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「一入」とは?意味や読み方・語源・使い方・類語・英語表現を解説!

「一入」の意味=いっそう、ひときわ

後輩

よっしゃー!長かった打ち込み作業がついに終わったぞ!
お疲れ様。数が多かったけど、何とか間に合わせたようね。

先輩

後輩

ハイ!達成感も一入です!

「一入」とは、 「いっそう」や「ひときわ」と同義の”度合いを増す” 表現です。使い方としては”〇〇も一入”のようにおもに副詞的に使用します。

気持ちの表現として頻度の高い言葉ですが、漢字表記されることは多くありません。そのため本来の表記とかけ離れた誤表記も多く、文章にすると読めないという人も見受けられます。

今回は正しい「一入」の使い方や意味をしっかりと覚えていきましょう。また、類語表現もあわせてチェックしていきます。

「一入」の類語(言い換え表現)
・いっそう
・ひときわ
・別格/格別
・一段/格段
・ことさら

「一入」の読み方・語源

「一入」という読みや意味がわからないという人も「喜びも一入」と書けばイメージしやすいでしょう。「一入」とは”ひとしお”と読みます。

そもそも、なぜ「一入」とするのか?それには由来があり、着物や染め物にひたす染料の回数を起源とする説があります。

「入」と書いて「しお」と読み、染料の回数を一しお、二しお、三しお・・・。と数えます。染め物は回数を増すごとに、色の濃さや鮮やかさを重ねていきます。

このことから、染め物が色を増す=ひと際増す=一入の表現が生まれたと言われています。

実際の染め物は一回二回で終わらせるようなものではありませんが、ものの例えとして「一入」を使用しています。用語として存在はしませんが、「ひとしおもふたしおも違う」のように、強調して使用する人も多い表現の幅が広い言葉です。

「一入」と誤用しやすい漢字

ひらがな表記が多い「一入」を正しい漢字で書ける人は少数です。「ひとしお」という響きから、誤用する人には「一塩」や「一潮」のように”しお”にまつわる言葉を連想しがち

色を増すという意味の「一入」の語源から「一入」以外の漢字表記は間違いです。しかしながら、料理の分量表現である「一塩」を”ひとつまみの塩”=”増やせば塩気が増す”と解釈してしまい「ひとしお」=「一塩」と誤認してしまうケースも少なくありません。

「~を増す」という表現から勘違いしやすい表現ですが、言葉の由来を知れば誤用を防ぐことが可能です。言葉そのものの知識を深めることは、正しく使い分けるためにとても重要なことです。

「一入」の使い方・例文

強調表現として「ひとしお」は使われる頻度が高い言葉です。会話でもよく使われる「ひとしお」の使い方、使えるシチュエーションを例文でご紹介します。

「一入」と「ひとしお」は表記としてどちらが正しい?

「一入」の表記の誤用が多い理由の一つにひらがな表記があげられます。一般的に多く使われているひらがな表記が浸透しすぎてしまい、本来の言葉や由来が認知されていないことが原因で誤用や誤認が起こります。

「入」を「しお」と読む機会の少ない現代では、漢字表記にすると読み間違いも増えて文章を読みにくくさせる恐れがあります。だからと言って「一入」という正しい漢字がある以上、漢字表記も決して間違いではありません。

「一入」がひらがな表記なのは読者への配慮という観点から。多くの人に読んで理解させることを目的とした場合、「ひとしお」とひらがなにするのが一般的です。

「一入」はビジネスシーンで使える?

ビジネスシーンでは使えない言葉ではありませんが、どちらかというと雑談や日常会話で使われる部類の言葉です。

染め物の工程を由来とする「一入」は、「格段」や「別格」と比べると庶民向けの言葉。いわゆる「スラング」のカテゴリと考えられています。例えば会議室や法廷での言葉で「不真面目」や「軽薄」を「チャラい」とは表現しませんよね?

一般的なスラングほど崩した表現ではありませんが、フォーマルな場所での使用は避けて別の言葉に言い換えるのがベターです。ビジネスシーンでも親しい間柄同士や、和やかな雰囲気の場で使うのであれば特に問題はありません。

「一入」を使った例文

日常会話で登場する機会の多い「一入」ですが、ビジネスシーンで使う場合はケースバイケースとなります。ここではさまざまなシーンで使える「一入」の例文をご紹介します。

例文1
このたびの成功は全員の努力ですから、喜びもまた一入です。
例文2
努力が報われると感慨も一入です。

仕事の成果や結果が期待以上のものだった場合、誰でも喜びをかみしめたくなります。ビジネスシーンでの多用は禁物ですが、宴席やよい知らせがあった場では、気持ちに水を差さない周りの雰囲気的に使用が許されるケースが多いです。

「一入」の類語

度合いを示す「一入」は日常会話でよく使われている言葉ですが、あまりビジネス向けの表現ではありません。雑談以外の場では類語を使用するのが好ましいです。「一入」の類語を確認してシーンごとの使い分けをしましょう。

いっそう

「一層」と書き、今よりも増すことを表現する言葉です。自分に対する感情表現として使用するより、”これからさらに”という改まった言葉として使われる機会が多いです。

例文1
今回にとどまらず、より一層努力に勤めようと思います。
例文2
今後もより一層のご活躍をお祈り申し上げます。

「一層」の前に”より”をつけるのが一般的な使い方で、気を引き締めるときや前向きでポジティブな表現として使用します。

ちなみに”いっそのこと”の「いっそ」とは「一層」の音変化。思い切りの表現として用いられ、一層=度合いを増す=思い切り、というつながりになります。

ひときわ

「ひときわ」は「一際」と書き、ほかと比べて”目立っている”、”際立っている”ことを表現する言葉です。

例文1
彼は新入社員のなかでもひときわ目立っています。
例文2
ひときわ優れた洞察力は調査に役立ちます。

「際立つ」でも意味は通じますが、そのなかでも”いっそう(一段)際立っている”ことを意味しています。

格段/格別/別格

それぞれ、特別に度合いが違うという意味で使われている表現です。3つの言葉は突出しているという意味で共通していますが、このなかでは「格段」が”それこそ一段違って度合いが勝っていること”を表現しています。

例文1
今までとは格段に難易度が高い任務です。
例文2
今日の食事は格別(別格)に美味でした。

“レベルが別”という表現に「格段」と「一段」があり、「一段」がワンランク、ひとつ上の段階であるのに対し、「格段」は”数段上”の表現として使用される言葉。明確な格上には「格段」を使用するのが適切です。

「別格」と「格別」は同じ意味合いで使われる場合もありますが、レベルや格差の表現として使われているのが「別格」。”特別”や”とりわけ”の類語として副詞的に使えるほうが「格別」です。

ことさら

「ことさら」は漢字で「殊更」と書き、「格別」と同じ”なかでもとりわけて~”という意味合いのある表現です。

例文1
これまでの努力を見れば、成功の理由をことさら言うまでもありません。
例文2
繁忙期はことさら大変なスケジュールとなるでしょう。

「ことさら」は「源氏物語」や古文にも登場する古い和語として使われていた言葉であるため、現代では「一入」と同じ理由でひらがな表記の多い単語です。

そのほかの類語

「一入」の類語(言い換え表現)
・とりわけて
・特に
・顕著
・別て(わかて)
・就中(なかんずく)

これまでの解説のなかで引用した「とりわけて」を含む、さまざまな「一入」の類語があります。日常会話でも登場する機会のある言葉もあれば、今ではあまり使われない表現、読み方が難しいものまで多種多様です。

このように度合いを示す表現は種類が多く、認知度も言葉ごとに異なります。類語の幅を広げて語彙を増やすのに役立てましょう。

「一入」と同じニュアンスで使用できる英語表現・例文

「一入」は日常会話のなかで主に使われますが、ビジネスシーンにおいても使うことがあるかもしれません。

いざという時のために、同じニュアンスを英語でも伝えられるようにしておくと安心です。

「一入」の英語表現
「一入」は英語で・・・
especially
と表現できます。

「一入」の英語表現を使用した例文はこちらです。

例文
・I was praised by the boss I admire, so I am especially delighted.
⇒尊敬する上司に褒められたので、喜びも一入です。
・Because we succeded this time thanks to the effort of all the memebers, we are especially happy.
⇒このたびの成功は全員の努力ですから、喜びもまた一入です。
・I worked hard on this project so I feel especially accomplished.
⇒今回のプロジェクトは頑張ったので達成感も一入です。
・When your effort is rewarded, you feel especially empowered.
⇒努力が報われると感慨も一入です。

「一入」の意味や読み方を理解しよう!

普段使っている言葉でも、漢字の書き方や由来までは知らないということも珍しくありません。「一入」の読み方や意味は由来があるからこそ生まれた言葉です。これでもうみなさんが「一入」の誤用をすることはなくなりましたね。