マネーサプライとは、世の中に出回るお金の量のこと
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マネーストックと同義のマネーサプライ。一個人の財布の中身のことではありません。国民と企業が持つお金をすべて合算したもののことを指します。つまり、世の中に出回るすべてのお金を指します。
マネーサプライの意味って?
マネーサプライとは、前項で述べた通り、世の中に出回るお金の量のことです。といっても、漠然としていて分かりにくいので、ここで詳しく見ていきましょう。
基本の意味・定義
マネーサプライとは、国や金融機関が持っている現金は除いた、実際に世の中の経済に出回っているお金の量のこと。毎月、日本銀行が調査をして発表をしている通貨供給量で、経済指標となるものです。
国や金融機関のお金以外というところがポイントで、一般の事業会社や個人、地方公共団体などが保有するお金の量を示します。
マネーサプライの言い換え表現
マネーサプライの英語表記はmoney supply。これの和訳である「通貨供給量」や「マネーストック」とも言い換えられます。money stockの和訳「通貨残高」ともいいます。以前はマネーサプライと呼ぶことが多かったのですが、現在、日銀ではマネーストックを使用するようになっています。
マネーサプライの使い方・例文
マネーサプライはニュースでもよく聞く言葉ですね。経済指標となるものなので、ビジネスマンなら知っておきたいところ。いつ上司や先輩に話を振られても大丈夫なようにしておきましょう。
「景気を見たいならマネーサプライを見ておくと良いよ。」
「デフレが深刻化しているのは、マネーサプライの不足だと考えています。あなたの意見はどうでしょうか?」
「日本銀行は、今回マネーサプライ調整に踏み切った。」
マネーサプライの計算方法
個人や企業の持つお金は、「現金」「預金」「準通貨」「郵便局や信用組合、農協などの預貯金や金銭信託」の4つに細かく分類することができます。この組み合わせによってマネーサプライの計算方法が異なります。
M1:現金通貨+預金通貨
現金通貨と預金通貨の合計。現金通貨とは、日本銀行が発行する日本銀行券、すなわち諭吉さんや一葉さんのこと。または政府が発行する硬貨、つまり100円玉や10円玉などのことです。
預金通貨とは、預金者の要求でいつでも引き出すことができる預金のこと。当座預金・普通預金・貯蓄預金等がこれに当たります。M1は、銀行券を発行した総額と貨幣が流通した総額を合計して求めることができます。
M2:現金通貨+預金通貨+準通貨
M1と準通貨の合計。準通貨とは、解約することでいつでも現金通貨や預金通貨となる金融資産のことです。定期預金・据置貯金・定期積金などがこれに当たります。解約さえすればM1のようなお金になるものを含めているのがM2なのですね。
M3:M2+ゆうちょ銀行や信用組合の預貯金・金銭信託
M2に貯金や金銭信託を加えたもの。ゆうちょ銀行は他の銀行と異なり、企業への融資などを行わない貯金を扱っており、預金と区別されているためこちらに分類されます。その他、信用組合などの預貯金を含んだものがこちらに該当します。
広義流動性:M2+譲渡性預金+ゆうちょ銀行や信用組合の預貯金・金銭信託
広義流動性は、マネーサプライの統計の中で、もっとも広範囲のお金をカバーした指標。譲渡性預金(CD)とは、第三者に譲渡できる定期預金で、自由に発行条件を定めることができる預金を指します。
日本銀行の代表的な指標は、M2+CDの日々の残高の平均値ですが、広義流動性もマネーサプライの重要な指標として用いられており、より実態に即した指標として注目されています。
日本では増加中?マネーサプライの推移からわかること
日本のマネーサプライの現状はどうでしょうか。物価との関係についても含めて確認していきましょう。
日本のマネーサプライ
2018年9月時点で、M2の値は約1,006兆円。こちらは前年同月比から見ると+2.83%の伸び率です。前年度より日本における供給量は増加ペースといえます。
このように、マネーサプライはその年の絶対値を見るよりも、伸び率を見ていくことが重要です。絶対値だけを見ても、それが多いのか少ないのかとらえにくいのです。経済活動が行われている限り、マネーサプライの増加傾向は当たり前のことなので、その増加率で判断されます。
マネーサプライが増えるとどうなる?
不況をどう脱するのかというニュースで、「マネーサプライを増加させるべき」と述べている専門家を見たことがあるかもしれません。これは最もな意見で、企業や個人の所有するお金が増えれば、市場に出回るお金も増えるということです。
ただし、マネーサプライの増加だけで景気が良くなるわけではありません。市場金利が下がり、利子率が低くなると、企業が銀行から融資を受けやすくなります。そうなると企業の動きも活性化され、「景気が良い」状態となり、結果的にマネーサプライが増えていくという見方もできます。
マネーサプライと物価の関係
マネーサプライと物価には大きな関係性があります。マネーサプライが増加すると、物価が上昇し、インフレの要因となります。逆にマネーサプライの減少は、銀行の融資減少や経済全体の通貨量減少を示します。景気にとってはマイナス要因となり、物価が下がり、デフレの要因ともなります。
インフレの顕著な例として、かつてのドイツの経済事情が挙げられます。戦後、ドイツは大きな負債を返済するために銀行が大量の紙幣を発行。結果、マネーサプライは増加したものの、急激な通貨量増加により物価が上がり、ハイパーインフレに悩まされました。
大戦後のドイツのマルク価値は全く安定せず、ある日の卵1個の値段は3200憶マルク。大戦前1マルク=現在の日本円で約2000円だったことからも、いかに物価が高騰していたかがわかります。「トイレットペーパーを買うより紙幣で拭いたほうが安い」といわれるほどマルクの価値は下がってしまいました。
マネーサプライの類語・関連語
マネーサプライやマネーストックの話につきものの類語・関連語も見ていきましょう。ビジネスシーンで登場したときに困らないよう、こちらもチェックしてみてください。
マネタリーベース
マネタリーベースとは、日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。これによってマネーサプライが増減します。
マネタリーサーベイ
マネタリーサーベイは、M3の変動を捉えることを目的に作成されるバランスシート。中央銀行と、預金通貨・準通貨・CDを発行する取扱機関の諸勘定を、統合・調整したものです。
LM曲線
LM曲線とは、マクロ経済学のIS-LM分析で用いられる、貨幣市場の均衡を示す図に使われる曲線です。縦軸に利子率、横軸に国民所得を置いた分析図で、右上がりの曲線です。Lは貨幣の需要、Mは貨幣の供給を示しており、この貨幣市場とIS(財市場)の均衡点を見ることを目的としています。
経済の基盤ともいえるマネーサプライ
経済指標のひとつとして、マネーサプライは非常に重要な値。景気を知るのにも、日銀の動きを知るにも、このマネーサプライは必要不可欠な存在です。
経済について議論したい上司がいつでも話を振ってこれるように、そして経済やお金の動きに敏感でいるために、マネーサプライの伸び率に注目しておきましょう。