「頂戴する」とは「もらう」の謙譲表現
お時間を頂戴してもよろしいでしょうか
「頂戴する」はビジネスシーンではよく使う表現。買い物をしたときに「1000円頂戴します」という店員さんのセリフもよく耳にします。でも、この使い方本当に正しいと思いますか。
「頂戴(ちょうだい)する」は「もらう」の謙譲表現。物や言葉など相手からもらう際にへりくだって相手を立てる言い回しです。礼儀正しく丁寧な表現なのでビジネスシーンで広く使われています。
「頂く」との違い
「頂戴する」と似たような表現に「頂く」があります。物を「もらう」の謙譲表現として同様の使い方が可能。
・お土産を頂戴する ・お土産を頂く
「頂く」は「補助動詞」として「説明していただく」「褒めていただく」といった使い方ができます。この使い方は「頂戴する」にはないので、謙譲表現としては「頂く」の方が幅広い使い方が可能。
その他の「頂く」の意味や「いただく」との違いなど詳しくは以下で解説しています。
「ちょうだい」とは
「頂戴する」にも補助動詞としての使い方がないわけではありません。ですが、「頂戴する」を補助動詞として使った場合、謙譲のニュアンスは感じられません。
・窓を開けてちょうだい ・肩を揉んでちょうだい
「頂戴」を補助動詞にすると「○○してください」とお願いする意味に。
友だちに頼むようなカジュアルさ、上から目線な印象さえ受けます。もともとは謙譲表現でしたが、時代を経てこのようなニュアンスに変化しました。
補助動詞はひらがなにするのが一般的なので「ちょうだい」と記しています。
幼い感じ
このお菓子、頂戴(ちょうだい)
「頂戴する」から「する」をとって「頂戴(ちょうだい)」だけで使うことも。「もらう」という意味ですが謙譲表現には聞こえません。これももともとは謙譲の意味がありましたが、時代とともに失われていきました。
5歳くらいの子どもが使っているような響きがあります。ひらがなにするとさらに幼さが加速。
補助動詞ではないので本来は漢字で書きますが、幼児も使う表現なのでひらがなで書く方がしっくりきます。実際にこのような場合はひらがなで書かれることが多いようです。
「頂戴する」の使い方
「頂戴する」は立派な謙譲表現であるものの、正しい使い方をしないとおかしく聞こえてしまう表現でもあります。正しい使い方を例文で確認していきましょう。
・お言葉を頂戴したく存じます ・お時間を頂戴してもよろしいでしょうか ・資料を頂戴に上がります ・説明する機会を頂戴願います ・お心遣いありがたく頂戴します
資料や手紙など目に見える物品から、言葉や気持ちなど目に見えない物にまで使うことができます。
注意すべき「頂戴する」の使い方
「頂戴する」には一概に間違いとはいえないものの、注意しなければいけない使い方があります。
「頂戴いたします」は二重敬語?
通常、「頂戴します」とするところ、「いたします」とこれまた謙譲表現をつけた「頂戴いたします」。いわゆる「二重敬語」と呼ばれる表現です。
二重敬語とはかつては皇室や王室など最高の敬意を払うべき相手に対して使う表現でした。現在のビジネスシーンで使う二重敬語は過剰な丁寧表現として避けるべきものとされています。
「頂戴いたします」は二重敬語であるものの、よく耳にする表現であるためあまり違和感がないのではないでしょうか。
慣習的な使い方として広まっているため一概に間違いとは言えません。
お名前を「頂戴する」
「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」は相手の名前を聞く丁寧な表現としてビジネスシーンではお馴染みですよね。
よく使われる表現ですが、本来は自分や子どもの名付けのために主君の名前の一部を文字通りもらうという意味合いです。
単に名前を聞くだけであれば、「お名前をお伺いできますか」「お名前をお願いします」でOK。
お名刺を「頂戴する」
初めて来訪した会社の受付で「お名刺を頂戴します」と言われることがありますよね。本来であればこれもちょっとおかしな使い方。
名刺を渡すべきは担当者であり、受付の人に渡すわけではありません。受付では「お名刺をお預かりします」と言うべきでしょう。
3千円「頂戴する」
買い物をしたときに店員が言う「○○円頂戴します」。例えば、2,592円の買い物をした時に3,000円を出したとします。このときに「3,000円頂戴します」というとお釣りはなく全てもらうという意味合いに。
こちらも本来は「3,000円お預かりします」がふさわしいといえます。
注意しながら使おう
「頂戴する」はよく使う表現ですが、使う際にはいろいろと注意が必要です。間違い表現でありながらも一般的に普及している使い方もあるため、それらを使うなとも言えません。気になる人は別表現に言い換えましょう。