言動を反省し直せ」という意味。
とはいえ、これも悪い意味だけで使うと誤解している人が多いので、単純に「お手本にしています」でいいのではないでしょうか。
よくある間違い②
もう一つのよくある間違いが「他人の不幸は自分には関係がない」という意味で使うこと。これは、同様の意味の「対岸の火事」と混同しているせいだと考えられます。
誤:今回の問題を他山の石とせず、自分にも起こりえることとして考えていくことが大切です 正:他人のミスを対岸の火事とせず、自分にも起こりえることとして考えていくことが大切です
「対岸の火事」はこのように打ち消して使われることが多いのですが、これを「他山の石」にしてしまうと、前後で矛盾する文になってしまいます。
また、「他山の火事」「対岸の石」というように言葉自体を混同している人も。これだと単なる山火事と浜辺の石です。
「他山の石」の使い方・例文
「他山の石」は知らないと一目見て意味を推測することができないため、間違って使ったり、そもそも知らなかったりする人が多い表現。例文で正しい使い方を確認していきましょう。
・他社の不祥事を他山の石とせよ ・専門外の私の研究が本職の方の他山の石になれば幸いです
「他山の石」を謙遜で使うことも可能。この場合、悪事や失敗を指しているのではなく、自分の取るに足らない言動を糧にしてくださいとへりくだって言っています。
正しく使いこなそう
「他山の石」を正しく知って使える人はわずか。だからこそ、正しく使いこなせたら一目置かれるかもしれません。とはいえ、調子に乗って連発してウザがられたらそれこそ「他山の石」です。