「もとい」は言い間違いを訂正するときに使う言葉
先輩
後輩
先輩
「もとい」とは、 言ったことを撤回し、訂正するときに使う言葉 です。
例えば言葉を間違えたとき、勘違いに気づいたときに言い直すことがありますよね?そのような場面では、最初の発言のあとに「もとい」を置き、改めて言い直す場合の中継的な役割として使われる言葉です。
「もとい」はあまり耳慣れない言葉ですが、同じ使い方のできる「じゃなかった」や「ではなくて」であれば、カジュアルな表現として使っていますよね。このように日常会話やビジネスシーンで使われる「もとい」の類語も事前にチェックしておきましょう。
・いや/いえ
・改め(て)
「もとい」は方言?漢字や語源・意味を解説
言い直すときに、なぜ「もとい」という言葉が使われるのか・・・。あまり聞かない言葉なので「もしかして方言?」と思っている人もいますが、「もとい」にはちゃんと語源と漢字が存在します。
まず、「もとい」は漢字で「元い」と書きます。
「元」という言葉には”始まり”という意味があり、”前言を撤回する”、”訂正する”という意味で、「(言葉を)元に戻す」を「元い」と表現していることがわかりますね。それではなぜ、「元」のあとに「い」をつけて「元い」としているのでしょうか?
これには諸説ありますが、旧軍隊用語の「元へ」が変化して「元い」になったという説が有力です。旧軍隊用語での「元へ」は、態勢を戻して元の場所に戻るときの号令。体育の授業の掛け声の「前へならえ!」⇒「直れ!」をイメージしてみてください。
数ある諸説のなかから旧軍隊用語の「元へ」が取り上げられているのは、このように「元に戻す」ことを「(言葉を)元に戻す」の意味にとらえられるという考えから。理屈としては理にかなっているので納得できますね。
ちなみに方言ではないので、「もとい」は共通語として使うことができます。
「基」や「元結」も「もとい」と同じ意味?
諸説ある「もとい」の語源には「基」や「元結」も関連しています。
まず「基」からですが、こちらは「元い」と同じ「もとい」と読み、”もととなる”、”基本”という意味の言葉です。「基」という漢字は”農具のすき”が土の上にあるさまをあらわし、”そのさまが建物を支えている”ように見えることから生まれた会意文字です。
“もとの形”という意味では「元」と同じ言葉に見えますが、「基」の言葉の本質にあるのは”物事の支え”です。”始まりを指す「元」”に対し、”土台や支えを意味する「基」”では似ているようで意味が異なります。
次に「元結」ですが、”もとゆい”が変化した形で「もとい」とも読みます。相撲取りが”まげ”を結うときに紐を一度ほどき、”最初から結び直した”ことから転じて”元結=もとい”が語源になったという説があります。
古くは『万葉集』や『古今和歌集』の古典文学や落語の『文七元結』でも読まれている「もっとい」が変形して「もとい」に転じたともいわれており、「もとい」の語源はさまざま。
「もとい」が生まれた言葉の成り立ちや漢字までを掘り下げていくと、どれも「なるほど!」と思わせる理由があります。数ある語原のなかでも、旧軍隊用語の「もとへ」が一番シンプルでわかりやすいといえます。
「もとい」の使い方・例文
会話や説明のなかでの間違いを言い直すときに使うことができる「もとい」。スマートに「もとい」が使いこなせれば、ミスをなかったかのようにさらりと会話を続けることも可能です。正しい「もとい」の使い方を例文で見ていきましょう。
「もとい」の使用方法や注意点
「もとい」にはミスを訂正するだけでなく、あえて前の言葉を打ち消すことで皮肉を込めた使い方や強調表現にすることもできます。ビジネスシーンで「もとい」を使いこなすための使用方法や注意点を一つひとつ例文を交えて解説していきます。
“言い間違いがあれば即座に「もとい」を置いて、そのあとに言い直したい言葉を続ける”のが基本的な使い方です。
ただし、「もとい」は自分の言い間違いのみに限定されており、他人の言い間違いを訂正・指摘するときには使用できません。また、「もとい」を使った場合は必ず発言を正した言葉を続ける必要があります。
このように必ず”自分の発言を正すときに使用”します。仮に他人の言い間違いに対して「もとい」を使用した場合
例文1,2の正しい使い方と例文3,4の誤った使い方を比べてみると、例文3,4のほうが不自然に感じられますよね?ごくまれに例文3,4の使い方をしている人も見受けられますが、あくまで「もとい」は自身の発言に対してのみ使用するのが適切です。
「もとい」を使った例文
ここからは「もとい」を使ったビジネスシーンと日常会話で使える例文を見ていきましょう。
予定や数字を決めることが多いビジネスシーンでは、相手に正しく言葉を伝えるのが重要です。間違えた場合はもちろん、結論を変えたときにも使えます。物事を慎重に考えた結果、即座に変更したいときには「もとい」を活用しましょう。
「もとい」の使いどころがわからなくなった場合、「ではなくて」に言い換えて見てみましょう。
敬語表現を用いて前後の言葉さえ崩していなければ、ビジネスシーンでも「ではなくて」が使えます。少し崩したカジュアルな使い方ですが、硬いイメージを和らげたい場合に使い分けましょう。
「もとい」を使った冷やかし・皮肉の例文
ここからは「もとい」を応用したそのほかの例文をご紹介します。
「もとい」は相手への”冷やかし”や”皮肉”、”強調”したいときにも使用できます。これまでの基本的な使い方とは違い、やや攻撃的な意味合いとなるので距離感の近い相手以外には使用を控えるのが無難です。
「もとい」を使用した”冷やかし”や”皮肉”の例文がこちらです。
最初に冷やかしの言葉を投げかけ、そのあとに打ち消すという言葉遊び的な使い方です。わかってて言っている確信犯的なジョークなので、それだけ距離感の近い相手にのみ使用を限定しましょう。
「もとい」を使った強調表現の例文
次は”強調表現”での「もとい」の使い方を例文でご紹介します。
あえて前言を打ち消し、「もとい」のあとに続く言葉を強調した使い方です。例文1では相手への詰問。例文2では自己主張の手段として使用しています。
例文1,2は先述の”冷やかし”や”皮肉”としても使用できますが、トゲのある言葉になるのでリスクのある使用方法です。逆に例文3のように相手を称えたい、立てるときにも「もとい」が使えます。
基本的な使い方以外での「もとい」は毒のある表現が多く、日常会話の冗談や親密な相手以外への使用は極力控えるべきです。
「もとい」の類語
正しく使えば前言を打ち消せる便利な言葉の「もとい」。その類語も日常会話からビジネスシーンまで幅広く浸透しており、会話や説明を円滑に進めるのに有効な表現となります。「もとい」の類語もチェックして会話スキルを高めましょう。
いや/いえ
前言を”打ち消す”というより”否定”する表現です。
漢字一文字で「否(いや)」と真っ向から否定する表現のため、「もとい」よりも打消しを強調する言葉になります。否定の言葉として自分にも相手にも使えますが、否定する=悪い印象をもつ人も少なくありません。
熟考に熟考を重ね、慎重に判断した結果の言葉なら重みもありますが、多用すると優柔不断なイメージを周りに与えます。ここぞというとき以外の使用は控えるのが無難です。
改め(て)
“言葉を改めて言い換える”という意味で使用する表現です。「もとい」をそのまま「改め(て)」に置き換えて使用できます。
“元に戻して直す”「もとい」と”前の言葉を新しく言い換える”「改め(て)」では表現が異なりますが、”言葉を変える”という意味では同じです。”訂正する”という意味合いでは「もとい」のほうが度合いが強くなります。
「もとい」の英語表現
ビジネスの場において「もとい」を英語で表現しなければならないことも考えられます。そんな、不測の事態に備えて、会話やメールでの使い方を確認しておきましょう。
or even better
or to put it better
as originally
but
と表現できます。
「もとい」を使用した例文はこちらです。
⇒もとい明後日から出張でしばらく留守にします。
・As an estimate, how about 10, or even better, 15?
⇒見積もりとしては10・・・もとい15でいかがでしょうか?
・The senior is a pushy, or to put it better an active person.
⇒先輩は強引、もとい積極的な人です。
・This time, the success is not thanks to me, but to all off you.
⇒今回成功したのは私、もとい皆さまのおかげです。
「もとい」の意味や使い方をマスターしよう!
ビジネスシーンでは判断や言葉の選択を迫られるシチュエーションがたびたび訪れます。思い直しや失言に気づいたら、慌てず即座に修正することが先決です。「もとい」の意味や使い方をしっかりマスターし、スマートに物事を進めていきましょう!