「仰る」は「言う」の尊敬語!
部下
課長
部下
「仰る」とは、「言う」の尊敬語にあたります。「いう」や「口に出す」など、目上の人の動作をかしこまって表現した言葉です。
社会に出れば自分より目上の立場の人と接する機会も増え、自然と使用する場面が登場します。面接や取引、顧客との対応など、失礼があってはならない相手に対してスムーズに使えるようにならなくてはなりません。
「仰る」はビジネスシーンで幅広く使われている言葉ですが、誤った使い方をしている人も見られます。すでにご存じの人やまだ具体的に使った経験がない人も、この機会にぜひ覚えておいてください。あわせて「仰る」の類語についても解説します。
・話す
・物言う
・物語る
・申し上げる/申し述べる
・陳ずる
など
「仰る」の読み方と意味
口語では頻繁に使用されている「仰る」ですが、深く理解しているかと問われれば、そうではない人も多いかもしれません。。漢字の読み方や書き方、または意味をよくわからずに使っているなどなど。そういった懸念が起こらないよう、ここでは「仰る」の読み方と意味について解説します。
「仰る」の読み方と表記の種類
「仰る」は「おっしゃる」と読みます。漢字で書く際には「仰有る」や「仰っしゃる」などの表記もありますが、一般的には「仰る」と書いて「おっしゃる」とするのがベターです。
それぞれの表記に意味の違いはありませんが、メールや文章では「仰る」で統一したほうが読むときにすっきりします。
「仰る」の意味
「仰る」は「言う」や「話す」を尊敬語であらわした表現です。「○○さんが言う」の意味を、「仰る」を使って表現した場合が次の例文になります。
先輩
後輩
部下
課長
相手の「いう」や「いうこと」を「仰る」に置き換えて使用します。
「仰る」の使い方
尊敬語を使うケースは、基本的には目上の相手になります。例えば上司や先輩、取引先などです。「仰る」を使った主な例文をご覧ください。
・田中様と仰る方がお見えになっています。
・仰る意味が理解できません。
・そこまで仰るなら証明してみせてください。
・そう仰るにはなにか理由があるのでしょう。
・お客様の仰る通りでございます。
自分を相手より下に置き、かしずいた*態度で使います。また、「仰る」のほかの使い方には「仰る通り」の表現があります。相手の言葉に同意や同調する「言う通り」や「その通り」など、これらの表現を尊敬語に変えた言葉です。
同格や目下を相手に使用する言葉ではなく、あくまで目上に対して「仰る」を使用します。そうではない場合だと皮肉として使用されるケースもありますが、軽口を叩ける間柄でなければ使用を控えたほうが無難です。
メールや電話で「仰る」を使う場合
ビジネスシーンでは、メールや電話などあらゆる場面で「仰る」を使用する機会があります。先述した「仰る」の例文は口頭で使用可能です。ここでは口頭以外でも使えるさまざまな「仰る」の使い方を一覧でご紹介します。
・お客様の仰るように、弊社で取り扱いさせていただいております。
・○○様が仰ることは十分理解しております。何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。
・○○様が仰るようなことは決してございませんので、安心してご利用くださいませ。
・なにか意見やご不満点がありましたら、遠慮なく仰ってください。
「仰る」は口頭でもメールでも使い方に大きな変化はありません。「言ってください」のニュアンスを相手に伝えたい場合、「仰る」の形にこだわらず、「仰って」に変化させて使用します。
「仰る」の基本的な使い方さえ覚えておけば、あらゆる場面で使いまわしが可能となります。
「仰る」の過去形
・仰った
・仰いました
・仰りました
「言う」の過去形をそのまま「仰る」に当てはめればいいわけではありません。例えば「言われた」を「仰っしゃわれた」に差し替えた使い方は間違いです。「仰る」を過去形として使う場合、上記の3つを覚えておけばOKです。
「仰る」を使う際の注意点
「仰る」の誤用で特に多いのが、二重敬語やウチソト逆転敬語です。特に気をつけたいのが、社外の人間に対して尊敬語を使う際、社内の人間にまで謙譲語ではなく尊敬語を使ってしまうパターンです。「仰る」の誤用と注意点を詳しく一覧で解説します。
尊敬語+尊敬語
謙譲語+謙譲語
など
社外と社内の人間に同時に尊敬語を使ってしまうこと
謙譲語・・・自分を下げることで相手を立てる。へりくだった表現
○「課長が忘年会の日程は任せると仰いました」
×「課長が忘年会の日程は任せると仰られてました」
※「仰られて」は「仰る」と「られる」の尊敬語の重複
○「○○もそのように申してました」
×「○○もそのように仰っていました」
※社外の人間に対する上司への表現は謙譲語or丁寧語を使用する
古語である「仰せられる(おおせられる)」が誤用として表記されるケースもありますが、「仰せられる」は「言いつける」の意味をあらわす言葉です。「言うこと」と「言いつける」では意味が異なるため、どちらにしても「仰(せ)られる」は誤りです。
尊敬語は自分より格上に対して使う表現であるため、たとえ上司であっても格上とされる社外の人間と同格に扱うのは失礼にあたります。この場合は上司に敬意を払った表現で十分です。
二重敬語と社外の相手への尊敬語の使用。この2点に注意して「仰る」を使用しましょう。
「仰る」の類語
目上の人への「言う」と同じ意味の言葉には、「仰る」以外にもまだまだあります。ビジネスシーンや披露宴などのフォーマルな場所で使う機会がある類語をご紹介します。社会人であるみなさんは、これらの言葉も十分に使いこなせるようにしましょう。
「物言う」
文字通り「物を言う」と書いて、言葉を口に出すさまをあらわす言葉です。言葉を出すさまだけではなく、気の利いた言葉をあらわした表現としても使えます。どちらかといえば「物申す」の表現のほうが広く使われています。
上司
部下
部下
上司
後輩
先輩
「物語る」
事情をあらわす言葉です。ある原因があることにより、その結果があらわれていることを表現する際に使われます。
部下
先輩
部下
上司
「申し上げる/申述べる」
「言う」の謙譲語である「申す」を使った敬語です。相手に敬意を払う表現であるため、ウチソト逆転敬語を避ける場合にも使用できます。丁寧語の「ます」で締める「申し上げます/申し述べます」は、重要な報告をする厳粛な場で使用する機会も多いです。
先輩
後輩
上司
部下
「申し上げる/申し述べる」は、「~る」で絞めるよりも「申し上げます/申し述べます」と言い換えて使う機会が多いです。その代表として、「お願い申し上げます」がよく使われています。
また、「申し上げる」と「申し述べる」は口語と書き言葉で使い分けされるケースが多く、口頭では「申し上げる」を使用するのが一般的です。
「陳ずる」
「陳ずる」とは、公の場で物事を説明する際に使用される言葉です。似た言葉として「陳述する」も耳にする言葉かと思います。ビジネスシーンでは、理由や弁明が行われる「申し開き*」の場で使われます。
後輩
先輩
後輩
上司
「陳ずる」は古語として使われる古い表現です。表現的にも仰々しく感じるため、現在では別の類語を使用したほうが無難で通じやすくなります。
「仰る」の英語表現
「仰る」はビジネスシーンでもよく使われる表現です。英語で表現しなければならない場面に備えて「仰る」の英語表現を確認しておきましょう。
say
と表現できます。
「仰る」の英語表現を使用した例文はこちらです。
⇒お客様の仰る通りでございます。
・I understand what ○○ says.
⇒○○様が仰ることは十分理解しております。
・If you say something like that, please show some evidence.
⇒そこまで仰るなら証拠を見せてください。
・I don’t understand what you’re saying.
⇒仰ることの意味が理解できません。
・There is nothing like ○○ says, so please use it with confidence.
⇒○○様が仰るようなことは決してございませんので、安心してご利用くださいませ。
ビジネスシーンで「仰る」を使いこなそう
社会人になると目上の人との付き合いが増え、失礼のない対応を求められます。丁寧な言葉遣いを心がけていても、使い方を間違っていては台無しです。今回ご紹介した「仰る」も、無意識に誤用してしまっているケースの多い敬語です。
敬語を正しく使用し、目上の人に対しての礼節や気配りを完璧にこなしてこそスマートなビジネスパーソンです。みなさんも今回の内容を参考にして、「仰る」をスマートに使いこなしてくださいね。