「便宜」とは「都合がいい」という意味
便宜を図った見返りに賄賂を受け取った
「便宜を図る」…人によってはあまりよろしくない響きに聞こえるかもしれません。特に主語が「政治家」や「上層部」であればなおさらです。
とはいえ、本来、言葉の意味としての「便宜」にはネガティブなニュアンスは含まれていません。
「便宜(べんぎ)」とは「都合がいい」という意味。「便宜を図る」であれば「都合がいいようにする」という意味になります。
「便宜」のその他の意味・読み方等
「便宜」は物や目的、人などに「都合がいい」という意味の他に、「音信」「便り」という意味もあります。とはいえ、この意味で使われることは現在ではほとんどありません。
「便宜」の読み方は「べんぎ」ですが、「びんぎ」という読み方も。こちらも一般的な読み方ではないので覚える必要はないでしょう。
中国語では
ちなみに、中国語にも「便宜(piányí)」はあります。日本語と同様、「都合がいい」という意味もありますが、「値段が安い」「目先の利益」「大目に見る」「得をさせる」という意味も。
「便宜」の使い方・例文
・利用者の便宜を図るため新しく窓口を設置する ・便宜上、同じカテゴリに入れておく ・正式名称が決まるまで便宜的にこのように呼んでいた ・便宜を図る代わりに自分に好意的な記事を書くよう求めた
「利用者の便宜を図る」は「利用者に便利なようにする」という意味合い。
「便宜」は「便宜を図る」の他、「便宜上」「便宜的」といった使い方もされます。
「便宜上」「便宜的」は「都合よくするため」「便利にするため」という意味。また、「本質的には違うがその場しのぎでそのように処置する」というニュアンスも含まれています。
「便宜」を含む四字熟語
便宜供与(べんぎきょうよ)
「便宜」を含む四字熟語に「便宜供与」という言葉があります。「他人のために特別な計らいをする」という意味。物や情報、利益などを提供して相手に有利になるように配慮することを指します。
「便宜」の注意点
「利用者の便宜を図る」「顧客の便宜のために」であれば、別段特別な意味合いは感じられません。しかし、「政治家に便宜を図り…」とすると、何か裏でいけないことをしているかのようなニュアンスが感じられます。
政治家が地方や海外で有意義に時間を使えるように送迎や宿舎の手配をする
これも「政治家に便宜を図る」ではありますが、何も問題はありません。
賄賂をもらった見返りにその企業に有利な公共事業を進める
一転、こちらは悪い意味で「便宜」を図ったケースです。
言葉としての「便宜」にはネガティブなニュアンスはありません。しかし、このような使い方をされることがあるため、ネガティブなイメージを持たれてしまうことがあります。
人に使う際は注意
「便宜上、資料を同じファイルに入れておいた」であれば問題はありませんが、「便宜を図っていただきありがとうございます」と人に対して使ってしまうとどうでしょうか。
相手に嫌な印象を抱かせてしまったり、聞いている第三者にあらぬ誤解をさせてしまったりする可能性があります。
このようなリスクを避けるため、「ご配慮いただきありがとうございます」といったように別の表現で言い表した方が無難でしょう。
「便宜」の類語
・好都合(こうつごう) ・忖度(そんたく) ・特別扱い(とくべつあつかい) ・融通(ゆうづう) ・配慮(はいりょ)
これらが「便宜」の類語表現です。
例えば、人に「便宜を図る」は「特別扱いする」「融通する」「配慮する」と言い換えることができます。
「忖度」とは
また、少し前にニュースでよく見聞きした表現に「忖度」があります。ニュースでは「便宜」と同じような(悪い意味で)使い方をされることが多かったですが、本来の意味は「便宜」とは異なります。
「忖度」の本来の意味は「他人の心情を推し量る」という意味。「心情を推し量って便宜を図る」が「忖度」の一語で表現されて広まりました。
メディアで取り上げられるまではそれほど一般的な表現ではなかったため、なおさら勘違いして認識している人が多いようです。これを機に正しい意味を覚えておきましょう。
「便宜」を英語で
for your convenience ⇒便宜を図るため
「for your convenience」で「便宜を図る」を表現しています。日本語にあるようなネガティブな含みはなく、単に「便利にするため」といったニュアンス。
公共の場にある注意書きや看板にもよく使われています。
「便宜」は便利だけど
「便宜」は「便宜上」「便宜的」などとビジネスシーンでも日常の一コマでもよく使う表現です。一方でネガティブな印象を持たれることもあるので、使い方には注意しましょう。