「追伸」は手紙に「付け足し」する際に使う
「追伸(ついしん)」は手紙等の最後に付け加えられた文章のこと。本文で書き損ねたことや本題と関係がない一言を付け足したい際に、「追伸 ○○○○○」といったように使います。
「追伸」は古い?
ネット検索で「追伸」を調べると「追伸 古い」という検索候補が出ます。また、調べると「追伸は死語?」「追伸はダサい」といった書き込みも。
確かにひと昔から比べると「追伸」はあまり使われなくなっているようです。しかし、それには明確な理由があり、決して死語になったから、ダサいからではありません。
「追伸」が廃れた理由
「追伸」の本来の役割は手紙で書き忘れたことを付け加えることです。
今度遊ぼうという手紙を書いたのに、こちらの予定を書き忘れたとします。また一から書き直すのは大変ですよね。そんな時に「追伸 私は週末なら基本的には空いています」と加えるのが「追伸」の役割でした。
現在はプライベートからビジネスまで手紙ではなく、メールやSNSでのやり取りが基本。メールやSNSでは書き忘れたとしても簡単に手直しすることができるため、本来の役割での「追伸」の使用はされなくなってきています。
「PS」とは
「PS」は「追伸」を英語にした「postscript」を省略したもの。「P.S.」や「ps」「p.s.」と書くこともあります。
使い方は「追伸」と同じで「PS ○○○○○」。「PS」はもちろん英語の手紙でも使うことができます。
「追伸」の効果
手書きで文章を書くことが少なくなった現在、「追伸」はやはり「古い」ものとして絶滅しつつあるのでしょうか。
「追伸」は本来の「書き忘れ」を書き加える役割だけではなく、あえて「追伸」を使うこともあるんです。
あえて「追伸」を使う理由とその効果を見ていきましょう。
補足・強調
重要だから仕切り直して書きたいという際に補足・強調のため「追伸」を利用することがあります。
・追伸 開始の2時間前から入場することができます ・追伸 駐車場の数に限りがありますのでお車でお越しの際はお早めに ・追伸 前回の資料の数値とは変更している箇所があるので再度ご確認ください
念押し
セールスレターでよく見られる「追伸」。最後に買いたくなるような一言や口コミを載せたり、メリットを再度書いたりして購買意欲を煽るために使用されています。
・追伸 これを手に入れるか入れないかであなたの今後の人生は大きく変わります ・追伸 「この商品に出会わなければ私は今ここにはいないでしょう(都内 会社経営)」あなたにとってこれは他人事ですか? ・追伸 毎日の缶コーヒーを半年我慢するだけで、何百倍、何千倍ものリターンがあなたを待っています
仲良しアピール
事務的な内容の文章の後に、「追伸」でプライベートなことや相手を気遣うようなメッセージを続けます。仲のいい人や仕事以外の趣味で共通点のあるような人には効果的。
・追伸 私も猫を飼い始めました!今度アドバイスください ・追伸 草野球いいですね!ずっと見る専門だったので体力には不安がありますが…笑 ・追伸 風邪にはゆず湯が効きますよ。近くのコンビニにも売ってましたよ ・追伸 梅雨の時期は洗濯物が乾きにくくて困ってます。どうぞご自愛ください
笑いを取る
仲のいい友達同士の手紙やメールのやり取りで最後のオチとして笑いを取るために使う「追伸」も。
・追伸 この手紙は1分後に消滅します ・追伸 今あなたの後ろにいるの誰? ・追伸 手紙の内容は全て嘘です
「追伸」の注意点
補足・強調や仲良しアピールの「追伸」はビジネスメールでも使えそうですが、いろいろと注意点もあります。
面倒だから「追伸」を使ったと思われることも
本来の「追伸」は手紙で書き忘れがあったときに書き足すために使用します。大事な手紙や目上の人への手紙の場合は「追伸」は使わずに書き直すのが常識でした。
人を選ばないと「面倒だから書き直さなかったのか」と誤解される可能性も。特にメールは手紙とは違い、訂正が楽にできるのでなおさらそう考える人もいるようです。
忌み言葉でもある
「重なり」を連想させるような言葉は「忌み言葉」として冠婚葬祭やお見舞いの手紙では避けるべき表現とされています。「追伸」も「重ねて伝える」ということなので、これらの手紙では使わないようにしましょう。
また、謝罪や内容がシリアスな手紙、メールでも「追伸」は避けた方が無難。「追伸」の内容にもよりますが、本文で謝罪の言葉を述べているのに最後に話題を変えるのは控えるべきです。
謝罪や感謝の言葉は本文で
謝罪や感謝の言葉を「追伸」で付け加えるのも避けた方がいいでしょう。取って付けたような印象になります。謝罪や感謝、お祝いの言葉などは本文中でしっかりと述べてください。
「追伸」の書き方
「追伸」は最後に書くのは分かりますが、具体的にどこに書くのか分かるでしょうか。
手紙は本文だけではなく、結語(敬具やかしこ)や署名などが入りますよね。それらの前なのか後なのかはっきりさせておきましょう。
本文
今後ともよろしくお願いいたします。
敬具
○年○月○日
○山○太郎
追伸 今月こそはゴルフに行きたいですね!
基本的には「追伸」は最後の最後、日付や署名の後に書きます。これらの前に書きたくなりますが、あくまで「追伸」は書き足すというニュアンスなので最後の最後です。
メールでも効果的な使い方ができる
「追伸」は手書きの文章で役割を果たすものでした。メールやSNSが主流の現在ではお目にかかることは少ないかもしれません。
無用の物と言ってしまえばそれまでですが、「追伸」には効果的な使い方もあります。興味のある人はまずは仲のいい人とのやり取りで練習してみるといいでしょう。