リストラクチャリングは「事業の再構築をする」という意味!
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日本では「解雇」の意味でリストラクチャリングが使われる機会が多いですが、もともとは「効果的に事業を行うために事業を再構築すること」がリストラクチャリングです。
リストラクチャリングが日本ではなぜマイナスイメージが強い単語になってしまったのか、本来の使い方はどのようなものなのか…。ビジネスマンとして正しい知識を身につけましょう。
リストラクチャリングの意味を解説
ビジネスでのリストラクチャリングを理解しやすくなるように、まずはリストラクチャリングという言葉の意味を確認しておきましょう。
英語のリストラクチャリング(restructuring)はどんな意味?
リストラクチャリングは英語表記すると「restructuring」。「restructuring」には次のような意味があります。
・構造改革
・再編
・リストラ
カタカナ語のリストラクチャリングとは?
カタカナ語のリストラクチャリングは「企業を取り巻く環境が変化して、事業の効率が悪くなったときに、事業を見直し再構築すること」を意味する言葉。
リストラクチャリングでは業績のよい事業に企業力を集中させるため、事業の売却や買収などを行い、会社全体の構造を再構築します。
たとえば、事業見直しの結果100人の従業員の解雇が必要と判断された場合。130人解雇して新たに30人採用し、従業員を入れ替えることで企業の再生を促すのが本来のリストラのやり方です。これで企業の構造改革を目指していきます。
しかし、日本の企業だと100人解雇して終わりのことが多く、結果的にクビになるだけなので、リストラクチャリングに前向きな印象が持たれていないのです。
なぜ日本では「解雇」の意味で使われることが多いの?
日本でリストラクチャリング(リストラ)という言葉が多く使われるようになったのは、1990年代始めのバブル経済が崩壊したころからです。
このころの日本の企業では、不採算事業を整理するために従業員の解雇が多数行われていました。
このとき、経営者側の人員削減することに対するうしろめたさを軽減するため、日本語の「解雇」ではなく、リストラクチャリング「restructuring」という英語が意図的に使われたそうです。その結果、現代でもリストラクチャリング=解雇というイメージが強く残っています。
あわせて覚えたいリストラクチャリングの類語・関連語
リストラクチャリングの意味が理解できたら、次はリストラクチャリングの類語・関連語についても勉強してみましょう。どの言葉もビジネスに深く関係している用語ですよ。
リストラクチャリングの類語
リストラクチャリングの類語には「リエンジニアリング」や「リオーガニゼーション」があります。リストラクチャリングと何が違うのか見ていきましょう。
リエンジニアリング
リエンジニアリングは企業の既存業務・組織・戦略をすべて根本的に見直し、ゼロから再構築させ、企業の競争力を回復させようとすること。
業績が悪くなっている事業を廃止し、業績のよい事業に企業力を集中させる、部分的な再構築のリストラクチャリングに対し、リエンジニアリングはより大きな変化をともなう経営改善の方法です。従業員を解雇する場合、リストラクチャリングよりも徹底的に減らしていきます。
リオーガニゼーション
リオーガニゼーションは企業の立て直し(再生)を目的に行われる、リストラクチャリングのこと。
利益が出ていない事業から撤退し、不要と判断した部署を廃止したり。新規事業のためにほかの会社を買収し、自社と重複している部分はどちらかを廃止したり。会社再生のために、事業の合併や分割などを行います。
リストラクチャリングの関連語
リストラクチャリングの関連語には「クレジットイベント」や「デット・リストラクチャリング」があります。どのような意味の言葉か覚えておきましょう。
クレジットイベント
クレジットイベントは日本語に直すと「信用事由」になります。
企業や国など、組織が債務不履行や債務の条件変更、倒産、破産など、債務が実行できなくなる危険性がある行為のこと。また、そのような事態に発展する可能性のある行為や出来事のことをいいます。債務の条件変更にあたり、リストラクチャリングはクレジットイベントのひとつになります。
デット・リストラクチャリング
デット・リストラクチャリングは債務を整理すること、または再構築すること。次のような手法がとられます。
債権放棄:債権者(債権を持っている人)が債務者(債権分の給付をする義務がある人)に対して、債権の全部、もしくは一部の返済をしなくていいと宣言すること
DPO:全額回収が難しくなった債権を持っている債権者が、第三者にその債権を額面金額よりも安い価格で売却。債務者はその後、債券を購入した第三者から債権の額面未満の価格で債権を買い取ること
DES:債権者が会社(債務者)の金銭債権を、会社(債務者)の株式と交換すること
DDS:債権者が持っている通常の債権を、債務者の財務状態をよくする効果が期待できる劣後債(経営破綻した場合の支払い順位が通常の債権よりも後になる債権)に変更すること
リスケ(リスケジュール):金利、約定返済額、返済期間など、もともとの借入条件を債務者が返済できる条件に変更すること
経営を圧迫するほどの負債を抱えている債務者の事業再生には、デッド・リストラクチャリングで利子の払いや元本の返済による負担を小さくすることが重要になります。
リストラクチャリングの事例紹介
リストラクチャリングで検討される事例を紹介します。自社の事業に無駄がないか探す参考にしてください。
経理・管理の見直し
帳簿上の固定費用をすべて見直し、無駄がないか探してみましょう。見直しの例は次の通りです。
リース契約の見直し:不要なものは解約。
光熱費の削減:蛍光灯からLEDに切り換え。新料金体系プラン検討。節電の意識を高める。
通信費の削減:IP電話・ひかり電話の導入検討。
印刷費の削減:会議はペーパーレスにする。
購買の見直し
事業で使う物品の調達に、リサイクルショップや100円ショップを利用するのもあり。会社のマーク入り備品でなくても、仕事に支障はないですよね。また、大量発注・大量納品と少量発注・少量納品のどちらが低コストになるのか比較検討してみてください。
人事・労務の見直し
人事・労務の見直しで一番に思いつくのは残業禁止や解雇、レイオフ(一時的な解雇)かもしれませんね。しかし、これらは短期的な効果しかなく、やりすぎると業務を失速させてしまいます。次のような事柄も検討してみてください。
人件費の削減:RPAソフトウェアやチャットボットの導入、クラウドソーシングの利用などで単純作業にかかる人件費を節約。
ワークシェア:1人分の仕事を2人で分け合い雇用を確保。
レイオフについて詳しくは下記の記事で紹介しています。ぜひこちらも読んでみてください。
レイオフとはどんな意味?アメリカでは一般的?日本におけるリストラとの違いや用語の使い方をガイド
[ビジネス版]リストラクチャリングの使い方・例文
リストラクチャリングについての理解が深まったら、次は例文でリストラクチャリングの使い方をイメージしてみましょう。
社長
専務
新人会計課事務員
上司
新人会計課事務員
上司
リストラクチャリングで経営資源を有効に使えるようにしよう!
リストラクチャリングは首切りを意味する言葉ではありません。企業の業務を効率化し、再生させるための戦略的手法のことです。
資金も人材も、企業が保有する経営資源は有限。リストラクチャリングで無駄を省き、業績のよい将来有望な事業に企業力を集中させましょう。