レガシーは「遺産」!
新人
先輩
新人
“レガシー”と聞くと、小池都知事のオリンピック関連の発言を思い浮かべる方も多いかもしれません。「レガシーをワイズスペンディングで使って作っていく」。小池都知事は戦略なのかカタカナ語を多用する発言が特徴的ですが、あまり意味が知られていないカタカナ語を並べるのはやりすぎな気も。
オリンピック後も残る競技施設(“レガシー”)を作ることは賢い支出(ワイズスペンディング)であるという発言です。
車種の『レガシィ』も有名ですよね。車好きな方はもちろん、そうでない方もテレビコマーシャルや雑誌広告などで見聞きしたことも多いでしょう。今回は「遺産」という意味で使われる“レガシー”について詳しく解説していきます。
レガシーの意味
新人
上司
“レガシー”は「遺産」という意味だと前述しましたが、一言で遺産といってもいろいろありますよね。世界遺産や文化遺産、負の遺産、親の遺産などなど。それぞれ意味が違ってくるのではないでしょうか。“レガシー”は良くも悪くも過去から受け継いだものという意味の遺産。
アメリカのトランプ大統領が廃止しようとしている「オバマケア」も“レガシー”といえます。オバマケアとはオバマ前大統領が推進した医療保険制度改革法の通称。今まで医療保険制度に入れなかった貧困層にはメリットはありますが、すでに民間保険に加入していた国民にはあまりメリットが感じられず、反対意見も多いようです。
IT関連の仕事に就いている方にとっては“レガシー”はネガティブなイメージの方が強いかもしれません。「レガシーシステム」というと古くなったコンピューターシステムや技術のこと。日々新しいシステム、技術が出てくるIT業界では“レガシー”は時代遅れのものという意味合いが強いといえます。
レガシーが使われるようになったきっかけ
“レガシー”は英語legacyのカタカナ語ですが、この“レガシー”を普及させたのはスバル(SUBARU,旧富士重工業)といえるでしょう。『スバル・レガシィ』は1989年に初代が発売、現在(2018年)は6代目が発売されている人気車種。日本国内外で人気があり、スバルを支えてきた車種ですね。“レガシー”の意味はわからなくても言葉を見聞きしたことがある人が多いのはスバルのおかげかも。
レガシーとヘリテイジの違いは?
遺産という意味の英単語には“レガシー”(legacy)の他にもいくつかあります。代表的なものがヘリテイジ(heritage)。ヘリテイジは「world heritage(世界遺産)」、「cultual heritage(文化遺産)」という使われ方から分かるように遺産は遺産でも「文化的に価値のあるもの」に対して使用されます。“レガシー”がネガティブな意味でも使われるのに対して、ヘリテイジは基本的にポジティブな意味でしか使われません。
遺産と訳すことができる単語は他にもたくさん
他にもインヘリタンス(inheritance)という単語も。先祖の遺産、遺産相続などで手にする「お金や土地などの遺産」は“レガシー”を使うこともできますが、このインヘリテイジを使って表すこともできます。
遺贈、形見を意味するbequestや、多額の財産を意味するfortune、法的な意味の財産、estateなど遺産と訳すことができる単語は他にもたくさんあります。“レガシー”(legacy)とスペルが似ているレジェンド(legend)は伝説という意味。
レガシーの関連語
“レガシー”の関連語について見ていきましょう。
オリンピックレガシー
小池都知事が使ったことで“レガシー”は話題になりましたが、IOC(国際オリンピック委員会)が提唱しているテーマでもあります。
オリンピックが開催されることで、競技場や必要な道路、施設などの有形(形があるもの)の“レガシー”、経済効果や教育的影響など無形(形がないもの)の“レガシー”を残すことを推進するというもの。結果がどうあれ、この場合の“レガシー”には悪い意味は含まれません。
レガシーシステム
前述しましたが、「レガシーシステム」は、導入から時間が経ち古くなってしまったコンピューターシステムや技術などを指すIT用語。使い勝手の悪さ、維持費用がかさむなどデメリットが多いものですが、基幹システムの場合はなかなか変更できません。
レガシーコスト
企業等における、過去の取り決めや賠償で支払い続けなければいけない費用のこと。生産に必要な必要経費ではないので、負の遺産といわれることもあります。退職者の企業年金や医療費負担なども「レガシーコスト」。
レガシーキャリア
LCC(格安航空会社)に対して、昔からある航空会社のことを「レガシーキャリア」といいます。JAL(日本航空)やANA(全日空)などがレガシーキャリア。
レガシーを使う際の注意点
“レガシー”を日常会話やビジネスシーンで使う際に気を付けなければいけないことはあるのでしょうか。“レガシー”を使う際の注意点をまとめました。
人には言わない方がいいかも
「レガシーシステム」や「レガシーコスト」など、“レガシー”はネガティブな意味で使われることが多いので注意が必要です。序盤の新人くんと課長さんの会話のように、人に使うと誉めているつもりでも悪い意味で受け取られてしまう可能性があります。
また、カタカナ語全般にいえることですが、相手がその言葉を知らない可能性も。言い直すくらいであれば最初から使わない方がいいのではないでしょうか。
オーストラリアでは
オーストラリアには車の『レガシィ』はありません。厳密にいうと、オーストラリアでは『レガシィ(LEGACY)』は『リバティ(LIBERTY)』という名前で出回っています。理由は定かではありませんが、戦争遺族の支援団体名としてすでに“レガシー”があったのでそれに配慮したとか。
レガシーではなく
いい意味で使われることもありますが、悪い意味での印象が強い“レガシー”。将来、会社の“レガシー”(過去の遺物)になってしまわないように今のうちから励んでいきましょう。どうせならレジェンド(伝説)を目指してみては。