OEMとは「ブランド名で製造すること」
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確かに、アルファベットの略語は知識がないと意味がまったくわかりません。漢字一文字から意味を推察できる日本の言葉とは違う不便さもあります。
しかし、OEMは重要なビジネス用語なので、しっかり勉強しておきましょう。
ちなみに「おえもり」は、おえかきチャットゲーム「あつまれ!おえかきの森」の略称です。
OEMはどんな英語の略?意味は?
アルファベット3文字のOEMは、それだけでは意味をイメージしにくいですよね。そんなときには、もとの英語とセットにして覚えると忘れにくくなりますよ。
ビジネスのOEMは、次の2つの英語を略したものです。それぞれ次のような意味をもっています。
※他社ブランドの製品を代わりに製造する会社
※他社ブランドの製品を代わりに製造すること
英文で「manufacturer」ときたら「製造する会社」、「manufacturing」ときたら「製造すること」です。単にOEMといわれた場合、どちらの意味になるのかは文脈から読み取らなければなりません。
身近なOEM
コンビニなどで製品をよくみかける明治・森永・ロッテ・江崎グリコ・ハーゲンダッツは、株式会社 やまひろという別企業にアイスクリームの製造を委託しています。
実際に目にする製品には大手企業の名前が記されますが、縁の下の力持ちのような存在となっている企業もあるのです。
OEM生産って?
OEM生産は、製品製造を委託してきた企業のブランド名が付けられる製品を生産するという意味。
OEMだけで「相手先商標製品製造」という意味になるので、OEM生産という言い方はちょっと変です。しかし、日本のビジネスではよく使う用語なので、日本ならではの言い方と解釈して慣れておきましょう。
OEM生産には、次の3パターンがあります。
パターン①:高技術レベルの企業が低レベルの企業に依頼
高い技術レベルをもつ企業が、自社で開発した製品の製造を、自社よりも技術レベルが低い企業に依頼します。
高レベルの企業が、低レベルの企業を直接技術指導しながら生産を進める方法です。垂直的分業方式という場合も。
パターン②:技術レベルが自社と同程度の企業に依頼
技術レベルが自社と同程度の企業に、自社ブランドの製品製造を依頼します。水平的分業方式と呼ばれる場合も。
このパターンでは、それぞれの企業が自社の製造能力の余力分を使って、お互いにOEM生産の依頼を受託し合うケースもあります。
OEMを活用すれば、それぞれの企業が得意な製品に絞って製造できるので効率を上げることができます。
パターン③:受託企業側から委託企業に商品企画を売り込む
OEM生産を受託する企業が、自社で開発した製品案を「こんな製品を作れます」「御社のブランド製品として販売してみませんか?」と企業に売り込むパターンです。
売り込まれた製品案をそのまま使うのではなく、委託企業が一部仕様変更してOEM生産する場合もあります。製品案をそのまま採用すると、自社のほかにも売り込まれた企業があった場合、製品が丸被りしてしまう恐れも。仕様変更はその対策も兼ねます。
OEMのメリット・デメリットは?
近年では、さまざまな企業がOEMを使っています。OEMを行う企業は、どんなメリットがあると判断してOEMを決めたのでしょうか?
いいことばかりとは限りませんよね。ちゃんとデメリットも知っておかないと、あとで「こんなはずでは!」と後悔する羽目になるかも。
委託企業のメリット・デメリット
OEMを依頼する企業には、次のようなメリット・デメリットがあります。
・自社の製造能力が不足しているときでも、販売したい製品を揃えられる
・小ロットでも依頼できるため、在庫リスクを減らせる
・新商品開発や販売に集中できる
・自社ブランド製品が増えて知名度が上がる
・自社の技術力維持が難しくなる
・自社生産していれば得られた収益がなくなる
OEMは、少ない予算で自社ブランドの製品を得られるなど魅力的な点があります。しかし、OEMに頼りきりになってしまうと、自社の技術力低下やライバル出現を招いてしまう恐れも。
受託企業のメリット・デメリット
OEMを受託する企業のメリット・デメリットも確認しましょう。
・技術力が上がる
・有名企業のブランド力で製品がよく売れる
・仕事量を確保できる
・委託企業側が、取引の主導権を握るケースが多く、利益が少なくなりやすい
・自社のノウハウを委託企業にマネされて類似商品を作られてしまう可能性がある
受託企業は、OEMを受けることで通常の仕事が少ない時期でも一定の仕事量を確保できます。しかし、作った製品が市場に出回るときには他社ブランド商品になるため、自社の知名度は上がりません。
実例あり!アパレル・化粧品業界のOEM
アパレル・化粧品業界では、OEMがすっかり定着していて、さまざまな企業が活用しています。どのようなOEMがあるかみてみましょう。
アパレルのOEM企業とは
アパレル業界でのOEM企業は、生産設備をもつ工場と、デザインや企画を考えるアパレルメーカーを仲介する企業を指す場合が大半です。自社工場をもっていないOEM企業も珍しくありません。
たとえば、ブリングハピネスは、台湾にある靴下工場をパートナーにしている企業です。小ロットのOEM依頼も受けてくれます[efn_note]参考:日本クオリティを中国と台湾に|ブリングハピネス[/efn_note]。
OEMの委託企業・受託企業の出会いの場になるイベントも開催されています[efn_note]参考:[国際] ファッション OEM EXPO|ファッションワールド東京[/efn_note]。
化粧品のOEM企業とは
ネット販売も含む市場には、全体の商品数が把握できないほどの化粧品が出回っていますよね。この品ぞろえを支えているのがOEMです。
化粧品のOEMには、設備をもたなくてもオリジナル化粧品を製造できるメリットがあります。しかし、化粧品は、肌につけるものなので品質管理が重要。パートナーは、慎重に選ばなければなりません。
ラ・シンシア化粧品は、エステサロン品質のOEM化粧品を作ってくれます[efn_note]参考:嬉しい化粧品OEMはお任せください!|ラ・シンシア化粧品 OEM[/efn_note]。
セントラル・コーポレーションは、たった100個の注文でも引き受けてくれるOEM企業です[efn_note]参考:「わずか100個から」化粧品OEM製造!在庫バルクの小分けではなくゼロからのブレンド|セントラル・コーポレーション[/efn_note]。
業界によっては特有の意味で使われるOEMも!
OEMをここまでに紹介した「ブランド名で製造すること」というニュアンスではない意味で使っている業界もあります。
ほかの業界にはない特殊な使用法をするOEMも覚えておきましょう。
自動車業界におけるOEMの意味
自動車業界では、完成車メーカー(トヨタやホンダ、日産、三菱、スズキ、ダイハツ、マツダ、BMWなど)をOEMといいます。
これは、国際標準規格のISO 16949で、OEMは自動車製造者と定められているからです。
それに加えて、一般的な意味でのOEMもあり、ダイハツでは自社で販売している車種と共通する車体を他メーカーにOEM供給しています[efn_note]参考:受託・OEM事業|ダイハツ[/efn_note]。見た目と販売メーカーは違うのに、実は中身は同じ自動車だというのが、自動車業界でのOEMです。
パソコンにおけるOEMの意味
パソコン分野でのOEMも、ここまでとまったく意味が違うOEMです。IT用語のひとつとして頭に入れておきましょう。
OEMパーティション
OEMパーティションは、システムトラブルが起きたときに出荷時の設定に回復させるシステムが入れられている場所のこと。回復パーティションといわれる場合もあります。
OEM版
OEM版は、パソコンとセット販売されているWindowsです。
パソコンと抱き合わせにすることで、単独販売されているWindowsよりも安くなっています。その分、性能は単独で販売されているWindowsよりも劣るところがあるようです。
OEMと区別して覚えたい略語
OEMには、似たような意味だけれどもある点が決定的に異なる類語がいくつかあります。はっきりとした違いがあるので、言い換えには使えません。しっかり区別できるようになりましょう。
OEMとODMの違い
ODMは「Original Design Manufacturing」の略。委託企業がアイデアだけを投げかけて、その後の企画・開発・製造をすべて受託企業に依頼する形態です。
委託企業は「こんなアイデアを思いついたんだけど、製品化できる?」と受託企業に持ちかけます。受託企業が、うまく試作品までたどり着けたら、そのまま製品製造も受託企業に依頼。
OEMは、製品の開発・設計は委託企業が行い、製造を受託企業に委託します。設計や試作品作成あたりまでは、委託企業の役割になる点がODMとの違いです。
OEMとSPAの違い
SPAは「Specialty Store Retailer of Private Label Apparel」の略。製品の企画・製造・販売のすべてを自社で行う形態です。完成した製品は、自社のオリジナルブランド商品として販売されます。
「ブランド名の付く製品を製造する」という点は共通。しかし、OEMとは違い、製品の製造を他企業に委託することはありません。
SPAについて、くわしくは下記の記事で紹介しています。
SPAとは何の略語?アパレル・Web・契約における意味をわかりやすく解説
OEMの使い方・例文
OEMは、使用するときに注意しなければならない点があります。ビジネス会話でどのような使い方をするのか、例文でイメージしましょう。
先輩
上司
先輩
委託企業の先輩
委託企業の新人
受託企業の上司
受託企業の部下
一般的には、OEM製品を作る企業を「OEM元」。自社ブランド製品の製造を他社に依頼して、OEM製品を供給してもらう企業を「OEM先」と呼びます。
しかし、自社製品製造を他社に委託する企業をOEM元企業。他社から製品製造を受託する企業をOEM先という、まったく逆のパターンもあるので注意。
「OEM元」が、どちらの意味で使われているか、文脈からしっかり読み取ってください。
OEMは製造メーカーとのコラボ
OEMは、委託企業・受託企業の両方にメリットがある仕組みです。
自社にはない技術をもつ製造メーカーとコラボして、魅力的な商品を製造・販売できる可能性もあります。
自社ブランドの製品製造によりいい方法が何かを検討し「OEMがベストだ」となったら、ぜひ挑戦してみましょう。