おもむろにとは”ゆっくりしているさま”を表す言葉
「おもむろに」とは、動作がゆっくりしているさまを表現した言葉です。例えば「おもむろに懐から取り出す」だと、ゆっくりと緩慢な動作で懐から取り出していることを表します。
この「おもむろに」は動作を表す言葉としてたびたび使われていますが、間違った表現方法として使われることが多い言葉です。本来は「ゆっくり」を表現する言葉として使われるので、意味を知って正しく使えるようにしましょう。
「おもむろに」の本来の意味を知るには、類語を見るのが一番です。類語を確認することで正しい「おもむろに」の使い方が理解できるでしょう。
・緩慢に
・ゆっくり
・悠然と
・のろのろと
・もたもたと
おもむろにの意味や漢字
動作が遅いさまを表現する「おもむろに」は日常会話でも使われている言葉ですが、正しい使い方や漢字表現まで理解している人は少ないと言います。ここでは「おもむろに」の正しい意味と漢字表現をチェックしていきます。
おもむろにの正しい漢字
「おもむろに」は漢字で「徐に」と表記します。「徐」という漢字は「ぎょうにんべん」に「余」で成り立った会意兼形声文字です。「ぎょうにんべん」は「十字路の左半分」、「余」は「先の鋭い除草具」を表した象形文字です。
「先の鋭い除草具」は「のびやかに自由に伸びる」を意味し、2つを合わせて「伸びやかな心でゆっくり行く」という意味から「徐」という漢字が生まれました。類語の「徐々に」は2回繰り返すことで「ゆっくりな動きを強調」していますね。
ちなみに会意兼形声文字とは、2つ以上の漢字や意味で作られた「会意文字」と、意味を表す漢字と読みを表す言葉で作られた「形声文字」の2つの意味を持つ漢字のことをいいます。
誤用している人が多い!おもむろにの正しい使い方を解説
ゆっくりしたさまを表現する「おもむろに」は動作表現として「突然」「急に」逆の意味で誤用している人が多い言葉です。どのように「おもむろに」が誤用されているのかを含め正しい使い方を確認していきましょう。
おもむろにを使った例文
なぜ「おもむろに」の誤用が生まれたのかは諸説ありますが、正しい使い方を覚えることで誤った認識を正すことに繋がります。
「おもむろに取り出す」
小説や漫画などの文章としてもよく使われる表現方法です。本来は「ポケットからゆっくりと取り出した」という意味なのですが、「おもむろに」を「突然」の意味として勘違いして考えている人も多く見受けられます。
文章表現だと場面を想像する必要があり、音や景色が入ってこない文字表現だからこその誤用が広まったとのだと予想されます。
「おもむろに立ち上がる」
使われることの多い「おもむろに立ち上がる」は「ゆっくりと立ち上がる」という意味です。この表現を「急に」「突然」として誤用している人も多いです。例文のように形容詞を用いれば「いやいやゆっくりと」立ち上がったように表現することができます。
誤用や誤解を招きそうな表現には、何か言葉を補足すれば相手に正しい意味が伝わります。
「おもむろに飲む」
こちらも誤用が見受けられる表現方法ですが、本来は「ゆっくりと飲んでいる」様子を表しています。グイっと一気に飲み干すイメージを持つ人も多いですが、味わうようにゆっくりと飲んでいる姿を表現する際にも使用されます。
テレビ番組などでも間違った使い方をしている場面が見られるので、注意深くチェックしてみましょう。
「おもむろに横になる」
「直ぐに寝たさま」を表現するときに「おもむろに」が誤用されるケースも見受けられます。この例文だと「ゆっくりと横になった」ことを表現しています。
「眠たそう」な人が横になる姿を想像すると「のそのそと」「ゆっくりと」の表現の方がしっくりきます。本来の意味を考えれば素早く横になる姿は不自然ですよね。
「おもむろに目を開いた」
いかにも眠そうな目をゆっくりと開く様を表現した例文です。「おもむろに」は「素早い動作」の表現として誤用されることが多く、「おもむろに目を開いた」を「カッと」や「パッと」など、「急に目を見開く」様として捉える人も多いです。
この例文のように「目をこすりながら」をつけると「眠そうな目をゆっくり開いた」とのイメージがしやすくなりますよね。
おもむろに(徐に)の類語
何度も出てきた「ゆっくり」も「おもむろに」の類語です。「ゆっくり」以外にも動作が緩やかな表現は他にもあります。
・緩慢に
・ゆっくり
・悠然と
・のろのろと
・もたもたと
「徐々に」は「徐に(おもむろ)」が2つ続くことで、より緩やかなさまを表現しています。このように遅い動作を表現する言葉は日常会話でも多種多様に使われています。
「おもむろに」により類語を使用する機会も多いため、覚えておくと役立ちます。
「おもむろに」の対義語
「おもむろに」の誤用として最も多いのが「突然」や「急に」の意味としての使用方法です。言わば対義語であるのに誤用してしまっているケースです。「おもむろに」の対義語を今一度チェックしておきましょう。
・瞬時に
・即座に
・速やかに
・やにわに
・慌てて
緩慢な動作の「おもむろに」に対して、対義語はスピーディーな動作を表しています。「おもむろに」の真逆の意味を持つ対義語をそのまま差し替えて表現すると、誤用してしまう可能性があるため注意しましょう。
「おもむろに」を英語で表現すると・・・?
・slowly
・gradually
で表現できます。
今すぐ使える例文を見ていきましょう。
⇒ポケットからおもむろに取り出した。
・I gradually got up to their expectations without any help.
⇒私は仕方なくおもむろに立ち上がった。
・I gradually drank up all the liquor poured for me.
⇒注がれた酒をおもむろに飲み干した。
・Looking sleepy he lay down for a bit.
⇒彼は眠たそうにおもむろに横になった。
・I rubbed my eyes and opened them slowly.
⇒目をこすりながらおもむろに目を開いた。
誤用が多い「おもむろに」を正しく使おう!
緩慢な動作を表現した言葉である「おもむろに」は、本来とは真逆の意味で使われることが多い言葉です。本ページで「おもむろに」の意味を理解し、誤用のないよう、正しく使っていきましょう!