タックスヘイブンとは?税金の避難場所?仕組み・問題・日本の税制をわかりやすく解説

タックスヘイブンは税金がゼロに近い国・地域!

上司

定年退職したらタックスヘイブンの国に移住しようと思ってるんだ。
部長は退職金がっぽりもらえるんですね!いいなぁ。リッチマンですね!

新人

上司

いや、がっぽりもらえるリッチマンはカミさんの方。日本だと住民税が高いから移住するんだと。肩身の狭い老後になりそうで、今から気が重いんだ。
「タックスヘイブン」は税金がゼロ、またはゼロに近い国・地域のこと。「タックスヘイブン」の恩恵を受けるのは大企業や資産家のことが多いですが、サラリーマンでもたくさん退職金をもらえる方は「タックスヘイブン」を知っておくと得かもしれません。

「タックスヘイブン」について詳しくみてみましょう。

タックスヘイブンの意味をチェック

「タックスヘイブン」の意味を確認してみましょう。税金を払わなくていい天国みたいなイメージを「タックスヘイブン」に持っている方は多そうですね。「ヘーヴン(天国)」と意味を勘違いしてませんか?

タックスヘイブンとは

「タックスヘイブン」は英語で書くと「tax haven」となります。「tax」と「 haven」には次のような意味があります。

tax
税、税金、重い負担、無理な仕事、酷な要求
「タックスヘイブン」でいうところの「tax」の意味はこのうちの「税」、「税金」です。
haven
避難所、安息所、港、停泊所
「タックスヘイブン」での「haven」の意味は、このうちの「避難所」になります。

上司

「タックスヘイブン」は「税金」+「避難所」で、「税金の避難所」という意味合いになるよ。

タックスヘイブンの国・地域

タックスヘイブンの国や地域は、「ブラックリスト」にされていることがあります。特にEUが発表しているリストがよく知られています。

2017年のブラックリスト

EUは2017年の12月に、EUが公平と考える税制基準に対して協力的でない17ヶ国・地域を、悪質なタックスヘイブンの国として名指ししたブラックリストを発表しました。

アメリカ
・パナマ
・グレナダ
・トリニダード・トバゴ
・セントルシア
・バルバドス
アフリカ中東
・バーレーン
・ナミビア
・チュニジア
・アラブ首長国連邦
アジア・太平洋
・グアム
・パラオ
・サモア
・米領サモア
・マカオ
・韓国
・モンゴル
・マーシャル諸島

この他に、EUの税制基準を満たすような税制ではないけれど、EUとの話し合いで税制改善を約束した47ヶ国・地域(トルコ、スイス、香港など)をグレーリストとして発表しました。

上司

ブラックリストの国・地域はこれといった産業が発展していない場所で、国・地域の政策として世界中から企業を誘致したがっているという共通点があるよ。

2018年のブラックリスト

その後、ブラックリスト入りしていた国・地域からはEUとの話し合いを進め、税制改善を約束したことでグレーリストに変更になった国・地域が出ます。したがって、2017年よりもブラックリストに入っている国や地域は減っているのです。2018年11月時点でブラックリストとされているのは5つの国・地域です。

ブラックリストの国・地域
サモア、トリニダード・トバゴ、米領サモア、グアム、米領バージン諸島

ブラックリストは上記の通りです。ただし、グレーリストの国や地域でも、期限内に約束を守って税制改善をしなければ、ブラックリストに入れられてしまいます。

MEMO
ブラックリスト入りした国には、EUからの支援停止など何らかの制裁が検討される可能性があるとされていました。
※ブラックリスト国・地域への制裁は2018年11月時点でEU加盟国間の合意が得られていません。

EU加盟国はブラックリストに含まれていない?

新人

でも、EUが発表したブラックリストには、EU加盟国が含まれていないという指摘が出ていましたよね?
確かに。実際、NGO機関のオックスファムが発表したタックスヘイヴン・リストにはEU加盟国が含まれていたよ。次のリストを2017年のEUブラックリストと見比べてみてくれ。

上司

オックスファムの法人税タックスヘイヴン・リスト
・英領バミューダ諸島
・英領ケイマン諸島
オランダ
・スイス
・シンガポール
アイルランド
ルクセンブルク
・オランダ領キュラソー島
・香港
・キプロス
・バハマ
・英領ジャージー
・バルバドス
・モーリシャス
・英領バージン諸島

新人

オランダやアイルランド…EU加盟国が含まれていますね!EUのリストだけみてたら、EU加盟国はみんな公平な税制を採用していると誤解しちゃうかもしれませんね。

タックスヘイブンの仕組みをわかりやすく

「タックスヘイブン」の国や地域について確認できたら、次は「タックスヘイブン」の仕組みを確認してみましょう。難しそうな名称に反して、実は超単純明快な方法でした。

タックスヘイブンのやり方
自国の税率よりも低い税率の国(A)を探す

A国に子会社を置くか、法人を設立する

子会社・法人にA国の税率を適用させて税金を節約する

上司

新人君、日本の法人税率は約30%だ。A国の法人税率が約10%だとしたら、どっちに子会社をつくる方が得だろうか?
A国です。法人税20%分の節約は大きいですね~

新人

タックスヘイブンは個人でも利用できる?

「タックスヘイブン」は個人でも利用可能です。サラリーマンが「タックスヘイブン」を利用する場合は、冒頭の部長の話でもあったように、退職金にかかる租税回避に使うケースが多いようです。

退職金をもらうとそこから一定額を引いた額が「退職所得」になり、その10%分が住民税額として持っていかれます。住民税は各年の1月1日に住んでいる地域で課税。年初めに「タックスヘイブン」の国・地域に住んでいれば、日本ではなくその国の税率が適用されるので、退職金にかかる税金を節約することができます。

個人が現役のときにタックスヘイブンを利用する方法

個人が現役時代に「タックスヘイブン」を利用することも、もちろんできます。ただし、退職後の「タックスヘイブン」よりも実行するのが難しくなることが多いようです。「タックスヘイブン」を検討する価値があるのは、次の条件を満たせる方だけといわれています。

個人でタックスヘイブンをするための条件
①「タックスヘイブン」の国・地域に移住する。または、1年の半分以上を「タックスヘイブン」の国・地域に住む
「タックスヘイブン」の国・地域で多くの利益を上げることができる

上司

日本国内で上げた利益は、「タックスヘイブン」の国に住んでいたとしても、すべて日本の税率が適用されるから気をつけてね。

タックスヘイブンは違法?何がいけないのか?

ここまで記事を読んできて「あれ?タックスヘイブンって悪いことなの?いいことなの?どっち??」と混乱してしまったかもしれませんね。「タックスヘイブン」が違法なのかどうかみていきましょう。

タックスヘイブンは違法ではない

「タックスヘイブン」は自国(日本)と「タックスヘイブン」先に選んだ国の規制を遵守していれば違法ではありません。ただし、「タックスヘイブン」されると自国に税金が入らないことになるので、税金を納めてもらえなかった側の国は困ってしまいますよね。

日本のタックスヘイブン対策税制って?

日本では「タックスヘイブン」で租税回避しようとする企業や個人を無くすために、「タックスへイブン対策税制」を設けています。「タックスヘイブン」先につくった子会社・法人の条件によってどこまで日本の税率で税金がかかるかが変わってきます。

パターン1

①税率が30%未満~20%以上の「タックスヘイブン」先にペーパーカンパニーの子会社・法人をつくった場合
または、
②税率が20%未満の「タックスヘイブン」先に子会社・法人をつくり、その子会社・法人が4項目の「経済活動基準」すべてを満たしている場合


「タックスヘイブン」先の子会社・法人の受動的所得(資産性所得)と日本の親会社(株主)の所得を合計して、日本の税率で課税。

上司

「経済活動基準」の4項目をすべて満たすことで、その子会社・法人が経済合理性をもってその国につくられたと認めてもらえるよ。
子会社・法人の積極的所得(本業で得た所得)は日本の税率で課税されずにすみますね。

新人

パターン2

税率が20%未満の「タックスヘイブン」先に子会社・法人をつくり、その子会社・法人が4項目の「経済活動基準」のどれかを満たしていない場合


「タックスヘイブン」先の子会社・法人の所得すべてと日本の親会社(株主)の所得を合計して、日本の税率で課税。

上司

「経済活動基準」をひとつでも満たさなければ「タックスヘイブン」目的の子会社・法人と判断され、日本の課税対象になります。
タックスヘイブン失敗!子会社・法人のつくり損ですね。

新人

タックスヘイブンの類語・関連用語

「タックスヘイブン」についていろいろみてきました。この見出しでは「タックスヘイブン」の類語・関連用語を紹介します。気になる言葉がないか探してみてください。

オフショア

「オフショア」は辞書的な意味とビジネスでの意味が大きく異なる言葉。辞書的な意味は「沖合の、沖に向かって、岸から離れた」です。

対して、ビジネスでは「海外移転」という意味で使われ、ビジネスの拠点を海外に移すときに「オフショア」が使われます。「オフショア」について詳しくは、下記の記事を読んでみてください。
オフショアの意味とは?ビジネス・金融における使い方や反対語の「オンショア」をチェック

パナマ文書

「パナマ文書」はパナマの法律事務所から情報漏洩(じょうほうろうえい)した機密文書。「タックスヘイブン」により税を免れていた大企業や富裕層についての1970年代からの情報が、1,150万件分掲載されています。

「パナマ文書」にはロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、イギリスのキャメロン首相など国のトップの名前も載っていました。そのことでアイスランド首相が辞任するなど、世界政治に多大な影響を及ぼしています。

パラディ・フィスカル

「パラディ・フィスカル」は「税の天国」、「税の楽園」という意味のフランス語。ドイツ語などの場合も同じような言い方をします。「天国・楽園」と「避難所」で言い方は少し違いますが、意味合いとしては「タックスヘイブン」と同じです。

タックスヘイブンは賛否両論

パナマ文書のデータベースからは準暴力団関係者、指定暴力団幹部の親族が複数在籍している企業の役員、「資本のハイエナ」ともあだ名される金融ブローカーなど、日本人だけでも危ない名前がぞろぞろ出てきたそうです。

「タックスヘイブン」は悪徳企業やマフィアが不正資金隠しに使うこともあり、批判の的になることもあります。「タックスヘイブン」を使うのならば規制遵守を肝に銘じましょう!