テナントとは「一区画を借りたお店や事務所」のこと!
上司
新人
上司
新人君が話していた「テナント募集」は、事業用に建物の一区画を借りたい人を募集するという意味です。ビジネスでよく登場するテナントについて学び、社会人としての知識を深めましょう。
テナントの意味を解説
会社の業務でテナントに関わる方と、個人的な事業でテナントを利用する方がいます。テナントにどのように携わるかは人それぞれですが、ビジネスとテナントは深い関わりがあります。
ビジネスでのテナントについて理解できるように、まずはテナントという言葉のもともとの意味を確認しましょう。
英語のテナント(tenant)はどんな意味?
テナントは英語表記すると「tenant」。「tenant」には次のような意味があります。
・借家人
・借地人
・借りた家に住んでいる人
・(借りた人がその家に)居住する
カタカナ語のテナントとは?
カタカナ語のテナントは「tenant」と違い、土地を借りる人や住居として建物を借りる人に対しては使いません。
また、本来の意味とは別の意味でも用いられることが多いです。
テナントの意味①:不動産・賃貸の賃借人
カタカナ語のテナントは、ビルなどの建物の一区画を店舗や事務所などを、事業で使用する目的で借りる人のこと。不動産を賃貸する賃借人。
これがテナントの本来の意味です。
テナントの意味②:商業施設の店舗・ビルの事務所
貸店舗で営業しているお店や事務所をテナントと呼ぶことが多くなっています。商業施設に入っている店舗や、ビルの事務所のことですね。
本来の使い方とは違いますが、新たな意味として日本語に定着し、むしろこちらが主たる意味になりつつあります。
商店街や商業施設などにお客を呼び込むための売りになる、特に大きな目玉テナントはキーテナント、アンカーストア、核店舗とも呼ばれます。
キーテナントには、知名度があり、規模も大きく、個性的で魅力的な店舗だとお客が感じるようなテナントが選ばれます。
テナントの家賃・賃料の相場はどれくらい?
これからテナントを持って事業を始めたい方、テナントを募集したい方は、家賃・賃料の相場が気になりますよね。
テナントにどれくらいのコストがかかるものなのか、目安の求め方を紹介します。
家賃・賃料の相場はエリアによって異なる
テナントの家賃・賃料の相場は、同じ市区町村内でも、出店するエリアによって変わってきます。
家賃・賃料は、人が集まりやすい駅近くのエリアで高く、駅から離れると安くなるのが一般的です。
坪単価で設定されている
テナントの家賃・賃料は坪単価×坪数で設定されます。また、家賃・賃料のほかに共益費(家賃・賃料の10分の1の金額が目安)が設定されることもあります。
たとえば、次の2つのテナントについて坪単価を考えていきましょう。いずれも50坪のテナントを借りる場合を想定しています。
テナント | 新宿駅からの距離 | 家賃・賃料相場 |
A | 450m
(歌舞伎町1丁目) |
坪単価2,810万円×50坪=14億500万円 |
B | 650m
(歌舞伎町2丁目) |
坪単価413万円×50坪=2億650万円 |
テナントAとBでは駅からの距離が200mほどしか離れていませんが、坪単価の設定が大きく異なります。それによって、目安となる家賃・賃料にも大きな違いが生じます。
不動産業者にテナント募集を依頼することも
不動産の所有者がテナントを募集する場合は、不動産業者や店舗専門の不動産業者に依頼するのが一般的です。
しかし、不動産業者に依頼せずテナント募集したい場合は、新聞広告を出したり、自分でチラシを作成して企業を中心にポスティングしたりする方法があります。
ただし、業者を通さない場合は契約書作成など、法律知識が必要な作業も自分で行わなければなりません。業者を通さない募集方法を検討するときには、それが可能かよく考えてください。
テナントと似ている用語との違い
テナントは、よく似た意味の用語とセットで使われることも多いです。どのような用語をどんな意味で用いているのか、テナントとどこが違うのかくわしく見てみましょう。
テナントとインショップの違い
インショップは、商業施設(ショッピングセンターや百貨店など)の一区画を借りているテナントのこと。インショップもテナントに含まれますが、商業施設のテナントをあえて「インショップ」と呼んで区別しています。
インショップは施設側が特色を考え出店をコントロールするので、比較的ライバル店が少ないことが多いです。ただ、ある分野に特化した商業施設の場合は、どうしてもライバル店が多くなるため、競争の激しさは商業施設の特色にも左右されます。一般的なテナントの場合は、選んだ立地によって激戦区かどうかが異なります。
また、インショップは細かい点まで施設側との契約に合わせながら経営をしなければなりません。経営の自由度が低く、トラブルやクレームが起こったときには、施設側に報告する義務も生じます。テナントの場合は従うべき枠組みやルールが少ないため、比較的自由度が高いです。
テナントと路面店の違い
「路面店」とは、雑居ビルやオフィスビル、商店街の賃貸物件などの一階部分を借りているテナントのことです。テナントの中でも、道路に面しているお店を路面店と呼びます。特に、大都市の大きな通りには有名ブランドの路面店が軒を連ねていることが多いです。
また、「空中店舗」という用語もあります。「路面店」のうち、2階以上にある物件を借りているテナントのことです。「2階以上」=「空中」というネーミングになっているのですね。
通常、1階にお店をかまえている方が多くの人の目につきやすいため、商売は有利になります。ただ、路面店では家賃・賃料が高くなることが一般的です。
テナントとコンセショナリーの違い
コンセショナリーは、テナントとは別の契約形態で売り場を賃貸して、百貨店や大型スーパーなどの商業施設に出店する専門店のこと。略してコンセ。テナントよりも安い賃料で売り場を借りることができます。
しかし、テナントと違い専門店の店名が表に出ないので、お客さんには、専門店が商業施設の直営店のように見えてしまうことがあります。
コンセショナリー契約とは
コンセショナリー契約の場合、専門店が出店するときの設備投資は商業施設が負担しますが、専門店側は商業施設に加盟金や保証金を支払う必要があります。
また、商品販売契約では「消化仕入れ契約」という形態をとります。消化仕入れ契約とは、専門店で商品が売れると、商業施設が専門店から仕入れたことにする契約のことです。専門店側からみると卸売りをしていることになります。
一緒に覚えておきたいテナントの関連語
テナントはビジネスでよく使われる言葉だけあって、仕事上の会話に登場する関連語もたくさん。社会人として覚える言葉がまだまだあります。言葉の意味を確認し、テナントについて正しい知識を身につけましょう。
FCテナント店
FCテナント店は、フランチャイズチェーンに加盟して出店するテナントのこと。フランチャイズチェーンに加盟することで、個人では出店が難しい大型商業施設にも出店しやすくなるメリットがあります。
FCテナント店は、フランチャイズ契約に基づいた経営を行わなければなりません。デメリットとしては、経営の自由度が低くなり、トラブル・クレームの報告義務も発生するという点が挙げられます。
テナントリーシング
テナントリーシングは、テナントを募集している事業物件を借りてくれる新規テナントを探し、誘致する業務のこと。事業物件を所有している側から積極的に働きかけ、事業物件に入ってほしいテナントに交渉します。
テナントビル
テナントビルは、ビルの所有者がテナントに貸し出しているオフィスビルのことです。
[ビジネス版]テナントの使い方・例文
テナントは、事業物件を貸す側も借りる側も使う言葉です。それぞれの立場で、どのようにテナントという言葉を使用するのか、例文を通してイメージしてみましょう。
上司
先輩
若手料理人
先輩
番外編!IT分野でのテナントはどんな意味?
IT分野では、ここまでに紹介してきたものとはまったく異なる意味で、テナントという言葉を使うことがあります。IT分野でのテナントがビジネス会話に登場する機会があるかもしれません。IT分野特有の意味も覚えておいて損はないですよ。
シングルテナント
シングルテナントはSaaSなど(ソフトウェアをインターネット経由で使用するサービス)で、ひとつのシステムを一社の顧客企業が独占して使う方式。
企業に合ったシステムを個別に作り上げることができます。高コストにはなりますが、それに見合う信頼性があります。
マルチテナント
マルチテナントはシングルテナントの反対語。SaaSなどのサービスでひとつのシステムを複数の顧客企業が共有して使う方式です。
シングルテナントよりも安い使用料で利用することができます。
用語に対する理解を深め、正しくテナントを使えるようになろう!
日本では日本語特有の意味をもつ言葉としてテナントを使っています。テナントというカタカナ語は、英語の「tenant」とは明らかに異なる意味合いで使用されることが多いので注意が必要。
ビジネスでテナントに関わるときに悩まなくて済むように、日本語ならではのテナントの意味や使い方、関連語を正しく理解しておきましょう。