「御社」は“相手の会社を呼ぶときの言葉”
・3時ごろ御社に伺います。 ・御社にはいつもお世話になっております。
このように「御社(おんしゃ)」はビジネスパーソンであればよく使う言葉ですよね。「御社」は相手の会社を指す言葉。相手を敬う尊敬語なのでビジネスシーンではよく耳にする言葉です。
読み方は「おんしゃ」。「御」は「ご」や「お」とも読みますが、ここでは「おん」と読みます。「御中(おんちゅう)」や「御礼(おんれい)」と同じ読み方ですね。
あまり社外の人と交流する機会がない人でも、入社する際の面接や履歴書等で「御社」を使ったのではないでしょうか。
いや、文章にするときは「御社」は使わないよ
そうですよね。一般的に「御社」は話し言葉の際に使われます。それでは、書き言葉の際は?その他の〇社は?英語表現は?この辺りを詳しくみていきましょう。
「御社」と「貴社」の違い
「御社」は、話し言葉での相手の会社を指す表現です。それでは、履歴書やEメールなど書き言葉ではどのように表現するのでしょうか。
ご存知の通り、話し言葉の「御社」に対して、書き言葉では「貴社(きしゃ)」と表現します。
それでは、話し言葉と書き言葉で使い分けている理由はご存知でしょうか。理由はわからないけど、そういうものだと思って使い分けている人も多いでしょう。
「御社」と「貴社」を使い分ける理由
もともとは話し言葉、書き言葉関係なく「貴社」を使っていたが、「貴社」は同音異義語が多く、紛らわしいため会話では「御社」を使うようになっていった
これが通説のようです。確かに「きしゃ」と発音する単語は「帰社」「記者」「汽車」とたくさん。鉄道会社に記者が取材に来たら大変そうです。
こちら、貴社の汽車の取材を担当する記者です。 そろそろ時間なので記者は貴社から帰社するそうです。
文字にしてみるとわかりますが、耳からの情報だと何が何だかわからなくなってしまいますね。これは極端な例ですが、わかりやすくするために、話す際は「貴社」を「御社」に変えて表現するそうになったようです。
そのため、会話の中で「御社」の代わりに「貴社」を使ったとしても別に失礼には当たりません。とはいえ、現在では話し言葉では「御社」、書き言葉では「貴社」を使うことが確立しているので、従った方がベター。人によってはマナー知らず、常識知らずととらえる人もいるかもしれません。
「弊社」と「当社」は?
「御社」「貴社」と同じように、〇社と表現する言葉に「弊社」「当社」「自社」「わが社」などがあります。これらはどれも自分の会社を指す言葉です。それぞれ詳しくみていきましょう。
弊社(へいしゃ)
相手の会社を敬う尊敬語「御社」に対し、「弊社」は自分の会社をへりくだっていう謙譲語です。つまり、相手の会社を上に自分の会社を下に表現しているわけです。「御社」を使う人はセットで「弊社」もよく使うのではないでしょうか。
注意点として、実際に会社の格や規模、売り上げなどが上か下かということは関係ありません。相手の会社が10名規模の中小企業でも「御社」、自分の会社が1万人越えの大企業だとしても「弊社」。
小社(しょうしゃ)
「弊社」と同じくへりくだりの意味を持つ謙譲語ですが、「貴社」の場合と同じく同音異義語が多いためあまり使用されなくなりました。特に「商社」と混合しやすいのであえて使う必要はないでしょう。
当社(とうしゃ)
「弊社」は謙譲の意味がありますが、「当社」にはへりくだる意味はありません。対等の場や、抗議やクレームをいう場合などに使います。また、同じ会社内で自分の会社について言及する際にも使用。
わが社
「当社」と同じく謙譲の意味を持たない言葉。同じく社内でも使用。
自社(じしゃ)
「当社」「わが社」と同じ。他社との対比の言葉で「自社」は使われることが多いようです。
会社じゃない場合も「御社」?
企業ではない場合は「御社」「貴社」以外を使用します。パターンは同じなので難しくはないでしょう。同様に話し言葉で「御」、書き言葉で「貴」を使います。
・銀行 御行(おんこう)/貴行(きこう) ・信用金庫 御庫(おんこ)/貴庫(きこ) ・学校 御校(おんこう)/貴校(きこう) ・官公庁 御省(おんしょう)/貴省(きしょう) 御庁(おんちょう)/貴庁(きちょう) ・組合 御組合(おんくみあい)/貴組合(きくみあい) ・店 御店(おんてん)/貴店(きてん) など
他にもあるかもしれませんが、基本的には「御」「貴」を付ければOK。銀行やお店でも株式会社であれば「御社」「貴社」で問題ありません。
また、個人事業主やフリーランサーに対しては「〇様」を使います。
“御社様”は「御社」よりも丁寧?
相手を敬うのに「御社」では足りない!「御社」よりも上の“御社様”を使おう!
大恩ある会社や、是が非でも契約をしてほしい会社に対しては“御社様”といいたくなるかもしれませんが、一般的には使用しません。
冗談でいうのはいいかもしれませんが、過剰な二重敬語として不快感を持つ人もいるので使わない方がいいでしょう。
「御社」の英語表現
「御社」や「弊社」のように上下関係をつける表現は英語では用いません。単に「you(相手の会社)」、「we(自分の会社)」でOK。もっと改まっていいたい場合は、「your company」「our company」が使えます。
I think my work experience matches what your company is looking for. ⇒私の経歴が御社が求めているものに合致すると考えます。
御社を使いこなしてこそビジネスパーソン
学生の頃は「御社」「貴社」はあまり使う機会はないかもしれませんが、社会人になったら最低限身に付けておくべきビジネスマナー。
慣れないうちはいい淀んだり、いい間違ったりするかもしれませんが、そのうち意識せずとも使いこなせるようになるでしょう。「御社」を使いこなしてこそ一人前のビジネスパーソンです。