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ライター歴1年半の原由希奈さん。文字単価の世界を抜け出した理由

ここ数年、急速にWebライターの需要が増えているのではないだろうか。クラウドソーシングではライターを募集している案件を多く見かける。その多くは文字単価で報酬が決まる。さらに案件によっては初心者ライターでも挑戦できるものもある。

そんななかライター歴1年半で、大手出版社など有名なメディアで執筆している原由希奈さん。初めはクラウドソーシングで記事を書いていたという。しかし今では直接企業から仕事をいただけるようになった。

どうやって仕事を獲得できるようになったのか、お話を伺った。

仕事と子育ての両立に模索する

これまで、大手脱毛サロンで4年、人間ドック専門の医療機関で5年働いていた由希奈さん。医療機関時代に2人の息子さんを生み職場に復帰したところ、仕事と子どもの世話で毎日が目まぐるしく過ぎていった。

「当時は週5日の1日6時間勤務で、自宅と職場の往復、そして保育園の送迎にさらに2時間かかっていました。子どもたちは病気がちで、1カ月間ほとんど会社へ行けない時もあったんです。なので、職場の同僚たちに迷惑をかけることが心苦しくて。なんとか1年働きましたが、退職を決めました」

ただ、由希奈さんの収入も家計の支えになっていた。かといって、外に働きに出ればまた同じ状況になってしまう。そこで在宅でもできる仕事を探し始めた。

「医療機関で働いていた頃、クラウドワークスで記事を書く仕事を1〜2回受けたことがあったんです。1記事200円の体験記事でした。その時に、ライターとして家計の収入を得ている人もいると知りました」

1記事200円は決して報酬がいいとは言えないだろう。

「仕事を探すうちに、『ライターを目指すなら、まずはプログラミングを学んだほうがいい』といった記事や広告を目にするようになりました。それを見て、じつは16万円する大人向けプログラミングスクールに申し込もうとしていたんです。講座を受ければWordPressもほぼ完璧に使えるようになると知って、わくわくしていました」

一方、プログラミングに詳しい知人や家族にそれを話すと、「やめたほうがいい」と釘を刺された。

「周りは、16万円は高額だし、まずは独学で頑張ってみてはどうか?という意見で。そっか…と落ち込みつつも、少し冷静になりました。スクールを卒業して活躍されてる方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、試しに別な方法を探してみようって」

由希奈さんは雇用保険の受給期間中に、1日4時間までの規定内でライターとしてやっていけるのか、試そうと決めた。

クラウドソーシングで仕事を得る

クラウドワークス・ランサーズを選んだ理由は、テレビのCMを見たのがきっかけだった。

「はじめは、これまでの勤務経験を生かして脱毛サロンの紹介記事を書いていました。1番多いときの文字数は2万字で、文字単価は1円でした。文字数の指定はなかったんですが、構成が膨大な量だったんです。そこに文章を埋めていくと、結果2万字になっていたんですよね。当時はインターネットで調べて書いて、なんとかオリジナルの記事を作っていました」

しっかり考えて書くので、その記事は2週間ぐらいかかったという。

「編集者さんがWordPressのことや文章のアドバイスなど、すごく手厚く指導してくださいました。だから書きれたんだと思います」

その後自ら応募し、文字単価2円の執筆に携わることができた。2020年4月、雇用保険は切れたが、この仕事のおかげで収入は安定した。
しかし記事を何本も書くうち、次第にモヤモヤしていった。

「自分が行ったことのない脱毛サロン店のことは、書くモチベーションを保つのが大変でした。実際に働いていたお店のことは書けても、働いたことのないお店について書くのがしんどくなってきてしまったんです。とくに辛かったのはランキング記事です。悩んでいた時に、ライターコンサルをされている中村洋太さんの記事『Webライターが単価を高めるためのアドバイス(完全版)』に辿り着きました」

由希奈さんは、そこに書かれていた内容に衝撃を受けた。悩んでいることの解決策が全部書かれていたからだ。その後、中村さんに相談することを決めた。

「私が書きたかったのは、実体験をもとにした記事でした。本を読んだり、取材したり、それで自分の意見を交えて書いたりすることだったんです。中村さんにアドバイスを受けて、そういうメディアを探してみることにしました」

文字単価ではない世界を知る

最初に見つけたのが、ある働くママ向けのメディアだった。

「そこで執筆されている大橋礼さんの記事がすごく印象的でした。子どもに関することや、ご自身の体験を交えたストーリーに心が響いたんです。私もいつかこういう記事を書きたいな、と思いました」

ライターとして応募することを決めた由希奈さん。中村さんにアドバイスを受けながら、提案文を作った。プロフィールにはTwitterのアドレスを載せ、直接編集長に提案文を送った。返ってきたのは意外な言葉だった。

「現在ライター募集はしていませんが、SNS担当として一緒に働きませんか? と、お返事いただきました。その時は、編集部で働けるんだ!SNSのお仕事に携われるんだと、とても嬉しかったです」

最初は手探りで、SNSマーケティングの本を読みながら、Twitterのフォロワー0からSNS運用を始めた。ツイートの質やフォロワーとの丁寧なやり取りを意識したところ、徐々にではあったが、フォロワーは4ヶ月で200まで増えたという。

「この頃、同じメディアでライターのお仕事もさせていただけるようになって。ただ、ほぼ毎日SNS運用に時間を取られている状況だったので、ライターとして記事を書く時間が減っていました」

あくまでもライターを主軸に活動したいと願っていた由希奈さんは、編集長にそのことを相談したという。編集長は柔軟に対応してくださり、SNSではなく、ライターメインの契約に変更してもらうこととなった。

そしてライターの仕事を増やすため、メディアの編集長へ提案文を書いては送っていたという。そのなかで採用いただけたのは3割ほどだった。

「当時、ライターの少年Bさんが書かれた記事を参考にしながら提案文と企画書を書いていました。そしてそれを、大手出版社のメディアに送ったら、採用していただけたんです」

その後も、ICTプログラミング教育のメディア『コエテコ by GMO』や大手ビジネス誌のメディアにも提案文と企画を添えて送り、仕事が決まっていった。

記事はこちら。
https://www.resume.id/yukinasm

文字数の規定がなくなり、文字単価から抜け出した由希奈さん。どんな変化があったのだろうか。

「どれだけ読者にとって面白く書けるかを考えるようになりました。わかりやすい文章になるなら、文字数を削ってもいい。タイトルも見出しも、文字数を気にせず読者視点で考えることができるし、より文章の質を上げたいという気持ちが高まっています」

さらに、いくつかのメディアで編集長にこんなことを言われたそう。

「ライターとしての実績を作ってあげたい」

ライター歴が浅い由希奈さんにはどれだけ励みの言葉となったことだろうと感じた。

「ICT教育ライターの回覧板」のメンバーとなる

2021年5月、インタビューの仕事が徐々に増えていた由希奈さん。一方で、インタビューのスキルをもっと上げたいと、悩んでいたという。

「執筆中のメディアの記事を読んでいたら、ICT教育について、すごくわかりやすい取材記事を見つけました。ICT教育は、コンピュータを活用した教育法のことです。筆者は、編集者でライターの『夏野かおるさん』という、朝日新聞EduAなどで活躍されている方でした。ぜひ夏野さんの取材を見てみたいと思い、メディアの編集長に『取材の録画を見せていただけませんか?』とご相談したんです」

予想はしていたが、守秘義務があるので見ることは叶わなかった。その代わり夏野さんのオンライン取材に同席して、記事を執筆する許可をいただけた。

「その取材をきっかけに、夏野かおるさんと直接slackでやりとりするようになりました。さらに私が今まで書いた記事について、丁寧にアドバイスいただけたんです」

その後、夏野さんのはからいで、由希奈さんは『ICT教育ライターの回覧板』というnote共同運営マガジンの一員となった。マガジンでは、ICT教育の執筆実績をもつライターを7名紹介している。そのメンバーのなかには、ライター界隈では有名な少年Bさんや千鳥あゆむさんがいる。

「『ICT教育ライターの回覧板』自体は、まだ認知度は少ないのですが、ライター歴が10年以上のベテランの方もいます。そのお仕事術や、これまで知り得てきたことが発信されていくのを見ると、すごく面白いマガジンだなと感じています」

由希奈さんの記事は5月25日に公開された。

「今回は、私が活動の場を広げていったきっかけについて書きました」

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ライターとして仕事をするようになり、子育てとの両立はどう変わったのだろうか。

「以前は常にバタバタしていました。今は保育園の帰りに公園に寄る時間を取れるようになったんです。子どもたちも楽しそうだし、私も幸せだな、と感じるようになりました」

「これからもこの生活を続けていきたい」というのが、由希奈さんのライターを続ける原動力になっている。

取材・執筆:つか(@tsuka_0806
編集:中村洋太(@yota1029