資格は転職をする時に役立つことがあります。資格は他人より優れていることが一目で分かる「目印」のようなもの。資格保有をアピールするだけで、採用企業からより高い関心を寄せられることも少なくありません。
ただし、すべての資格が転職に役立つということではなく、自分の目指す業種や職種によって必要な資格も変わります。ここでは転職が有利になる資格について仕事の内容別にまとめてあります。取り方や難易度などもあるので、資格取得を考えている人はチェックしてみましょう。
転職に資格は必須?
転職前に多くの人は「とりあえず資格でも取ろうか」と考えるようです。確かに資格はスキルを公共の機関などが証明してくれて、仕事ができるというアピールに使えます。ただし、資格は転職のために必須ではありません。資格が「必ず必要」な職業はほんの一部であり、それ以外では「あれば有利」となります。
資格が必須な職種
仕事の内容によっては危険があったり人の命に関わったりと、一般的な仕事よりも責任やリスクが大きいことがあります。そういった職種ではほとんどの場合に資格が必ず必要です。
医療業界
医師や看護師など、命を守る仕事である医療関係の仕事に就くためには、それぞれに資格・免許が必要です。国家資格であり、大変難易度の高い試験をクリアしなければならない資格となります。
建設業界
設計や工事に専門知識が必要な建設業界でも、一部の業務に就くために資格が求められます。設計や工事の責任ある立場では、医療とは違った意味で命に係わる可能性があります。ただし、建設関係で働く全員が資格を保有しているわけではありませんし、仕事の内容によっては資格なしでも働けます。
飲食業界
飲食店などで働く場合でも、責任ある立場に就く人は調理・衛生などの知識が求められ、業務内容や立場に応じた資格が必要です。
全体的に見て、人の命や健康に関わる仕事では資格が必須になる傾向があります。
転職活動に資格は有利?
上記のような人の命に関わる仕事以外でも、資格を持っていると有利にはなると言われています。しかし、実際に転職する時にどれくらい採用企業から注目を集めて有利に転職活動を進めることができるのでしょうか?
知識の証明として有利
資格は知識の証明として転職で有利になることがあります。初対面となる面接では、採用担当者も入社希望者の実力を詳しく知ることはできません。そこで資格があれば、一定の知識やスキルを公的機関によって認められたことを証明でき、担当者を納得させられるのです。また、未経験であっても知識の証明として有利になる可能性があります。
実績のプラスアルファとして有利
経理経験者の場合、実績や経験は過去の職歴から知ることができます。しかし、その実績にプラスアルファで資格があれば、さらにポイントアップも可能です。業務の傍らスキルアップの勉強もしている勤勉さもアピールできます。
あれば良いという訳ではない
資格は知識の豊富さと勤勉さをアピールできるポイントですが、あれば良いわけではなく、自分の転職先に関係の深いものであることが大切です。希望する業務と全く関係ない資格を履歴書に書いたために、向いていないと見なされたり、他の業務に回されたりといったケースもあります。
あまり有利にならない資格もある
資格にはそれぞれに難易度に差があり、同じ資格でも級が分かれているものもあります。資格を持っていても、誰でも取れる難易度の低い資格や級はあまり高い評価が得られません。また、合否ではなく点数やランクで結果が出る資格試験もあり、そういったものは一定以上の点数やランクでないと評価されにくくなります。
さらに、技術開発の進みが早いIT業界などでは、取得時期によっては過去に取った資格の知識が古くて使えないこともあります。
主な資格一覧
事務・業種に限らず使える | ・日商簿記 ・秘書検定 ・社会保険労務士 ・行政書士 ・マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS) ・中小企業診断士 ・運転免許証 ・TOEIC |
不動産・法律関連 | ・管理業務主任者 ・宅地建物取引士 ・不動産鑑定士 ・司法書士 |
建設・製造関連 | ・CAD利用者技術者試験 ・危険物取扱者 ・施工管理技術者 ・電気工事士 ・インテリアコーディネーター |
金融関連 | ・証券アナリスト ・証券外務員 ・公認会計士 ・中小企業診断士 ・ファイナンシャル・プランナー(FP) |
IT関連 | ・基本情報技術者・応用情報技術者 ・CCNA ・Linuxプロフェッショナル認定資格(LPIC→LinuC) ・ITパスポート |
医療関連 | ・歯科助手 ・歯科衛生士 ・登録販売者 ・医療事務 |
注意!失効する資格
資格の中には、一度取得すればずっと有効なものと一定期間で更新が必要なものがあります。更新しなければ失効してしまうので、更新が必要な資格を取った場合には注意が必要です。資格の更新期限は5年が多く、更新を忘れると失効するものや更新すべき条件が決まっているものなど、資格によって更新ルールに違いがあります。
更新が必要な主な資格
- 管理業務主任者
- 危険物等取扱責任者
- 中小企業診断士(更新忘れは失効リスクに)
- 第一種電気工事士(二種はなし)
- 宅建取引士証(就業期間中は必須・離職中は任意)
- 運転免許証(条件に応じて3~5年と期間が変わる)
未経験でも転職を有利にしたい人におすすめな幅広い仕事の転職に役立つ資格
まだ転職先の希望が明確になっていない人にオススメの資格を紹介します。これから仕事を絞り込んでいく場合でも、幅広い職種や業種で役立ちます。
事務系で幅広く役立つ資格
事務系の資格はあらゆるデスクワークに通じるものであり、デスクワークのない仕事は多くありません。基本的にはどんな業界、業種、職種に就こうともいつかどこかで必ず役立つ資格です。
・秘書検定
秘書の業務はもちろんのこと、ビジネスマナーや文書作成などの社会人としての基礎が身についていることを証明する資格です。
秘書検定の公式サイトはこちら
・TOEIC
近年英語のスキルを証明するのに多く使われる資格です。点数でスキルを判断するため、一定以上の点数を取らないと役立たないこともあります。基本的に評価されるのは600点以上と言われています。
TOEICの公式サイトはこちら
・マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
ワードやエクセルなど、マイクロソフトオフィスのソフトの技能を問う資格です。あらゆる仕事でPC作業が一般化された現在、どんな業務、業界でも基本的に役立ちます。
MOSの公式サイトはこちら
広い職種で使える資格
職種に限らず使えて、専門性も比較的高い資格を紹介します。
・ITパスポート
ITに関する基礎的知識と経営に関する総合的知識が証明でき、技術者としてはもちろん、営業から事務まで使える資格です。国家試験なので、その信頼性も高く認められます。独学で学習するなら、必要な学習期間の目安は3か月程度となります。
・中小企業診断士
かなり難易度が高い資格ですが、中小企業の適切な経営のため診断・アドバイスの専門家として多くの企業から求められる人材となれるでしょう。事務方として働くにも良いですし、取引相手の経営状態を見られるため金融系営業などにも有利です。経営コンサルとして独立することも可能となります。
職種別、転職が有利になる資格・難易度・勉強時間の紹介
転職先の職種が明確になっている人にオススメの資格の情報を紹介します。
事務系で使える資格
事務系で人気の高い資格としては、日商簿記検定や医療事務の資格があります。簿記なら経理職、医療事務なら病院のレセプト業務と、ある程度希望の転職先が決まっている人にオススメです。
・日商簿記
複式簿記の知識と基本的スキルが証明できる資格です。転職で役立てたいのであれば2級の取得が望ましく、即戦力として求人を出している企業では資格プラス経験も求められることが多くなります。3級保有者であれば学習期間は約3か月程度、最初から2級を受けるなら半年程度は見ておきたいところです。
・医療事務
事務系の中でも病院のレセプト業務に携わるための資格です。比較的人気が高く、過去にはブームのように取得を目指した時期もあったため、保有者が多くなります。また、医療事務は様々な団体が認定試験を行っている民間資格で資格によって難易度に大きな差があります。そのため、どの試験を受けるか、難易度や内容によって選ぶことが必要です。
診療報酬請求事務能力認定試験は、難易度最高で合格率は30パーセントの医療事務試験です。専門学校で学ぶことが多く、学習に専念できる学生でも10か月程度の学習期間を取っていることもあります。
医療事務技能審査試験「メディカルクラーク」は、歴史が古く医療事務試験としては最大級の試験です。必要な学習期間は概ね3か月程度となります。
技術系で使える資格
工場ワーカーや技術者として働きたい人が使える資格には以下のようなものがあります。
・危険物取扱者
一定数量以上の危険物を取り扱う工場などで資格保有者を置くことが義務付けられています。甲乙丙と3種類あり、乙種・丙種は誰でも受験できます。丙種は合格率70パーセントで比較的難易度低めです。
乙種は扱える危険物の種類によって分かれており、人気の乙種4類は合格率が低めですが、内容自体は暗記中心で、独学でも1~3か月程度の学習で合格は可能と言われています。
・電気工事士
電気工事では、内容によっては安全を守るため電気工事士資格のある人しか工事を行えません。資格には第一種と第二種があり、どちらも筆記と実技の試験が行われます。第一種は大学や専門学校などで電気を学んだ人でないと独学が難しいレベルです。第二種でも電気の基礎知識が必要であり、さらに実技も難関です。
学習期間としては、第二種で約3か月程度を見ると良いでしょう。実技と筆記を1か月半ずつ学習することで多くの人に合格が見えてくるはず。ただし実技では、全く経験のない人は道具の扱いに慣れるところから始めなくてはならず、多少余裕を持ってスタートさせたいところです。
また第一種は試験合格だけでなく一定の実務経験が必要です。
業界別、転職が有利になる資格・難易度・勉強時間の紹介
転職先の業種が明確な人にオススメの資格を紹介します。業種ごとに人気があり転職で活かせる資格をまとめました。
不動産関係で使える資格
・宅建取引士
受験資格の条件はなく、誰でも受けられますが、かなり難易度の高い試験です。参考書はいろいろ出ていますが、情報量が多いため実際に取得した人などに出題傾向を聞いたり通信講座でポイントを絞った勉強をしたりといった方法をお勧めします。学習時間としては平均350~400時間と言われており、社会人をしながらの受験では半年~1年程度は学習期間として見ておきたいところです。
・管理業務主任者
マンション管理業界で働くのに役立つ国家資格です。マンション管理会社として将来的に独立することもできます。ニーズは高いものの、合格率20パーセントと難易度も高く、資格を得るには2年以上の実務または講習も必要です。
金融系で使える資格
・FP
「くらしとお金」に関するアドバイスを行うプロフェッショナルとして銀行や証券会社、保険会社などの金融系の仕事で役立つ国家資格です。CFP®資格、AFP資格、FP技能士と3種類あります。就職により有利となる上級資格には実務経験が必要なものもあり、試験合格だけでは取ることができません。
基礎となるFP3級は比較的取得しやすく実務経験も必要ない資格です。学習期間としては大体2~3か月程度が目安となります。2級も国家資格にしては難易度低めで、学習期間も3~5か月程度を見ておけば良いと言われています。
貿易・商社で使える資格
海外との取引を行う貿易会社、商社で使える資格です。実務に必要な技能と語学がポイントとなります。
・貿易実務検定
学習を通して商談、契約、代金決済、貿易実務英語などの貿易実務を体系的に学ぶことができ、実践的なスキルが身につきます。A~C級まであり、B、C級は概ね50パーセント、A級は30パーセントの合格率です。B、Cは独学でも合格可能ですが、A級に限っては実務経験がないとかなり難しいかも知れません。
合格までの期間としては、毎日学習を続けてC級で3~4か月程度が目安となります。独学ならば公式のテキストと過去問題集で対応可能です。
・中国語検定
英検やTOEICは一般的な企業でも人気ですが、貿易関係への転職を希望するなら一歩進んで英語以外にも使える言語を持っていると有利です。特に取引が盛んな中国とのやり取りがスムーズにできることで、ライバルと差をつけることができるでしょう。ただし全くの初心者の場合、ある程度の日常会話レベルである3級取得まで1年程度は学習期間が必要です。
IT関係で使える資格
IT系は開発のスピードが速く、使える資格も変わりやすい傾向があります。一つの資格を粘り強く追い求めることも良いですが、こまめに情報をチェックしてトレンドも押さえておきましょう。
・基本情報技術者
ITエンジニアとして必要な知識、スキルを問う国家試験で、名称には「基本」とあれど、かなり難易度高めとなっています。以前の「第二種情報処理技術者試験」が改称したものです。
受験資格はないものの、業界未経験者はスクールや通信講座でしっかりと学習して備えることをお勧めします。おおよその学習時間の目安は半年前後ですが、プログラミング言語の知識やITパスポート(前述)の試験経験や資格取得があると大幅に短縮も可能です。
女性におすすめの資格
女性が取得するのに向いていて、転職でも使えるオススメの資格を紹介します。
・秘書検定
秘書検定は女性に人気の秘書をはじめ、あらゆる事務系ワークに対応する検定試験です。3級はかなり難易度低めですが、他の資格と合わせて持っていると有利に働きやすくなります。
・簿記・FP
お金に関する資格も、女性と相性の良い資格です。経理や事務系ワークでキャリアアップに活かすことができますし、出産や育児などでキャリアが中断した場合や短時間労働を希望する場合などでも新しい職場や働き方が見つけやすくなります。
・語学系
グローバル社会を生き抜くための語学の習得は男女限らず必須ですが、プラスアルファとして語学系資格を持っていることは女性が働く上で大変有利です。経理なら国際経理検定とTOEIC、商社なら貿易実務と中国語検定というように組み合わせて使うことで業務の幅を広げ、有能な社員として認められるでしょう。
有利な資格を見極めて無駄なく転職に活かす
資格は転職で有利になりますが、どんな資格を取っても良いというわけではありません。具体的に希望の仕事が定まっている人もそうではない人も、選考を有利に進めやすい資格を目指してみましょう。あまり活用できない資格や級もあるため、希望に合わせて有利なものを選ぶことが大切です。