ワーキングプアとは『働く貧困層』
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あなたのまわりにも『ワーキングプア』や『ワープア』に当てはまる人がいるかもしれません。
ワーキングプアは端的にいうと「働く貧困層」のことですが、実際にはもう少し細かい定義があります。ここでは、その定義や原因、国の取り組みなどもあわせて紹介するので、しっかり覚えましょう。
ワーキングプアの意味をチェック
ワーキングプアとは『働いているのに貧困線を下回る所得層』を指す言葉です。正社員、あるいはそれに準ずるレベルで就労しているにもかかわらず、最低限の生活を維持することさえ難しい所得層がワーキングプアに当てはまります。
貧困線とは、生活するにあたって必要最低限のものを購入できる所得を表す指標を指します。とはいえ、この貧困線は国によって定義が変わります。
日本においては公式に貧困線の設定がされていないため、かわりに目安となるのが生活保護基準です。生活保護にはさまざまな条件が絡む複雑な計算があり、単純に比較対象とすることはできませんが、一般的な目安として「月収約17万円以下」もしくは「年収約200万円以下」がワーキングプアに当てはまる可能性が高いといわれています。
ワーキングプアを生み出した原因
ワーキングプアを生み出した社会的な原因としては、代表的なものが3つ考えられます。
企業のコストカット
リーマンショック以降、企業は生き残るためにコストカットに注力してきました。その代表格が人件費削減です。
正社員を減らしてアルバイトで対応したり、安価な労働力として外国人を採用したりする企業が増加した結果、ワーキングプア層を増やすことに繋がりました。
終身雇用制度の崩壊
バブル崩壊やリーマンショックを経て、企業の終身雇用制度が崩れてきました。離職・転職を余儀なくされるケースも増加しています。
そうして次に就職先を求める人には、前職よりも悪い条件の職しか残されていないことが多く、これもワーキングプアが増えた原因となっています。
労働者の価値観の変化
価値観の多様化により労働者自身が収入だけを目的とせずにやりがいを求めた結果、自発的に低賃金の職業を選ぶケースも見受けられます。
先輩
ワーキングプアに陥りやすい業種
ワーキングプアに陥りやすい業種は、非正規雇用労働者が多い業種や専門性が必要とされない業種などです。参考に、代表的なものを挙げておきましょう。
飲食業
飲食業においては店長以外のスタッフが非正規雇用であることが多く、時給が抑えられていることが少なくありません。長時間労働を求められる職場も多いです。しかも低賃金ゆえに労働時間が長いわりには収入が上がりにくいのです。
小売業
小売業も店舗の責任者以外は、非正規雇用のスタッフで成り立っている業種です。一部の高い専門知識が求められる小売業であれば正社員待遇もありますが、大半はそうではありません。
清掃業
リーダーの下で働くスタッフは特別な資格も専門技術も不要なので、清掃業も収入が上がりにくい仕事として挙げられます。
保育士
私立・公立のどちらも、保育士の賃金は高いとはいえません。特に、非正規雇用の保育士は低賃金でありワーキングプア化しています。
農林漁業
農林漁業のような第一次産業は衰退傾向にあり、賃金に関しては非常にシビアな状況です。しかも拘束時間が長く、休みは不定期、労働環境も過酷であることが多いので、担い手も減少しています。
建設業
建設業の現場で働く人たちも非正規雇用労働者の割合が高く、ワーキングプアが少なくありません。
ワーキングプア減少への政府の取り組み
政府も、なんとかワーキングプア層を減少させたいと考えています。政府が取り組んでいる対策をあげます。
・経済面でのサポート
労働者の賃金面でのセーフティネットとして、地方自治体ごとに最低賃金制度が定められています。しかし現段階では依然としてワーキングプアは改善されていません。
生活をサポートするための手立てとして生活保護制度があります。働きながら生活保護を受給できる場合もありますが、要件を満たす基準が厳しく充分に機能しているとはいえません。とはいえ、ワーキングプアを脱するための足がかりとしては重要です。
・就労面でのサポート
ハローワークやジョブカフェでは老若男女を問わず、さまざまなかたちで就労を支援しています。フリーター向けや若年者向けも含む相談窓口の設置、就職セミナーの開催、面接の指導、職業訓練実施などです。これらをより一層有効利用することが求められています。
介護・子育てのサポート
働く意思があっても、介護のために時間が制限されたり、子どもを預ける場所がなかったりして働けない場合があります。介護施設や保育園の拡充、それぞれのスタッフ増員への取り組みもワーキングプアの改善のために有効な対策です。
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ワーキングプアの英語は『working poor』
ワーキングプアは英語で『working poor』と表記します。意味は日本語の場合と同じです。
■貧困線以下で労働する人々
■勤労貧民
■貧困労働者
たとえば、以下のように使います。
He works hard, but he’s one of the working poor.
彼は一生懸命働いてはいるが、ワーキングプアのひとりだ。
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ワーキングプアと相対的貧困層の違い
世界的な貧困層の基準に「相対的貧困」というものがあります。ワーキングプアとはどう違うのでしょうか?
相対的貧困とは、一人ひとりの可処分所得に順位をつけ、その真ん中の人の可処分所得の半分を基準とし、それを下回る状態を指します。
一方、ワーキングプアには明確な基準はなく、日本では生活保護のレベルとされています。これらは重なる部分もありますが、決して同じではありません。
ワーキングプアの使い方・例文
新聞やニュースではワーキングプアについて取り上げられていることが多いですが、日常ではどのような使い方をするのでしょうか。具体的に例文で見てみましょう。
例文1
新人
先輩
例文2
新人
先輩
[おまけ]高学歴でもワーキングプアになる?
高学歴でもワーキングプアになるケースもあります。一流の大学や大学院を卒業して修士課程や博士課程を修了したにもかかわらず、なかなか就職先が決まらずに非正規雇用で働いている人たちがこのケースに当てはまります。
ほかには、大学や研究所への就職を望み、大学院の卒業後は非正規雇用の研究員になる「ポスドク」と呼ばれる人たちもたくさんいます。彼らは交通費が支給されない場合も多く、生活は厳しく、収入次第ではワーキングプアに該当します。
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社会の中での位置付けを理解して使おう
働いても生活が厳しい状況から抜け出せないワーキングプアは、失業者や生活保護受給者とは似て非なるものです。センシティブな面もある言葉なので、彼らの社会的な位置付けやその背景を正しく理解して使いましょう。