「ご厚情」は親切にしてもらった相手に使う言葉
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「ご厚情」とは、情けや思いやりなど、親切にしてもらったことに対して使われる表現です。ビジネスシーンでは手紙やメールなどの挨拶文として広く使われています。
ビジネスシーンにおいて相手に感謝を伝えることは、円滑な人間関係を築くためにも非常に重要です。気持ちやシチュエーションに応じたフレーズを選択できるよう、「ご厚情」以外の類語も身につけておくと安心ですね。
・ご厚志
・ご配慮
「ご厚情」の読み方と意味
「ご厚情」は「ごこうじょう」と読みます。
「ご厚情」は「深い・厚い情け。思いやり。親切な心」という意味を持つ「厚情」という言葉に、接頭辞の「ご」を付けた尊敬表現です。
「ご厚情」とは、目上の人が親切にしてくれたことに対する尊敬と感謝の気持ちをを込めた言葉となります。
「ご厚情」の使い方
「ご厚情」は基本的にフォーマルな場面で使うフレーズなので、ビジネスシーンでは自分よりも目上のである取引先やお客様に対して使う言葉です。
社内や上司・先輩に対して使うのは大げさな印象になるため、適切ではないとされています。
結婚式やお葬式などの式典で使われることが多く、ビジネスシーンではメールや文書のほか歓迎会・送別会・取引先や顧客への年賀状・暑中お見舞いなどでも使われます。
「ご厚情」の例文
ここからは「ご厚情」を使った例文を詳しく解説していきます。
「ご厚情」は硬くかしこまった表現なので、使いどころを間違ってしまうと改まりすぎて失礼に当たる場合もあります。どんな場面や相手に使うかを覚えて、しっかり使いこなせるようにしましょう。
「ご厚情を賜り(御厚情を賜り)」を使った例文
ビジネスシーンで「ご厚情を賜り(御厚情を賜り)」というフレーズは挨拶文の決まり文句として使われています。
⇒「格別のご厚情を賜り(御厚情を賜り)厚く御礼申し上げます」
「ご厚情」の後に続く言葉で最も多いのが「もらう」の謙譲語で、「目上の人から頂く」という意味の「賜る(たまわる)」です。「ご厚情を賜り」とは、相手から厚い情けや思いやりを受けるという意味になります。
冒頭の「格別の」は「特別な」「非常に」いう意味合いの丁寧な表現。ビジネスメール・文書では定型化され広く使われています。
また、「ご厚情」接頭辞の「ご」は漢字の「御」にしてもOKです。使い分けに関して特に決まりはありませんが、正式なビジネス文書の場合は「御」を使い、堅苦しいと感じた場合は「ご」を使うなど、変化をつけるとよいでしょう。
一見、非常に堅苦しい文章に見えますが、要は「いつもありがとうございます」という意味を丁寧に表現しています。
「ご厚情いただき」を使った例文
「ご厚情を賜り」は「ご厚情いただき」と言い換えることができます。「いただき(頂く)」は「してもらう」の謙譲語で「賜り」と同様に、目上の人からの厚意を受けるときに使う敬語です。
⇒「ご厚情いただきありがとうございました」
何か贈り物をもらった際、お礼状や転勤・転職などで送るお別れの挨拶メールなどで、「ご親切にしていただきありがとうございました」という意味合いで使われます。
「ご厚情を賜り」と比べて意味に大きな差はありませんが、「賜る」のほうがよりかしこまった印象となり「ご厚情いただき」は堅苦しすぎない柔らかな印象になります。
「ご厚情の賜物」を使った例文
「賜物(たまもの)」とは、「他者から受けた恩恵」「よいことや試練などの結果により与えられた成果」という意味の言葉です。
「ご厚情の賜物」は「皆様のご厚情の賜物」というフレーズで定型化されているため、個人よりも法人から法人・多くのお客様に向けて感謝を述べる場面で使われる傾向があります。
⇒「皆様のご厚情の賜物でございます」「皆様のご厚情の賜物と深く感謝申し上げます」
⇒「弊社は今年で創立○周年を迎えることができました。これも皆様のご厚情の賜物でございます。心より感謝いたします。」
意味合いとしては「多くの人の思いやり・協力により、よい結果となりました。ありがとうございます」というもの。例文のようにプロジェクト完了のお礼や創立記念の挨拶など、節目となるタイミングで多く使われます。
「ご厚情に深謝」を使った例文
「深謝」は、文字通り「深く感謝すること」「深く謝罪すること」という全く違う2つの意味を持つ言葉です。
感謝の気持ちを表す場合は、「感謝いたします」「お礼申し上げます」よりも丁寧な表現として使われます。
「ご厚情に深謝」というフレーズは「相手の親切心に深く感謝する」という意味になります。
基本的には年賀状や喪中はがきなどの定型的な書き言葉ですが、式典での挨拶やスピーチなどでも使われます。
⇒「旧年中に賜りましたご厚情に深謝いたしますとともに明年も変わらぬご交誼のほどお願い申し上げます」
「深謝」が大げさに感じる場合は、「ご厚情に感謝」と言い換えてもよいでしょう。
「ご厚情痛み入ります」を使った例文
「痛み入る」という言葉には「相手の親切に対して恐縮する」「相手の図々しい様子にあきれる」という意味があります。ビジネスシーンでは基本的に前者の意味で使われます。
「痛み入ります」は「相手からの親切心に感謝しつつ、自分にはもったいないと感じ胸が痛くなるほど申し訳ない気持ちです」という意味合いになります。「恐れ入ります」よりも低姿勢なニュアンスで使われることが多いです。
「痛い」という文字が入っているので一見ネガティブな言葉に聞こえますが、あくまで謝罪ではなく感謝の気持ちを表す言葉です。
⇒「この度は心温まる励ましのお言葉を数多くいただき、ご厚情痛み入ります」
上述の通り「胸が痛くなるほどの感謝」という意味なので、内容によっては大げさ・皮肉ととらえられる可能性もあります。
シーンや送る相手との関係性に応じて、失礼にあたらない・堅苦しすぎないよう、最適なフレーズを選んで使い分けるようにしましょう。
「ご厚情」と「ご厚誼」「ご高配」の違い・使い分けを解説
これまで「ご厚情」を使った例文をご紹介してきましたが、ここからは似た言葉と使い分けの方法を詳しくご紹介していきます。
ご厚情とご厚誼の使い分け
「ご厚情」に似た言葉で「ご厚誼(ごこうぎ)」という「厚い・親しいお付き合い」という意味の言葉があります。「ご厚情」同様、上司やお世話になっているクライアントやお客様など目上の方に対して、感謝を伝える時に使う言葉です。
「平素は格別なご厚誼を賜り厚くお礼申し上げます」
「平素」は「いつも」、「格別」は「この上ない」といった意味の言葉です。例文は堅苦しい文章ですが、要は「いつもお世話になりありがとうございます」という意味の言葉を、丁寧な表現に変えています。
使い方は似ていますが、それぞれ「ご厚情=親切・思いやり」「ご厚誼=親しいお付き合い」という意味を持っているため、微妙にニュアンスが違います。
使い分けの一つとして書き出しの挨拶で「ご高配」を使って感謝を示し、結びの言葉として「ご厚誼」を使う方法などがあります。
一つのメールや文書の中で何度も同じフレーズが出てくると、意味合いとして間違ってはいなくても文章全体がしつこい印象になってしまいます。
下記の例文のように、違う表現に置き換えると文書全体に変化を付けることができます。
ご厚情とご高配の使い分け
「ご厚情」と似た言葉に「ご高配」という言葉があります。「ご高配」とは相手の配慮や気遣いなどに対して、敬う・感謝するという意味を持つ「高配」の敬語です。ビジネスシーンでは挨拶文や締めの文章として多く使われています。
「ご厚情」同様にあまり話し言葉では使われず、例文のように年賀状やお礼状での定型文としてよく使われます。
⇒「平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます」
「ご厚情」と「ご高配」は意味も使い方も非常によく似ていますが、「ご厚情」は親切心や思いやりに対する感謝の比重が大きく、「ご高配」は心配りとそれに伴う行為・結果に対して感謝を示すニュアンスが強いという違いがあります。
「ご厚情」「ご厚誼」「ご高配」はどれを使っても丁寧な言葉です。意味の違いを踏まえながら、文章内に同じフレーズが続かないように使い分けるとよいでしょう。
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「ご厚情」の類語
これまでご説明してきた「ご厚情」「ご厚誼」「ご高配」以外にも、相手の親切に対する感謝の気持ちを伝える表現は数多くあります。
「ご厚情」と同じような意味を持つ言い換え表現をいくつか覚えておくと、その時の気持ちやシーンに合わせて使い分けることができますよ。
ご厚意
「ご厚意(ごこうい)」とは「思いやりのある心」「厚情」という意味を持つ「厚意」の敬語表現です。相手を敬う言葉なので、目上の人や取引先に対しても使用できます。ビジネスメールや手紙の挨拶文をはじめ、話し言葉としても幅広く使用可能です。
⇒「平素は格別のご厚意を賜り誠に感謝申し上げます」
使い方は「ご厚情」とほとんど変わりませんが、フォーマルな場面で使う「ご厚情」よりもややカジュアルなニュアンスで使われます。「ご厚情」だとかしこまりすぎる場合などは、「ご厚意」を使うとよいでしょう。
ご厚志
「ご厚志(こうし)」とは文字通り「厚い志(こころざし)・思いやりの気持ち」という意味の「厚志」に接頭語の「ご」をつけた敬語表現です。
一般的にビジネスシーンで使う「ご厚志」は「心遣いを形で示したもの=お金を包むこと」を指します。
具体的には送別会や歓迎会などの主賓もしくは上司や役員が、参加費の代わりに幹事に渡すお金のことを指します。
本来なら、主賓の分の会費や参加費は表向きには回収しません。ビジネスシーンでは上司が多くお金を出してくれたことで、全体の会費が4,000円から3,500円におさまったなんてことはよくありますよね。この場合、以下のような例文が使えます。
⇒「本日の送別会は○○部長よりご厚志を頂戴いたしましたので、会費は1人4,000円から3,500円になりました」
例文のようにご厚志を紹介するタイミングは、乾杯の前の挨拶時がよいでしょう。さらに受け取った金額には触れないことがマナーとされています。
「ご厚情」と比べて使う場面が限定されていますが、ビジネスパーソンとしてはぜひ覚えておきたい言葉です。
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ご配慮
「ご配慮」とは心を配るという意味を持つ「配慮」の敬語表現で、相手の心遣いに対する感謝の言葉として使います。
「ご厚情」は目上の人に対して使う言葉ですが「ご配慮」は目上の人だけでなく、同僚など同等の立場の人に対しても使用可能です。会話はもちろん、ビジネスメール・文書でも使えるのでぜひ覚えておきましょう。
上司「本日の訪問先の地図を印刷しておいたよ」
自分「ご配慮いただきありがとうございます」
ただお礼をいうよりも「ご配慮いただき」と付け足すことで、相手の心配りや行為に対する感謝の気持ちがより伝わりやすくなります。
「ご厚情」の英語表現
kindness, hospitality
と表現できます。
今すぐ使える例文はこちら!
⇒ご厚情いただきありがとうございました。
⇒弊社は今年で創立○周年を迎えることができました。これも皆様のご厚情の賜物でございます。心より感謝いたします。
⇒旧年中に賜りましたご厚情に深謝いたしますとともに明年も変わらぬご交誼のほどお願い申し上げます。
⇒この度は心温まる励ましのお言葉を数多くいただき、ご厚情痛み入ります。
「ご厚情」を正しく使って感謝の気持ちを伝えよう!
目上の人の親切や思いやりを敬う「ご厚情」というフレーズ。使用する場面は、式典の挨拶やビジネスメール・文書の挨拶文など、比較的限定されているので一度定型文として覚えてしまえば使い方は簡単です。
また、「ご厚情」はフォーマルな表現なので、同様の意味を持つ類語や感謝の表現を覚えておくと、相手や状況に合わせて感謝の気持ちを伝えることができます。
「ご厚情」は意味も使い方もよく似た言葉が多いので、迷ってしまう場合もあるかと思います。しかし、なぜこれほど類語があるかというと、言葉の重複をさけるためでもあります。文章内に何度も同じ表現を使うことがないよう、適宜使い分けてみてください。
ぜひ「ご厚情」を正しく使いこなして、尊敬と感謝の気持ちを上手に伝えましょう!