これから退職や転職を考えている人は、失業保険の利用条件や期間などをチェックしておきましょう。突然の倒産やリストラなどの事態もあるかも知れないため、退職予定のない人も一応の知識として知っておくと安心です。初めての退職や転職でも慌てない、困らないための情報を解説します。
失業保険とは?
失業保険は、正確にいえば「雇用保険の失業給付」のことです。雇用保険に入っている人が受け取れる給付金で、失業したときに支払われます。ただし、全ての人が同じ期間や金額を受け取れるわけではなく、退職理由や勤務していた期間、給料の額などで手当をもらえる期間や額が変わります。
失業保険の利用条件
失業保険は、被保険者期間や日数などによって利用できないこともあります。基本的な失業保険の受け取り条件は、12ヶ月以上の雇用保険に入っていたことと働く意欲と働ける能力です。働きたいのに仕事がない人をサポートするための保険なので、働く気のない人は受け取ることができません。
ただし、一部の退職理由を持っている人に関しては、12ヶ月以上ではなく6ヶ月以上でよいことになっています。ちなみに被保険者期間とは1ヶ月あたり11日以上働いていた期間のことです。
失業保険の手当
失業保険の手当の金額は、働いていたときの給料で決まります。辞める直近6ヶ月の給料の金額の50~80%というのが手当の額になります。ただしお給料がいくら高くてももらえる手当の額には上限があり、年齢に応じて以下の金額までしか受け取れません。
年齢の範囲 | 手当の日額 |
30歳未満 | 6,750円 |
30歳以上45歳未満 | 7,495円 |
45歳以上60歳未満 | 8,250円 |
60歳以上65歳未満 | 7,083円 |
■失業保険の計算方法
失業保険は、6ヶ月分の給料の合計を180で割ったものに約50~80%を掛けて出します。30日×6カ月=180日で6ヶ月間の給料の日割り金額(賃金日額といいます)を出し、その半分から8割を手当として認めるということです。
例えば、毎月18万円の給料の人の場合には、
18万円×6÷180=6,000円
で、賃金日額は6,000円となります。
さらに50~80%をかけて実際の手当の日額を算出します。計算式はやや複雑ですが、
「0.8×賃金日額-0.3×{(賃金日額-4,970)÷7,240}×賃金日額」となり、
月給18万円の人の手当日額は、0.8×6,000-0.3×{(6,000-4,970)÷7,240}×6,000=約4,543円です。
■再就職手当もある
早く転職を決めたら、再就職手当をもらえることもあります。失業保険の手当を受け取れる残り日数が基準となって計算されます。日数の3分の2以上残して再就職したときには70%、3分の1以上のときは60%です。ただし、基本手当には上限があります。
職業訓練の受講
失業保険では、手当をもらうだけでなく仕事に就くために役立つ技能を取得する職業訓練も受けられます。コースは2ヶ月~2年となっており、ほとんどのコースが無料です。条件次第では、失業保険の給付の延長もあります。安心して技能を取得して、次の就職を目指せる制度です。
失業保険をもらえる期間は?
失業保険をもらえる期間は、会社を辞めた理由によって差があります。転職したい等の理由で自主的に辞めるのを自己都合、倒産やリストラなど辞めたくないのに辞めるのを会社都合と呼びます。また、辞めるべき正当な理由があった場合には、自分から退職しても会社都合と同じような扱いになることもあります。
失業保険の期間:自己都合の場合
自己都合退職では、7日間の待期期間が終わった後、3ヶ月の給付制限期間が設けられています。3ヶ月経ったら受給が始まり、年齢に関係なく10年未満は受給期間が90日間です。
失業保険の期間:会社都合の場合
会社都合の場合には、7日間の待期期間後すぐに受給がスタートします。もらえる日数は被保険者であった期間と年齢によって違い、被保険者期間が5年以上あればどの年齢でも自己都合より長く受給できます。
雇用保険は働いていた時の給料で日額が決まり、もらえる期間で受給の総額が変わります。つまり、会社都合の方が自己都合よりも日数が増える分、金額が高くなることが多いということです。
失業保険をもらうための手続き方法
失業保険をもらうための手続き方法を順を追って紹介します。特に難しいことはありませんが、定期的にハローワークに出向く必要があります。
離職票を持って管轄のハローワークへ
退職したら、まずは住居の管轄のハローワークで最初の手続きを行います。手続きには離職票や本人確認書類、写真、印鑑、通帳が必要です。失業保険をもらえるかどうか、チェックを受けてから今後の予定を教えてもらいます。
「雇用保険受給説明会」へ
雇用保険受給説明会に参加します。ここでは今後の手続きや失業保険を受け取る流れの説明などがあります。最初の日にもらったしおりや印鑑などを持って行きます。
転職活動
失業保険は働きたいという気持ちがある人だけのものです。それを証明する意味で、失業認定日までに転職活動をした記録が必要になります。初回は3回、2回目以降は2回ずつ、転職活動をしましょう。初回は「説明会」の参加も転職活動に入ります。
4週間ごとに失業認定へ
転職活動をしつつ、仕事が決まらない場合には4週間ごとにハローワークで失業認定を受けます。転職活動の記録を見てもらい、転職活動に励んだことと失業していることの認定を受ける手続きです。この認定を受けると手当が振り込まれます。会社都合の場合には1回目の認定で振込、自己都合の場合には3ヶ月の給付制限期間を待ちます。
失業保険は上手にもらう!自己都合退職時の受け取り方
自己都合の場合にはさっさと転職するのも手
自己都合退職の失業保険は、給付までが長くかかります。実際の振り込みまでは実質約4ヶ月かかることも。そのため、失業保険をもらわずにさっさと転職を果たして、働き始める方が得策かも知れません。雇用保険の給付は次に持ち越すことができます。次の退職が会社都合なら今よりお得ですし、雇用保険の加入期間も長くなりより有利にもらえる可能性もあります。
■再就職手当はハロワもしくはエージェントの紹介が条件?
最初の1ヶ月に限り、再就職手当を受けるには転職方法に条件が付きます。最初の1ヶ月で就職したとき、再就職手当がもらえるのはハローワークか転職エージェントでの活動によって転職した場合だけです。
そのため、早く転職して再就職手当ももらおうと思っている人は活動方法にも注意しましょう。転職エージェントは、再就職手当の有無にかかわらず、サポートも充実していて転職活動しやすくなるよいサービスです。
■年金や健康保険の支払いも大変
自己都合退職の失業保険では、給付制限がありますが、その3ヶ月間は扶養に入れないこともあります。年金や健康保険の扶養には失業保険の手当をもらわない期間なら入れるはずですが、保険組合によっては給付制限期間は入れないと定めているところもあるようです。
扶養に入れないと数万円の保険料がかかり、失業中の大きな負担となります。それならば、失業保険をもらわずにさっさと転職を決めて安定収入を得た方が安心です。
失業保険はかしこく利用を
失業保険は、働く意思を持つ人のためのサポートとなる保険です。失業中の補助として手当をもらうことで安心して転職活動をすることができます。先立つものがあれば、焦って合わない転職をすることも防げそうです。ただし、退職理由によってはよい条件で受け取れないため、失業保険は状況を見ながら冷静に利用の有無を決めましょう。