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コンティンジェンシープラン(コンチプラン)の意味とは?事例・作成例・使い方も解説

コンティンジェンシープランとは『緊急時の対応計画』のこと

先輩

うちの会社もシステム化が進んでるけど、コンティンジェンシープランってちゃんとあるんですか?
災害時の従業員への対応については把握してるけど、業務中にシステム障害が生じたときの緊急対応は聞いてないかもしれないな。

上司

先輩

取引先のA社は、本社ビルで原因不明の停電が起きたときに、何の対応もできなくて大変だったらしいですよ。うちも早めに用意してたほうがいいんじゃないですか?

コンティンジェンシープランとは、不測の事態が起こった際、企業など、組織に対する被害を最小限にとどめるための計画を指します。

『緊急時の対応計画』と聞くと納得できる人もいるでしょう。社会で働くうえで、対応計画を立てるのは大切なことです。しかし、『コンティンジェンシープラン』と聞いてすぐに内容を理解できる知識も必要です。

これを機に、正しい意味をしっかり学んでいってください。

コンティンジェンシープランの意味をチェック

コンティンジェンシープランは『コンチプラン』と略語で使われる場合も多いです。

「こんなことが起こったら、このように対応しよう」といったコンチプランは、公的機関だけでなく、各企業でも準備しているところが多いです。

特に、経済活動に大きな影響を与える金融機関では、非常事態が起きてもできるだけ早く業務が再開できるようになっています。

どのようなコンティンジェンシープランがあるのかは後述するとして、ここではまず、言葉の意味を明確にしておきましょう。

ビジネスシーンにおけるコンティンジェンシープランとは

自然災害、事故による災害など、企業を襲う不測の事態はさまざまです。そして、企業によって緊急時の対応も違います。

それでは、ビジネスシーンではいったいどんなことが起こる可能性があり、どんなコンティンジェンシープランが必要なのでしょうか?

鉄道関係

人身事故、交通事故、線路内の障害、システム障害などが発生した場合は電車が止まってしまいます。

車内に乗客がいる状態で止まった場合には、乗客を安全に車外に出すだけでなく、振替輸送など、その後の動きを伝えなければいけません。

 

運休が長期間に及ぶ場合には、代わりの交通手段のアドバイスや代替バスなどの準備も必要です。

このような対応計画が鉄道関係会社のコンティンジェンシープランとなります。

一般企業

一般企業では、地震や台風などの自然災害が発生した場合に行う、『従業員を退社させる』『社外にいる従業員への連絡』が一番身近なものでしょう。

また、システム化が進んでいる現代においては、サーバー停止などの障害が起きた場合、ほとんどの作業ができません。その原因が停電なら電話も使えなくなるので、緊急連絡先を内線番号や短縮番号のみでチェックしている人は、どこに連絡すればいいのかもわかりません。

『パソコンが使えない場合はシステム部に連絡をする』『電力ダウンの場合は〇〇に連絡をする』『災害の場合は〇〇に連絡をする』など、緊急時の対応プランが一般企業においてのコンティンジェンシープランになります。

「こんなことが起こったら、このように動きましょうね」といった内容がまとめられたものがコンティンジェンシープランってことがわかったかな?事例についても後述してるので、このまま読んでいってね。

コンティンジェンシープランの英語表現

コンティンジェンシープランを英語で書くと『contingency plan』となり、英語圏でも『緊急時における対応プラン』の意味で使われています

contingency planは『contingency』と『plan』の2つの単語からなる熟語なので、それぞれの意味もチェックしておきましょう。

contingency
・偶発性
・不確実性
・不測の事態 など
plan
・計画
・企画
・今後の進め方
・図面
・~の計画を立てる
・仕組む など

コンティンジェンシープランの作成例

大きな企業ではすでに準備されている場合が多いです。しかし、コンティンジェンシープランがない企業では、いつあなたが作成を任されるかわかりません。

いざというときのために、コンティンジェンシープランを作成するにあたってのポイントをわかりやすく解説しておきます。

ポイントその①:緊急事態を明確にする

『地震』『水害』『火災』などの災害のほか、企業にとって本来起こってほしくない緊急事態をリストアップします。

ポイントその②:考えられる被害を洗い出す

『ポイントその①』で明確にした緊急事態が発生した場合、どんな被害が出るのかを洗い出します

ポイントその③:具体的な対処法を考える

緊急事態が発生した場合どのように動くのか、被害が出た場合には何をすればいいのかなど、具体的な対処法を考えます。

ポイントその④:コンティンジェンシープランの周知徹底

しっかりしたプランがあっても内容を理解していなければ意味がありません。理想は、従業員全員が理解していることです。それが難しい場合でも、最低限、部署で指示を出す立場にいる人には周知徹底させる必要があります。

コンティンジェンシープランの事例

これからコンティンジェンシープランを作成するなら、参考になるものが欲しいですよね。また、今あるコンティンジェンシープランを見直したいと思っている人もいるでしょう。

ここでは、公開されているコンティンジェンシープランの中からいくつかピックアップして、簡単に紹介します。

事例その①:東京証券取引所

日本経済に影響を与える東京証券取引所では、コンティンジェンシープランをネット上でも公開しています[efn_note]参考:東証市場における売買に関するコンティンジェンシー・プラン|日本取引所グループ[/efn_note]。

システム障害だけでなく、地震、自然災害、テロが発生した場合や、電力や通信網にトラブルが発生した場合の対応策が定められています

たとえば、次のようなものが挙げられます。

想定される事態 対応策
売買システムに障害が発生 ・媒介系…売買継続が困難な銘柄は売買を停止する。
相場報道システムに障害が発生 ・全面ダウン又は一般気配情報が配信されない場合等、市場の価格形成を歪めるおそれがある障害が発生した場合には売買を停止する。

なお、日本取引所グループの、東証市場以外のコンティンジェンシープランについてはこちらを参考にしてください。
参考 コンティンジェンシー・プラン日本取引所グループ

事例その②:金融機関

災害が起こってもお金の流通を止めるわけにはいきません。そのため、金融機関におけるコンティンジェンシープランは、内閣府所管の公益社団法人である金融情報システムセンターから手引書が販売されています[efn_note]参考:コンティンジェンシープラン|金融情報システムセンター[/efn_note]。

災害発生時に金融関係で問題があった場合は、安全対策専門委員会の承認に基づき、検討部会が開催され、必要に応じて改定版が発行されています。

第三版の改訂内容の中には次のようなものがあります。

改訂概要 内容
新潟県中越地震等にける金融機関の対応事例の反映 コンピュータセンターでの水の確保や連絡手段の確保等、追加すべき事項を検討した。
自然災害以外のリスクの対応 自然災害以外のリスクとして以下を検討した。

大規模システム障害リスク、風評リスク、情報漏洩リスク、サイバー攻撃リスク

そのほかの内容については以下に詳しく記載がありますので読んでみてください。
参考 『緊急機関等におけるコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)策定のための手引書』の改訂(第3版)について金融情報システムセンター

事例その③:ANA

航空会社のANAでは『長時間にわたりお客様の機内でお待たせする場合の対策』をコンティンジェンシープランとして公式サイトに公開しています。

これは、ANA(全日本空輸株式会社)および、AJX(株式会社エアージャパン)が米国運輸省の規則に従って作成されたもので、米国空港での発着時に適用されることになっています。次に、対応内容を一部抜粋します。

対応内容
お待たせ時間が2時間を超えた場合には、機内において飲食物の提供を行います。
医療行為が必要なお客様への対応、トイレの使用などお客様に必要なサービスを実施します。

そのほかの内容についてはこちらのサイトを確認してください。
参考 長時間にわたりお客様の機内でお待たせする場合の対策ANA

[ビジネス版]コンティンジェンシープランの使い方・例文

緊急時に必要となるコンティンジェンシープランですが、ビジネスシーンではどんな会話で登場するのでしょうか。ここでは例文を3つ用意したので、場面を想像しながら読んでみてください。

例文1

この間のビルの停電ではコンティンジェンシープランがまったく役に立ちませんでしたよね。
その件は役員会でもあがってたよ。コンティンジェンシープランの改訂が必要だと判断されたから、どんなところで問題があったかまとめてもらえるか?

例文2
各部署でコンティンジェンシープランをしっかり理解していたため、先日の地震の際も迅速に対応ができた。
例文3
今のコンティンジェンシープランはシステム障害のみの対策になっているから、災害時なども想定して改訂をするべきだろう。

コンティンジェンシープランとBCP(事業継続計画)との違い

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害やテロなどの緊急事態に遭遇した場合、資産の損害を最小限にとどめ、早期復旧ができるようにするための方法や手段を決めることです。内容はコンティンジェンシープランと似ています。

BCPでは事業インパクト分析*を行ったうえで、継続すべき業務を決めますが、コンティンジェンシープランは事業インパクト分析を行いません。『インパクト分析を行うか否か』がコンティンジェンシープランプランとBCPの違いといえます。

(事業インパクト分析*:事業を中断すると、どのくらい企業に影響を与えるかを分析すること)

コンティンジェンシーとリスクマネジメントの違い

リスクマネジメントとは、どんな『リスク(=危険)』があるかを想定し、リスクが発生した際に損失を最小限に抑えられるよう管理することをいいます。

リスクマネジメントは、特定の事業計画やプロジェクトにおけるリスクが対象となる場合が多く、コンティンジェンシープランは、企業全体のリスクが対象となります。簡単に違いをあげるとすれば、『リスクの規模の大きさ』だといえます。

なお、リスクを回避するために備えることは『リスクヘッジ』といい、リスクマネジメントとともにビジネスシーンでもよく使われます。状況に応じてきちんと使えるよう、次の記事もあわせて読んでみてください。
リスクヘッジとはどんな意味?ビジネスで役立つ使い方・例文、日本語の言い換えを解説

コンティンジェンシープランの留意点を理解しておこう

緊急時には、自分に関係するところを優先して対処してほしいという気持ちになりますが、状況によっては復旧が後回しになる場合もあるでしょう。

しかし、コンティンジェンシープランは、組織の機能すべてに対して策定されるのではありません。事業の早期復旧を考慮し、優先順位の高い案件から対応されるので、無駄に担当者をせかさないようにしましょう