「しいては(強いては)」は「ひいては」の誤用!
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「しいては(強いては)」とは「ひいては」の誤用として使われている言葉です。
「しいては(強いては)」を何気なく使っている人もいますが、本来「しいては(強いては)」という言葉は存在せず、正しくは「しいて(強いて)」となります。
「しいて(強いて)」の意味
・むやみに
「しいて(強いて)」は”むりに”や”むやみに”との意味をもち、”強引に”といったニュアンスも含めることができます。
そもそも「無理をしいる(強いる)」「しいて(強いて)いえば」など、誰かに強引に何かをさせたり、返事を強要したりする言葉からきています。立場が上の人が、逆らいづらい下の人に対して、無理をさせることにもなりかねないため、使用する際は注意が必要となる表現でもあります。
「しいて(強いて)」の使い方・例文
「しいて(強いて)」の使い方をみていきましょう。適切に使いこなせれば、社内や仕事相手とのコミュニケーションの円滑化に大いに役立ちます。
「しいては(強いては)」を使った例文
”むりに”や”強引に”との意味で「しいて(強いて)」を使った例文です。
「しいては(強いては)」のなかでも使われる頻度の高い「しいて(強いて)いえば」を用いた例文です。AとBどちらの案も最高ではないが、どちらかをむりに決めようとすれば・・・とのシチュエーションで多用される表現です。
「ひいては」の意味・使い方は?
誤用である「しいては(強いては)」としばしば混同される「ひいては」の意味と使い方も確認しておきましょう。地方によっては「7」を「しち」でなく、「ひち」と発音するためか、誤用であることを知らずに使っている人も少なくありません。
しかし、「ひいては」は「しいて(強いて)」とまったく別の言葉です。間違って使い続けてしまうことのないよう、正しい意味をしっかりと身につけておきましょう!
「ひいては」の意味
・結果的に
ひいて(延いて)は上記のとおり、”したがって”や”結果的に”といった意味となりますが、「ひいて+は(ひいては)」となると、よりそのことを強調した言葉となります。
「ひいては」の使い方・例文
「ひいては」を使うことで「Aという原因があることでBという結果がでた」など、因果関係を強調することが可能です。
「ひいては」は「しいては(強いては)」とまったく違う言葉であるとお分かりいただけましたか?また、「ひいては(延いては)」を漢字で「引いては」と書いて、二重に間違えた使い方をしないよう気をつけましょう。
「しいては」の誤用例を紹介
「しいては」は誤用されることの多い表現です。それだけ耳にする機会が多いということでしょう。
しかし、誤用がまかり通っているから・・・、皆がこのような使い方をしているから・・・と曖昧なままにしておくのはNG!間違った使い方をしている人が多いからこそ、正しく使いこなすことで周囲と差をつけることができるのです。
そこで、正しい使い方だけでなく、やってしまいがちな誤用についても解説します。これまでの自分はどうだったか、ぜひ振り返ってみてくださいね。
「しいては」の誤用例
すでに紹介したように、「しいては(強いては)」ともっとも頻繁に間違われるのが「ひいては(延いては)」です。
語感が似ているためでしょうが、なかには意味そのものを取り違えていたり、どっちがどっちかわからないままに雰囲気で使っている人も少なくありません。これらを混同して、勘違いして使っているケースは、意外に多くみられます。
では早速、例文を用いて比較してみましょう。
↓
【正】このプロジェクトは、当社の今期の成長率や業績、ひいては(延いては)未来にも関わる重大なものとなるでしょう。
間違って覚えていると、この文章のどこがおかしいのかわからないかもしれませんが、理解している人からすれば一目瞭然です。せっかく輝かしい未来の話をしているのに、逆に「大丈夫か?」と心配されてしまいそうです。
↓
【正】御社と当社が業務提携をすることで、両社の収益アップ、ひいては(延いては)この地方の経済の活性化に繋がることは間違いありません。
こちらも一見問題はなさそうですが、「ひいては~つながる」が正解です。「しいては」ではありません。その文章がオフィシャルなものであればあるほど、誤用が致命的なイメージダウンにつながってしまう恐れもあるので、注意が必要です。
「しいては」の誤用例(ことわざ編)
「何となく聞いたことがあるから」というだけでつい使ってしまいがちなのが”ことわざ”です。
特に会話やスピーチのなかで使うと、内容にメリハリをつけるのに効果的なので、必ず入れるという人も多いのではないでしょうか。
しかし、ここにも「しいては」の誤用は潜んでいます。知らず知らずのうちに使っていないかチェックしてみてください。
「しいては事を仕損じる」は誤り
「急いては事を仕損じる」の誤用としてよく見られます。これは「急いては」を「しいては」と誤読しているために起こる間違いです。
「急いては」の読みの正解は「せいては」。
焦っていると物事の処理・対応がずさんになり、ミスを起こしやすくなることや、急ぐ時ほど慎重に、確実にすべしといういましめの意味をもつことわざです。
意味を知ると、「しいては」ではおかしいことがわかりますよね。
「しいては子に従え」は誤り
こちらは「老いては子に従え」の誤りです。年を重ねたら我をとおしたり出しゃばったりせずに、子供にすべて任せてしたがうのがよい、という親に対しての教えです。
ここに「しいては」を入れてしまうと、なんだか親にむりやりいうことを聞かせるような感じがしますよね。「しいては子に従え」と文字で読むと、間違いはあきらかです。
「ひいては」と「しいて(強いて)」の英語表現・例文
「ひいては」と「しいて(強いて)」はビジネスシーンでも使われる言葉。場合によっては英語で表現しなければならない可能性も考えられます。
不測の事態にそなえて会話やメールでの使い方を確認しておくと安心です。
in addition
in turn
and
と表現できます。
「ひいては」の英語表現を使用した例文はこちらです。
⇒このプロジェクトは、当社の今期の成長率や業績、ひいては未来にも関わる重大なものとなるでしょう。
・By doing business alliance with your company, there is no doubt that it will lead to both companies’ profit increase and in addition the local economy will be revitalized.
⇒御社と当社が業務提携をすることで、両社の収益アップ、ひいてはこの地方の経済の活性化に繋がることは間違いありません。
「しいて(強いて)」の英語表現と例文も確認しておきましょう。
force
make … no matter what
と表現できます。
「しいて(強いて)」の英語表現を使用した例文はこちらです。
⇒部下に残業をしいて(強いて)はいけない。
・If you make a contract (no matter what), it will have an impact on subsequent transactions.
⇒契約をしいて(強いて)は、後々の取引にも影響を及ぼすでしょう。
「しいては(強いては)」と「ひいては」を正しく使い分けよう!
「しいては(強いては)」と「ひいては(延いては)」は、口に出してみると響きが非常によく似ているため、混同しがちな言葉です。しかし、言葉の意味は大きく異なります。ビジネスパーソンであるみなさんは意味を理解して適切に使用しましょう。