本来の意味とは違う使い方もする忖度
新人
上司
新人
忖度は、2017年の「新語・流行語大賞」の大賞に選ばれた言葉です。政治関係のネガティブな話題で使われて注目されるようになったワードなので、忖度=悪いものというイメージを持つ人は珍しくないですよね。
しかし、忖度のもともとの意味は悪いものではありません。本来の意味や使い方を学び、正しい忖度を身につけましょう!
忖度の本来の意味は「他人の心を推しはかること」
忖度の読み方は「そんたく」。「忖」と「度」のどちらの漢字にも「はかる」という意味があり、忖度はもともと次のような意味の言葉です。
忖度の歴史は古く、中国の「詩経」という古典で用いられていた言葉です。日本でも、平安時代中期の「菅家後集」などに登場しています。
時代が流れて1990年代の日本でも、脳死や臓器移植がらみの話の中、患者の意志を推察するというニュアンスで忖度がよく使用されていました。
このあたりまでの忖度には、他人の心中を推測するというニュアンスしかありません。別に偉い人限定の言葉でもなく、親や友人など誰にでも使えるのが本来の忖度です。
忖度は政治問題がらみで使われて異なる意味が定着
2000年くらいから、忖度を「偉い人の気持ちを推しはかる」という意味で使うケースが増えてきます。
そして、2017年。政治問題関連の話題で、忖度が「偉い人の心中を推しはかり、その意向に配慮した行動をとる」という意味で頻繁に使われるようになりました。
本来の意味とは明らかに違うニュアンスですが、報道で頻繁に登場し、一気にこの意味の忖度が日本語として定着します。
忖度饅頭や忖度弁当などのパロディ商品も販売されましたよね。それだけ、この意味での忖度が大衆に浸透したということなのでしょう。
忖度の使い方・例文
「偉い人の心中を推しはかり、それに配慮した行動をとる」という意味の忖度は、政治問題がらみで日本語に浸透した言葉です。よくない印象を相手に与えてしまう恐れがあるため、この意味の忖度をビジネス会話で使うのはおすすめできません。
この記事では、ビジネスで用いても問題がない、本来の「他人の心をおしはかること」という意味での忖度の使用法を紹介します。
上司
新人
この例文での「忖度する」は「ほかの人の気持ちを推しはかる」という意味です。
先輩
上司
先輩
上司
「忖度なし」の意味は「相手の心中を推しはからない」です。
覚えておきたい忖度の類語
忖度にはマイナスのイメージが強くついてしまっているので、うかつに使うと相手に誤解されてしまう恐れがあります。
危ないなという感じがしたらほかの言葉に言い換えられるように、類語も覚えておきましょう!
思いやる:他人の心情などに心を配ること
推察:他人の気持ちや事情を思いやること
斟酌(しんしゃく):相手の気持ちや事情をくみとること
顧慮(こりょ):特定の事柄をしっかり考えに入れて心遣いすること
忖度と完全に同じニュアンスというわけではないワードもありますが、語彙を増やすと会話を展開しやすくなりますよ。
忖度を英語でいうと?
忖度は英訳されるとき、次のような単語が使われます。
guess:推測する
surmise:推測する
「他人の気持ちや考えなどを推しはかること」という意味の英訳なら、これらの単語でよさそうですね。
でも「偉い人の心中を推しはかり、それに配慮した行動をとる」という意味の忖度を表現するには不十分な気もします。次のように表現すると近いニュアンスになりますよ。
read between the lines:言外の意味を読み取る
reading what someone is implying:誰かが暗示することを読み取る
外国人は「偉い人の心中を推し量り、それに配慮した行動をとる」という意味の忖度を理解するのが難しいようです。
特に、契約が重視される文化の欧米人には、具体的な命令やはっきりした見返りの提示がないのに便宜をはかるこの忖度はありえないことなのでしょうね。
忖度の定義は本来悪いものではない
忖度の本来の意味は「他人の気持ちや考えなどを推しはかること」という意味。ただ単純にほかの人の心中を推察するだけの言葉なので、もともとの定義は悪いものではありません。
しかし、ここ数年政治問題がらみで忖度が使われる機会が増えたため、マイナスのイメージがついてしまいました。
忖度をうかつに用いると誤解されてしまう恐れがあります。使用しても大丈夫な状況か、しっかり見極めてから使うようにしましょう。