「とんでもないです」は誤用だった!
上司
Aくん
上司
ビジネスシーンで相手への謙遜表現として、「とんでもないです」は打ち消しの表現であるため、自分への賞賛や相手からの謝罪に対し、「それほどでもありません」や「お気になさらずに」のニュアンスで使われやすい言葉です。しかし、実は「とんでもないです」は誤った使い方です。
そもそも、「とんでもない」はひとつの言葉で意味をなす形容詞です。かつての日本語には形容詞に直接「です」をつける習慣がなく、「とんでもないです」は誤用とされ、現在の簡素化は昭和に入ってからの新しい習慣です。
現在では大きく間違った使い方ではありませんが、違和感を感じる人も少なくありません。例えば過去形にしたときの「とんでもないでした」では、日本語として不自然になりますよね?
一般的には外れた使い方ではありませんが、やはりビジネスシーンでは本来の正しい表現を心がけるのがベストです。また、「とんでもないです」の言い換え表現もあわせて使っていきましょう。
・思いもかけないです
・冗談じゃないです
・滅相もないです
「とんでもない」の語源・意味
「とんでもない」のもととなった「途でもない」は、“道ではない”=”道を外れている”様子を語源にする言葉。「途(と)でもない」⇒「とんでもない」へと変化した表現です。ここでの「とんでもないです」とは、「です」をつけた丁寧な表現を意識した使い方です。
また、「とんでもない」には3つの意味があります。
2.あり得ない。論外。
3.決してそのようなことはない。滅相もない
「とんでもない」の3つの意味は、すべて打ち消しの意味をもつ言葉で共通しています。主にビジネスシーンでは、3番目の意味で「とんでもないです」が使われています。
「とんでもないです」を正しく使う方法は?
使用する人が多く、現在では一般化されてしまった表現の「とんでもないです」。しかし、ビジネスシーンでは正しい言葉の使い方が評価されるため、誤用とされる表現は避けるのが無難です。「とんでもないです」を正しく使う方法を例文を交えてご紹介します。
「とんでもない」を使った正しい表現
正しい 「とんでもないです」の使い方は、”丁寧にすればいい”わけではありません。先述したように「こと」を置き、「ことです」や「ことでございます」とするのが正式な表現方法です。
平成に入ってからもさらに『敬語の指針』が変わり、「こと」を置かずに簡素化した表現もOKになりました。とはいえ、年配の人には違和感を感じる人も多く、目上の人と接する機会の多いビジネスシーンでは、「とんでもないこと」とするのが無難です。
2.あり得ないことです。
3.決してそのようなことはございません。
先述した「とんでもない」の3つの意味を改めて確認すると、3つの意味すべてに直接「です」を置いた簡素化や、「ことです」を置く使い方でも意味が通じます。「とんでもない」の意味にならうなら、3つの意味表現すべてにも「~こと」を置いて使用しましょう。
Aくん
上司
正しい使い方を例文で解説
正しい使い方がわかったところで、実際の場面で早速使っていきましょう。いざ使うとなると、シチュエーションやタイミングも重要です。適切な「とんでもないです」の正しい使い方を例文でみていきましょう。
お礼をされたときの使い方
上司
部下
部下
課長
謙遜するときほど「とんでもないことです」を使用する機会は多いです。否定し過ぎるのも失礼にあたるので、相手への配慮を忘れずに好意的な言葉で締めるのがベターです。
謝罪をされたときの使い方
Aくん
課長
深く謝罪、陳謝している相手を気遣うときの使い方です。相手からの十分な反省、申し訳ない気持ちを受け取り、配慮するときにも「とんでもないこと(です)」は使えます。
思いがけないときの使い方
Aくん
課長
部下
課長
事柄や相手の行った結果に対して、思いがけない出来事を「とんでもないこと」と表現している使い方です。よいことにも悪いことにも使えますが、やや大げさな表現になるので、オーバーになり過ぎないように気をつけましょう。
「とんでもない」の言い換え表現
「とんでもないです」では誤用となり、「ことです」や「ことでございます」では、少し大げさな表現と受け取られるケースもあります。このような場合は、「とんでもない」を別の言葉に言い換えた表現にしてみましょう。「とんでもない」の言い換え表現の一例を例文でみていきましょう。
信じがたい
あり得ない、信じにくい事柄を表現している言葉です。現実的には起こり得ず、確率的に低い出来事に対して使用します。
Aくん
先輩
課長
部下
思いもかけない
「思ってもいなかった」や「想像していない」事柄を表現している言葉です。「信じがたい」と同じ意味合いですが、考えていた結果とは違う”予想外”や”想定外”の出来事に対して使うのが適切です。「思いがけず」や「思いがけない」への言い換えも可能です。
先輩
Aくん
先輩
冗談じゃない
「冗談」とは、”ふざけた内容”や”たわむれ事”を指し、別の言葉で「ジョーク」ともいわれる言葉です。「ふざけて(たわむれて)はいない」の否定の意味になります。語調によってはニュアンスが異なり、表情や口調の強弱で相手への心証も変わるので、使うタイミングに注意しましょう。
Aくん
先輩
Aくん
上司
滅相もないです
「滅相」とは「めっそう」と読み、もとは仏教用語で「とんでもない」を意味する言葉です。すなわち、「とんでもない」を「滅相もない」に置き換えた表現です。「とんでもない(こと)です」と同じ使い方が可能ですが、「滅相」に変えるだけで表現が大げさな印象に受け取れます。
Aくん
上司
Aくん
「とんでもないです」と同じ意味で使える英語表現
ビジネスシーンでは「とんでもないです」を「とんでもないことです」に変化させて使いましょう。「とんでもないことです」の英語表現をご紹介します。
no worries
no need
ridiculous
と表現できます。
「とんでもないことです」の英語表現を使用した例文はこちらです。
⇒とんでもないことです!私でよければいつでもお力になります!
・There is no need to apologize to that point.
⇒そこまで謝るなんてとんでもないことだよ。
・He totally did it. It is ridiculous!
⇒まったく、とんでもないことをしてくれたなー。
・You did it well! No worries!
⇒よくやってくれたね!これはとんでもないことだよ。
「とんでもないです」は正しく言い換えて使おう!
今の言葉は簡素化された表現が多く、本来の使い方も徐々に忘れられています。「とんでもないです」も誤用が広まった形で、一般的に許容されてしまったケースの表現です。しかし、ビジネスシーンでは「とんでもないことです」と、上の世代の人ほど本来の正しい使い方をします。
目上のビジネスパーソンに対しての誤用は、自分への心証や評価に直結するので避けたいポイントです。本来の正しい使い方、もしくは言い換え表現を駆使して「とんでもない」を使いこなしましょう。