「僭越ながら」とは「出過ぎたことながら」という意味
僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきます
乾杯の音頭に指名されて一言。仕事絡みの飲み会が何度もあるシーズンにはよく耳にするフレーズです。とはいえ、「僭越ながら」は乾杯の時だけの言葉ではありません。
「僭越(せんえつ)ながら」は「出過ぎたことながら」という意味。身分や立場に相応しくない言動をしますがお許しくださいという断りの言葉です。謙遜の表現なのでこれを機にマスターしてビジネスシーンで役立てましょう。
「僭越ながら」の漢字
「僭越ながら」の「僭」は他ではあまり見たことがないですよね。それもそのはず。「僭」は常用漢字ではなく「僭越」以外ではほとんど使われません。
とはいえ、「せん越」と書いたのでは逆に読みづらくなってしまいます。「僭越」は書けないけど読める漢字の筆頭ではないでしょうか。
「僭」は「身分不相応に思い上がる」という意味があり、それに「越(える)」で「僭越」が成り立っています。
「僭越ながら」の使い方・例文
・僭越ながら申し上げます ・僭越ながらご活躍を応援しております ・僭越ではございますがご挨拶させていただきます
「僭越ながら」の一文を挨拶や忠告等の前に述べることで、嫌味なく始めることができます。
「僭越ではございますが」とすることで、さらに丁寧な表現になります。
「僭越ながら」の注意点
ある芸能人が記者会見で「僭越ながら座らさせていただきます」と発言したことが少し話題になりました。ニュースで見た人は違和感を覚えたかもしれません。
この使い方は間違っているとは言えないものの、かなりオーバーな表現に聞こえます。これからする発言に対して「僭越ながら」であれば違和感はありませんが、単に「座る」ことに対して「僭越ながら」はちょっとおかしく聞こえますよね。
もしかしたら、「僭越ながら座って発言させていただきます」と言いたかったのかもしれません。それでも、イスが用意されていて座るのが前提の場ではどうなんだろうと思ってしまいます。
当たり前のことに使うと不自然
「僭越ながら」は謙遜の言葉とはいえ、当たり前の動作に対して使うと違和感があります。
挨拶やスピーチをする場合も、聴衆が全員部下、後輩であれば「僭越ながら」は必要ありません。逆に嫌味になってしまうので注意しましょう。
「僭越ながら」の類語
・不躾(ぶしつけ)ながら ・生意気ながら
「僭越ながら」はこれらの表現に置き換えることもできます。とはいえ、「僭越ながら」の方が丁寧な響きです。
「恐縮ながら」との違い
「恐縮ながら」も同じように恐縮する表現ではありますが、ニュアンスに違いがあります。
・僭越ながら⇒身分、立場を超えたことをしてすみません ・恐縮ながら⇒迷惑をかけてすみません、気を遣わせてすみません
「恐縮ながら」は謝罪やお礼の際に使うことが多い表現です。挨拶や忠告の前に使うことが多い「僭越ながら」とは使い方も異なりますね。
「僭越ながら」を英語で
I dare to say… ⇒僭越ながら述べさせていただきます
「dare to」には「あえて~する」という意味があり、「I dare to say…」で「僭越ながら言わせていただく」という意味合いに。
英語にはへりくだった表現はありませんが、このような婉曲な表現で敬意を表すことはできます。
「僭越ながら」をビジネスに役立てよう
「僭越ながら」はビジネスシーンではとても重宝するフレーズです。
上司や先輩に忠告、意見する際は「僭越ながら」の一文を付けるだけで角が立ちません。乾杯の音頭にしか使わないのはもったいないので、使いこなせるようになりましょう。