「失笑」の正しい意味は「つい笑ってしまう」
・スマホの代わりにテレビのリモコンを持ってきてしまい、みんなに失笑された
この文章を読んでどのような光景が頭に浮かぶでしょうか。みんながあきれて苦笑いしているシーンが思い浮かんだのであれば「失笑(しっしょう)」を誤用している可能性があります。
「失笑」の本来の意味は「思わず吹き出す」。笑いをこらえられなくて、つい「ぷっ」と吹き出してしまうイメージです。「あきれて笑いも起こらない」という意味で使われるのは誤った使い方なのです。
「失笑」の使い方・例文
「失笑」の正しい使い方を例文で確認していきましょう。
・息子の寝言がかわいくて思わず失笑した ・緊張しているのがわかり、つい失笑してしまう ・彼の的外れのコメントが周囲の失笑を買う
「失笑」は笑ってはいけないシーン、笑わせようとしていないシーンでつい笑ってしまうことを指します。「失笑」だけであれば「あきれる」という意味はありません。
しかしながら、「失笑を買う」「失笑を禁じ得ない」であれば話は別。これらは「愚かな言動をして笑われる」という意味合いがあります。これらの表現から「失笑」にもネガティブなイメージがついたのかもしれません。
この「失笑」は少なからず誤用している人がいる表現。文化省の調べでは6割の人が誤用しているという結果もあります。トラブルのもとになる可能性もあるので、正しい使い方であっても使い方には注意してください。
対人恐怖症の「失笑」
突然ですが、2019年に公開されてアカデミー賞も獲得した『ジョーカー』はご覧になりましたか。
主人公は、おかしくないのに突然笑いだしてしまう対人恐怖症を患っています。このせいで様々なトラブルに巻き込まれながら物語は進んでいくのですが、この疾患の正式名称が「失笑恐怖症」。極度の緊張や苦痛など、ストレスを感じている際に笑い出してしまう症状が代表的です。
「失笑」の類語
「失笑」の類語にはどのようなものがあるでしょうか。いくつか集めてみました。
・苦笑(くしょう)、苦笑い(にがわらい) ・嘲笑(ちょうしょう)、嘲笑う(あざわらう) ・爆笑(ばくしょう)など
「笑い」に関する言葉はいくつもあります。
「苦笑」は怒りや戸惑いなどの感情を笑うことで打ち消す行為。「嘲笑」は「馬鹿にして笑う」こと。これらを「失笑」と混同して使う人も多いので注意しましょう。
「爆笑」は「大笑いすること」。説明するまでもないと思いきや、これも実は誤用されている言葉。「爆笑」は大勢が大笑いする様を表しています。そのため、本来であれば一人の際に「爆笑」は使えません。
「失笑」の英語表現
「失笑」を英語で表現する場合、どのような言い回しができるでしょうか。
・I burst out laughing when I saw her ⇒彼女を見て思わず吹き出した(失笑した)
「burst out laughing」で「失笑」は表すことができます。
ちなみに、「苦笑い」は「laughing uncomfortably」。誤用の「失笑」もこの表現が可能です
誤用の意味も押さえておこう
「失笑」は誤用されることの多い言葉。正式な意味を知ったからといって誤用を指摘するのはスマートではありません。言葉というのは時代とともに変化していくもの。どちらの意味も押さえておきましょう。