トレーサビリティとは、追跡調査できる仕組みのこと!
トレーサビリティを一言で言ってしまうと「追跡調査できる仕組み」。BSEが問題になった牛肉は個体識別から飼育場所、加工場所などが追跡できるようになっており、この仕組みもトレーサビリティになります。そこで今回は私達の生活の中でも身近なっているトレーサビリティという言葉の語源、意味をはじめ、使い方や関連語などもわかりやすく解説していきます。
トレーサビリティの意味を語源から詳しく解説
トレーサビリティは英語で『Traceability』と表記し、対象となる物だけでなく、その製品を構成している部品や原材料の流通経路を追跡・確認できる仕組みのことを指します。
また、トレーサビリティは『トレース(Trace)』と『アビリティー(Ability)』の二つが合成されて生まれた言葉です。
トレース(Trace)の意味
トレースは、『跡』『足跡』を意味する言葉で、以下のような意味を示す際に使われています。
■原本となる図を下に敷いて薄紙などに写すこと。
(図面を書き写しをする人=トレーサー)
■登山での踏み跡。その踏み跡をたどること。
■スキーの滑り跡
アビリティー(Ability)の意味
『能力』『技量』『才能』という意味をもっており、英語では以下のように使われます。
■ability to pay(支払い能力)
■physical ability(身体能力)
トレーサビリティの使い方例文
「トレーサビリティがしっかりした製品である」「トレーサビリティを実施する」というような使い方をしますが、業界によってトレーサビリティの内容が異なります。そこでここでは業界ごとの使い方をいくつかご紹介しておきます。
食品業界でのトレーサビリティの使い方例
【例文】
このハンバーグは、牛トレーサビリティ法でしっかり管理された牛から取れた肉を使って製造されているので、安心してお召し上がりください。
【解説】
牛肉にはBSEのまん延を防止する措置として、個体識別情報の管理を徹底する『牛トレーサビリティ法』が義務付けられています。例文は、「この法律に基づいて育てられている牛の肉を使って作られたハンバーグです」ということを意味しています。
ちなみに、お米についても『米トレーサビリティ法』という法律があり、お米そのものや、米加工品に問題が発生した時に流通のルートを素早く特定できるようにしています。
IT業界でのトレーサビリティの使い方例
【例文】
最近システムエラーのクレームが多発している。わが社でもきちんとトレーサビリティチェックを導入しないといけないのではないか?
【解説】
IT業界では『トレーサビリティチェック』というテストシステムを導入している企業が増えているようです。これは、IT業界では品質管理の一環として行われているもので、要件定義書、設計書、ソースコード*、をテスト仕様に基づいて確認するというものです。
このシステムは、システムがきちんと動くかだけでなく、要件定義に組み込まれた内容がきちんと組み込まれているか、顧客の要望の取り込み漏れがないかもチェックしていくという行程です。
そしてこの例文は、エラーが増えているのでこのチェック方式を導入したほうがいいのではないか?ということになるわけです。
(ソースコード*:プログラミング言語で書かれた文字列)
ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ?
ブロックチェーンは日本語で『分散型台帳技術』といいます。これは、一定時間ごとの取引内容を一つの塊(ブロック)として記録し、次のブロックを記録する時には前のブロックのデータも一緒に記録します。
このように、それぞれのデータのブロックがチェーンのようにつながって保存されていることから『ブロックチェーン』と呼ばれています。
このブロックチェーンを採用してトレーサビリティを実施したとして話題になったのが、安全なジビエ(野生鳥獣の食肉)の流通を管理している『日本ジビエ振興協会』。
■捕獲者が食肉の情報を登録する。
■日本ジビエ振興協会が情報の運営管理をする。(取引サイトへの情報提供も含む。)
■仕入れ業者が閲覧して購入を検討し、トレーサビリティを確認して購入。
分業式でデータを管理できるということで、大型のサーバーを用意する必要もなく、ブロックごとの管理でデータ改ざんをするには以降のブロックのデータも直していかなくてはならないということで、改ざんも難しくセキュリティ面でもとても安全であるといえます。
今ではジビエの食肉業界だけでなく、農業の世界などでもブロックチェーンによるトレーサビリティが取り入れられているようです。
国際基準でも重要な指標!ISOでのトレーサビリティ
企業を紹介する際に『ISO9001取得』『ISO14001認定企業』という文字をよく目にします。この『ISO』というのは、国際標準化機構の略称で、国際的な取引をスムーズにするため設けられている国際的な基準です。
製品そのものを対象としている規格で代表的なのは、『非常口のマーク』『カードのサイズ』などがあり、世界共通の規格にしておくことで誰にでも基準がわかりやすくなっており、このような製品は「ISO規格で作られている」ということになります。
そして、ISOでのトレーサビリティは、その製品がどこで作られ、どのような工程で製造が進んでいき、どこに出荷され、どこにあるのかを明確にしておく、というものになっています。
トレーサビリティの関連語
トレーサビリティの意味は、だいたいおわかりいただけたかと思うので、ここで関連語をいくつかご紹介したいと思います。
トレーサー
トレーサーと聞くと、設計事務所などで図面の書き写しをする人が頭に思い浮かぶかもしれませんが、辞書を調べると以下の意味が書かれています。
■模写者
■図面の書き写しをする人
■追跡者
■ある物質のゆくえを追跡する為に使う放射性同位体
■プログラムが正常に実行されているかを追跡確認する為のプログラム
このように、何かを追跡する・追いかけるような人や物のことをトレーサーといいます。
トレーサビリティシステム
【食品についてのトレーサビリティ】
生産・加工・流通など、それぞれの段階での原材料、製造元、販売先などを記録・保管し、その情報を追跡できるようにしたシステムのことをいいます。
【製品についてのトレーサビリティ】
部品・材料の仕入れ、製造、出荷などを工程ごとに管理して追跡できるようにしたシステムのことをいいます。
トレーサビリティマトリクス
マトリクス(matrix)には『母体』『基盤』『原盤』などの意味があります。この言葉とトレーサビリティが一緒になることで、トレーサビリティのもととなる物を指します。
Aというプログラムの設計書はBに格納されており、ファイル名は○○で…というように、トレーサビリティを実施する上で必要な情報が一目でわかるように表などに整理されているものを指します。
トレーサビリティ体系図
トレーサビリティと経路を示す体系図が組み合わされたものを指しています。
■原材料はどこから仕入れているのか
■どの配送業者でどこの工場に納品されたのか
■どの製造ラインで作られたのか
■製品がどこに保管されたのか
…といった流れを1枚のシートに図解形式でまとめたものをトレーサビリティ体系図といいます。
トレーサビリティは製造業以外でも重要な考え方!
トレーサビリティは、義務化されている食肉や米だけでなく、トラブルが起きた時に迅速に解決する為にもどの業界にも必要なことで、意識しておくべき考え方といえます。もしあなたの携わっている仕事で工程や流通がはっきりしていないようなことがあれば、トレーサビリティをぜひ提案してみましょう。