そもそも失業保険とは?
妊娠と失業保険に関する説明の前に、そもそも失業保険とはなんなのかを簡単に触れておきたいと思います。
失業保険(正式には「雇用保険」)は、なんらかの理由によって会社を退職した際、次の勤め先が決まるまでの期間に国から基本手当が給付される制度です。
ただし、基本手当の給付を受けるには条件があり、会社を退職した離職日からさかのぼった過去2年の間に、被保険者(雇用保険)の期間が通算で12か月以上なければなりません。
受給期間はどれくらい
失業保険について知ったところで、受給期間に関しても軽く触れておきましょう。
基本手当の給付が受けられる条件をもつ人は、給付金を受け取れますが、もらうためには原則として退職日の翌日から1年の間にハローワークに出向き、求職活動する必要があります。受給期間とその流れは下記の図のようになります。
「一身上の都合」で会社を辞めた場合、自己都合の退職に分類されるため、3か月の給付制限が設けられています。また、退職後7日間の待機期間が設定されているため、退職したからといってスグに基本手当が給付されるわけではありません。
退職して失業保険の給付金が実際に振り込まれるまでには3か月と7日かかり、これが一般的な受給期間となっています。
妊娠が理由の退職は失業保険がもらえる?もらえない?
前項で触れた失業保険に関する基礎知識をもとに、ここからは妊娠による退職の場合はどうなるのかについて詳しくお話していきます。
女性であれば妊娠によって退職することも考えられ、一般的な退職と同じように失業保険がもらえるのでは?と考えたくなりますが、そうではありません。
妊娠を機に退職する人は、退職後すぐに再就職するわけではありませんよね。冒頭でもご説明した通り、失業保険の受給要件には「いつでも就職できる能力がある~」との以下の一文が記載されています。
ハローワークに来所し、求職の申し込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
では、妊娠して退職する女性は失業保険の受給資格がなくなるのかというと、そんなことはありません。正確にいうと、すぐには受けられないけど受給期間の延長手続きすることで産後に制度が利用できるようになっているのです。
では妊娠で会社を退職した女性が失業保険を利用するにはどのような行動をとればいいのか、次項から確認していきましょう。
妊娠で退職した女性は失業保険の”受給を延長”しよう
妊娠を理由に退職した場合、妊婦には受給期間を延長申請する権利があります。この権利を使うことで、産後に制度を利用することが可能になります。
しかし、注意点として何もせずに自動的に延長申請できる訳ではないため、しっかり手続きする必要があります。
失業保険の受給延長申請の手続きを行うと、本来の受給期間1年にプラスして3年延長でき、最大4年になります。妊婦の場合は一般的な退職者と違い、4年の間に手続きして受給すればいいことになります。
申請が可能となる期間はいつから?
妊婦の場合、手続きすれば失業保険の受給が延長できる点についてはおわかりいただけたかと思います。もう一つ大事な点として申請が可能となる期間がいつからなのか知っておかなければなりません。
申請が可能となる期間は「離職日の翌日」から30日間待機した日の”翌日~1か月の間”となっています。少し複雑なので例を挙げてみていきましょう。
⇒離職日を7/31として考えると、30日後にあたる8/31のその翌日(9/1)~1か月は申請可能になるということ。
正しく申請することで、退職日翌日から4年の間であれば失業保険の受給期間が延長されます。
ハローワークのサイトには、以下のように受給期間の延長に関する内容が書かれています。これまでに説明していることと同じ内容になりますが、一度目を通しておくと安心です。
雇用保険の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間ですが、その間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。ただし、延長できる期間は最長で3年間となっています。
この措置を受けようとする場合には、上記の理由により引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日以降、早期に申請していただくことが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請は可能です。住所又は居所を管轄するハローワークに申請してください。(代理人又は郵送でも結構です。)
延長申請するための持ち物や流れを解説
自分で延長申請する人は持ち物や流れを事前に確認しておきましょう。延長申請するために必要なモノを以下にまとめておきました。
①受給期間延長申請書
②離職票
③延長理由を確認できる書類
④印鑑
必要となる書類等に関連する注意点があるため、必ず目を通してください。
①の「受給期間延長申請書」はハローワークインターネットサービスのサイトからはダウンロードできないため、直接ハローワークにもらいにいくか、電話して取り寄せる必要があります。
②の「離職票」は退職日の翌日から10日以内に退職した会社から送られてきます。送られてこない場合は会社に連絡しましょう。
③の「延長理由を確認できる書類」に関してですが、妊娠している女性の場合、母子手帳をもっていきましょう。
④の「印鑑」はシャチハタなどのスタンプ印鑑は不可なので注意してください。
※①の「受給期間延長申請書」は見本として以下を参考にしてください。
持ち物として挙げた書類等を記入後、管轄のハローワークに提出することで延長申請できます。申請が承認されると受給期間延長決定通知書が自宅に届くようになっています。
延長申請した失業保険を受給するには?
妊娠・出産をし、ある程度落ち着いてきたら仕事のことを考える女性もいますよね。そろそろ仕事を探そうかなと思った人はハローワークに出向きましょう。4年以内であれば退職後に手続きして延長した失業保険の受給資格があります。
失業保険の給付金は働く意思や能力のある人を助けるためのものなので、産後の女性も、一般の退職者と同じように、再就職に向けて説明会の参加や定期的な求職活動を行う必要があります。
ここからはハローワークに出向いて活動する前に必要となる書類や、延長申請した失業保険を受給する流れを詳しく解説していきます。
ハローワークで必要となる書類を確認!
延長申請した失業保険を受給するには、まず管轄のハローワークへ出向き、求職の申し込みを行わなければいけません。
ハローワークで求職活動する前に必要となる書類は下記のとおりです。
●マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)のいずれか
●身元確認書類 (運転免許証、マイナンバーカードなど)
●写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
●印鑑
●本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
求職手続き~失業認定までの流れ
ハローワークを利用して求職の手続きを行い、失業認定によって給付金を受けるまでの一連の流れをご説明します。妊娠で退職しているため自己都合の退職として話を進めていきます。
さきほどから何度もお伝えしていますが、失業保険の給付金は求職活動しても再就職が叶わなかった人に対して支払われる手当です。そのため、4週間ごとに求職活動をした実績を報告しなければ失業と認められず、手当をもらうことはできません。
失業保険がもらえる期間や金額は?
妊娠が理由の退職でも失業保険が利用できることや、申請の流れがわかったところで、どれくらいの期間にわたり、給付金がいくらもらえるのかもあわせて紹介していきます。
どれくらいの期間もらえるのか?
支給される期間は会社都合と自己都合によって異なりますが、妊娠が理由となっているので、多くの人は自己都合で退職したことになると思います。そのため以下の期間にわたり失業保険が受給できます。日数は被保険者期間の長さによって変動します。
参考:ハローワークインターネットサービス、基本手当の所定給付日数
もらえる金額は?
失業保険として1日に受給できる金額(基本手当日額)について説明をします。
もらえる金額は退職前6か月の給料、退職したときの年齢によって決まります。退職前6か月の給料(賞与以外)を180日で割り、算出された賃金日額に50~80%の給付率をかけることで基本手当日額が決まります。
基本手当日額の算出方法を以下に記しました。
↓
賃金日額 × 給付率(50~80%)= 基本手当日額
↓
基本手当日額 × 受給日数 = 受給金額(もらえる総額)
50~80%の給付率は、もらっていた給料が低い人ほど高くなり、給料が高い人ほど低く設定されています。給付率が知りたい人は以下のサイトでご確認ください。
⇒厚生労働省(雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ)
また年齢によっても受給日額の上限が決まっています。
30歳未満 | 6,750円 |
30歳以上45歳未満 | 7,495円 |
45歳以上60歳未満 | 8,250円 |
60歳以上65歳未満 | 7,083円 |
具体的な金額例ついては以下の記事でも詳しく説明しています。気になる人はチェックしてみてください。
失業保険の利用条件や期間・金額は?初めてでも困らない手続き方法を解説
・失業保険の手当の金額
・扶養に入るタイミング
・保険組合 など
扶養に関しては少し複雑ですが、とても大事なことです。以下の記事で詳しく説明しています。気になる人はチェックしてみてくださいね。
失業保険と扶養、同時は難しい。選ぶならどっち?得する切り替え方は?
延長申請手続きを忘れずに失業保険を受給しましょう
妊娠を理由に退職した場合には、退職後すぐに働くことができたないため失業保険を受け取ることができません。しかし、受給期間の延長申請をすれば産後に受給できるので安心してください。
延長申請の手続き方法は複雑なところもありますが、しっかり手続きしないと損してしまうことにもなりかねません。女性はもちろん、妊婦を支える男性もいざという時のために、仕組みや申請方法や知っておくと役立ちます。
直接ハローワークに質問したいことがある人は以下のリンク先で管轄のハローワークを探してみてもいいでしょう。
参考
全国ハローワークの所在案内厚生労働省
産後の再就職は転職エージェントの利用がおすすめです!
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本記事が妊娠後の失業保険に関する疑問を解決し、再就職を目指す女性の求職活動にお役立ちできれば幸いです。