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縁もゆかりもなかった岡山に移住した理由とは? フリーライター小溝朱里さん

鳥取で働いていた会社員時代、コロナ禍をきっかけに自分のキャリアを見つめ直し、フリーランスのインタビューライターに転身した小溝あかりさん。はじめはフリーランスになるつもりはなく、キャリアスクールSHElikesに入りライティングコースで勉強をしていた。そこからインタビューライターとして独立し、縁もゆかりもなかった土地“岡山”に移住する。小溝さんがフリーランスになったきっかけや、岡山に移り住んだ理由を伺った。

自分のキャリアを考える

もともとアートに興味があった小溝さんは、大学時代には劇場にインターンやボランティアとして参加していた。その分野で働いている人たちはフリーランスの方が多く、好きなことを仕事にしている姿が生き生きとして見えたという。いつか先の未来だが、小溝さんもいずれ「フリーランスで好きなことを仕事にしたい」と漠然と考えるようになった。

大学卒業後に入社したのは、企業PR施設の運営に関わる企業だった。小溝さんは総合職として入り、工場見学のツアーガイドや施設運営に携わっていた。しかしコロナ禍で施設は休業となり、このまま会社に居続けるかどうか、自分のキャリアを考え始めた。

「次の転勤のタイミングが迫っていたため、転職も視野に入れて動いてみたこともありましたが、そのときは自分の軸が定まっていなくて挫折してしまいました」

そこで一旦、なにか興味あることを勉強してみようと思い、デザインやライティングなどWebスキルが学べるスクールを探し始めた。見つけて入ったのが、キャリアスクールのSHElikesだった。

「SHElikesで勉強してから、自分のキャリアを自分で納得できる形で選びたいと思ったんです」

小溝さんはライティングコースを受講し、記事制作や取材方法など、ライターに必要なスキルを学んだ。SHEliksのコミュニティは、仲間同士での近況報告やこういうことをやってみたいと話せる場があり、お互いに応援しあえる環境が励みになったそうだ。

さらに受講してすぐの頃、いろんな働き方をしている人の話を聞けるイベントが開催されて、フリーランスで働いている人の話を聞く機会があった。参加した受講生のなかには実際にフリーランスとして働いている人もいるのだと知り、自分も目指せるかもしれないとイメージが湧いたという。

「会社員でいるよりフリーランスの働き方を想像した方が自分のなかでワクワクしたんですよね」

インタビューライターを目指すきっかけ

小溝さん

SHElikesでライターコースを受け終わって、なんとなくライターがどういう仕事をするのかはわかったが、自分は何が好きでどんなことを書きたいのかがわからなくなってしまった。そこで相談したのが、ライターコンサルの中村洋太さんだった。

「私は好きなものや得意なことを誰かにしっかりと伝えるのが苦手でした。でも“好き”という感情面の部分を意識しないと、やりたいことを見失ってしまうんですよね。なので、中村さんとお話して、自分の好きなこと、やりたいことを引き出してもらいました」

最初に浮かんできたのはアートに関すること。当時は鳥取にいて、コロナ禍という状況の中、県内外の文化施設やアートのイベントに行けるタイミングではなかったという。会社を辞めようと思っていた時期でもあり、鳥取から離れることも考えていた。それなら、鳥取にいる今しかできないものってなんだろうと考えた。

その時に「うつわ」というキーワードが浮かんだという。鳥取には、窯元がたくさんあり、街の雑貨屋さんにうつわが売られていることはごく日常の光景だった。小溝さんは大量生産品ではなく、ひとつひとつ個性があるものに惹かれるそうだ。

考えるなかで「鳥取のうつわを使った飲食店にインタビューしたい」と思い、とあるカレー屋さんを訪ねた。

「もともと人の話を聞くのが好きだったので、取材当日はカレー屋さんの店主と話が盛り上がり、2時間にも及ぶインタビューとなりました。当時はインタビューの流れをコントロールするスキルは持ち合わせていなくて、お話が楽しいから全て聞いていました。でもこれを記事にまとめるにはどうしたらいいのかわからず途方にくれてしまって……。そこでも中村さんにマンツーマンで教えてもらいました」

【カレー×鳥取のうつわ】KAJI CURRY店主に聞く、地元のうつわを使うこだわり』の記事を小溝さんのnoteで公開すると、noteの編集部のおすすめに選ばれ、大きな反響があった。この記事がきっかけで、「うつわの窯元さんのインタビュー記事を書いていただけませんか?」と声がかかったそうだ。

「いまでこそ、noteのポートフォリオや、SNS経由で仕事が舞い込むようになりましたが、自分で発信して仕事がいただけた最初のきっかけは、あの記事だったと思います」

フリーランスになり縁もゆかりもない土地、岡山へ移住

鳥取は好きな土地ではあったが、雨や雪が多く、小溝さんは天気に気分が左右されてしまうことが度々あった。会社に勤めていたら仲間がいるけれど、フリーランスになりひとりになったら、鳥取に居続けられるイメージが湧かない。もし住む場所を自分で選べるとしたら、晴れの日が多い場所がいいなと漠然と考えていた。

小溝さんの実家は静岡で、戻って住むこともできる。しかし、知っている人が多い分、新しいことをやろうと思っても甘えが出たり、周りの目が気になって動けなくなったりすることがあるかもしれない。いつかは静岡に戻るかもしれないが、「いまこのタイミングではない」と彼女は思った。

鳥取から山を越え、瀬戸内の岡山に行けば、文化的な街“倉敷”がある。さらに瀬戸内海の島々はアートが盛んな土地。また岡山県は「晴れの国岡山」と打ち出しているくらい、晴れの日が多く気候にも恵まれているそうだ。そのような理由から、小溝さんは岡山に住もうと決心した。

実際に移住するまでの期間、フリーでライターや編集をしている岡山在住の方とSNS上で繋がり、岡山の起業家をインタビューする仕事に携わることになった。会社を退職するまではそのように副業でライターをし、フリーランスに移行する準備を進めていた。

インタビューライターとして、アートの仕事に関わる

岡山でアートの仕事はできているのだろうか。

小溝さんが岡山に移ってからすぐ、倉敷とことこの代表や編集者に会って話をする機会があったと話す。「どういうものが書きたいですか?」と聞かれ、「アートや文化に関する記事を書きたいです」と伝えたところ、なんとそのメディアから大原美術館の理事長にインタビューする仕事が舞い込んできたという。

その頃たまたま、大原美術館が新たにスローガンを発表するタイミングが重なり、小溝さんに声がかかったのだ。「想像以上に早いタイミングで話がきたと思いました。インタビュー時は緊張しましたが、好きなアートに関われてすごく嬉しかったですね」

大学時代からやりたいと思っていたことが叶った瞬間だった。

今はインタビューライターのほかに、SHElikesでの仕事もしている。SHElikesの体験レッスンを受ける方にSHElikesについて紹介するのと、キャリアの個別カウンセリングを行っている。お客様との対話は、インタビュースキルが生きていると話す。

「好奇心が強く人の話を聞くのが好きなので、『この人はどうしてこういう考えを持っているんだろう』『なんで今こういう仕事をしているんだろう』と自然と深掘りしているんですよね。自分の人生の肥やしにもなっています」

画像提供:小溝朱里
取材・執筆:つか(@tsuka_0806
編集:中村洋太(@yota1029