「拙速」とは「下手&早い」
・拙速な判断だったと非難される ・拙速に事を運んだおかげでうまくいった
どちらも「拙速(せっそく)」を使っていますが、前者は悪い意味、後者はいい意味で使われています。
前者の意味だと「早計の判断でミスをした」という意味に。一方、後者だと「スピーディーに物事を進めて成功した」という意味に読み取れます。
「拙速」の意味は「出来は良くないけど早い」。仕事や物事を行う様が「下手&早い」ことを表しています。
「拙速」の意味をチェック
「拙速」の言葉の意味にはいいも悪いもありません。よくない意味で使われることが多いように思うかもしれませんが、ビジネスシーンでは奨励していることも。
言葉の由来
よく「拙速」は「孫子の兵法」ですすめられていると言う人がいますがそれはガセ。「拙速」という言葉は出てくるだけで詳しく語られてはいません。
南宋時代に書かれた『文章軌範』に「巧遅は拙速に如かず」という一節があります。これは「遅くてうまいよりも下手でも早い方がいい」という意味ですが、これが「孫子の兵法」由来だと誤解されて広まっているようです。
『文章軌範』は文章の書き方についての書物であり、一文は「試験時間は有限だから早く書く方がいい」といった意味合い。
由来はともかく、「拙速」がビジネスシーンで推奨されているのは事実です。
ビジネスシーンで「拙速」がもてはやされる理由
「拙速」は「多少劣っていても早さを武器に勝つことができる」という意味でビジネスシーンでもてはやされています。
・A君の作成する資料はそこそこの出来。でも期限よりも早めに提出する ・B君の作成する資料は完璧。でも期限を守れない
ビジネスシーンにおいてどちらが評価されるかは明白ですよね。職人や伝統芸の担い手でないかぎりは、圧倒的にA君が重宝されます。というかB君はこれが続くとクビにもなりかねませんよね。
もちろん、早ければいいというわけではなく、質もそれなりでなければなりませんが、100点を遅れて出すよりも、70点を早めに出す方がビジネス上有利なことが多いです。
「拙速」を評価する言い回しには以下のようなものがあります。
・拙速は巧遅(こうち)に勝る ・巧遅は拙速に如かず ・巧遅拙速(「巧遅は拙速に如かず」の略) ・兵は拙速を尊ぶ ・拙速主義
「巧遅」は「拙速」の対義語で「うまいけど遅い」。先ほどのB君みたいな感じです。
「拙速」の使い方・例文
「拙速」の具体的な使い方を例文を通して確認していきましょう。
・一つの事例に重きを置いて判断するのは拙速に過ぎる ・拙速な導入は避けなければならない ・仕事は早いけど雑なA君が出世したことは、まさに「巧遅拙速」と言える ・部長は拙速主義だから何事も早めを心がけるように
このようにいい意味でも悪い意味でも使うのが「拙速」です。
「拙速に過ぎる」は「拙速すぎる」と言い換えてもかまいません。
「拙速」の類語
「拙速」の類語にはどのようなものがあるでしょうか。
・時期尚早(じきしょうそう) ・まだ機が熟していない
これらは悪い意味の「拙速」の類語です。
「時期尚早」の意味とは?嵐の曲?詳しい意味から使い方、類語、英語表現まで解説!
いい意味ではちょっと適当なものがありませんが、ことわざの「思い立ったが吉日」「鉄は熱いうちに打て」は早めに行動することの大切さを解いている言葉です。
「拙速」の英語表現
「拙速」を英語ではどのように表現できるのでしょうか。
My motto is“rough and ready” ⇒座右の銘は「拙速(巧遅拙速)」です。
「rough and ready」で「拙速(巧遅拙速)」を表現しています。いい意味で使っていますが、悪い意味で使うこともできます。
ビジネスでは「拙速」を重視
「うまくて早い」が理想ではあるものの、なかなかそうはいかないですよね。まずは「拙速」を目指して徐々に質も高めていきましょう。