払拭とは『すっかり取り除き消し去ること』
上司
新人
上司
『払拭(ふっしょく)』とは『すっかり取り除き消し去ること』という意味の言葉です。「ふっしき」とも読みますが、「ふっしょく」が一般的です。
「払いのける」という意味の「払」と、「汚れを拭く」という意味の「拭」を合わせた言葉で、汚れなどをぬぐい去るや、除き去ってきれいにするといったことを表します。
汚れとはいっても物質的なものではありません。
上司と新人君の会話でわかるように、イメージや精神的なものを指して使う言葉です。「掃除をして部屋を払拭した」といった使い方はできないので注意しましょう。
この記事では、払拭の意味や使い方について紹介します。
払拭には2つの意味がある
『払拭』は基本的に『悪いイメージや精神的に良くない影響を取り去ること』を表しています。取り去る対象によって2つの意味があるので、それぞれ紹介しましょう。
払拭とは『精神的に良くないことを拭い去ること』
『払拭』は『精神的に良くないことがあり、その影響を取り払う』ことを意味します。精神的に良くないものとは、不安な気持ちや疑問、罪悪感などです。これまで抱いていた悪い気持ちやイメージがなくなり、晴れやかになったことを表しています。
そのため、払拭はポジティブなニュアンスを持つ言葉です。主に自分の気持ちについて使われます。
『精神的に良くないことを拭い去ること』という意味で使う例文を見てみましょう。
最近ずっと感じていた不安を払拭することができた。
彼女に励まされ、迷いを払拭できた。
払拭とは『悪いイメージを取り除くこと』
『払拭』には、『これまであった悪いイメージや風習、習慣などを取りのぞく』という意味もあります。こちらも、これまでにあった悪いものが取りのぞかれて晴れやかな状況になったという喜ばしいニュアンスが込められています。
『悪いイメージを取り除くこと』という意味の例文は次の通りです。
第一印象で与えてしまった悪いイメージを払拭したい。
潔白を証明したものの、一度出た疑惑はなかなか払拭できない。
このように、『払拭』が持つ2つの意味には、どちらもマイナスなものを取り除くという特徴があります。したがって、プラスのものを取り除くなど、逆の場面で使うのは間違った使い方です。
払拭とは、良くないものを取り除いてプラスになるという意味だと覚えておくといいでしょう。
払拭の英語表記は『wipe out』
払拭の英語表記は『wipe out』です。英文では『sweep away』、『get rid of』など、文脈や英語のニュアンスによって違う表記も使われています。
『wipe out』を使った英語の例文を紹介しましょう。
The young politician is trying to wipe out political distrust.
その若い政治家は、政治に対する不信感を払拭しようと試みている。
『sweep away』を使った英語の例文は次のとおりです。
Her smile always sweeps away our worries.
彼女の笑顔はいつも私たちの心配事を払拭してくれる。
最後に、『get rid of』を使った英語の例文を紹介します。
In order to win the confidence of others, let’s get rid of the company’s rumors first.
信用を取り戻すためには、まず初めに会社の噂を払拭しよう。
払拭と一掃の違い
払拭と似た言葉に「一掃」があります。一掃は「一度にすっきりと拭い去る」という意味です。一掃は何も残さずすべて拭い去るというニュアンスがあります。
また、払拭が不安や心配など精神的なものやイメージといった抽象的なものを対象にするのに対し、一掃は具体的な対象に対しても使われます。
次の例文を見てみましょう。
閉店のため、在庫一掃セールを行う。
古い経営陣を一掃する。
どちらも具体的な対象があり、それを取りのぞくことを表しています。これら例文の「一掃」を『払拭』に置き換えることはできません。払拭は、具体的な対象には使えないことがわかります。
逆に、『払拭』を使う場面では一掃に置き換えることは可能です。
例えば、
◾️不安な気持ちを払拭する → 不安な気持ちを一掃する
◾️悪いイメージを払拭する → 悪いイメージを一掃する
と置き換えても間違いにはなりません。
また、一掃は「走者一掃」など、野球で出塁中のランナー全員をホームインさせた場合にも使われます。
払拭の使い方・例文
払拭は日常的にも使われる言葉ですが、ビジネスの現場ではどのように使われているのでしょうか。例文を見ていきましょう。
上司
先輩
払拭は抽象的な事柄について使おう
払拭は日常会話で使うことはあるものの頻繁に使うほどではなく、あまりなじみのある言葉ではありません。それにともない、言葉の正確な意味をよく知らない人もいるでしょう。精神的なものなど抽象的な事柄に使う言葉ですので、間違わないように注意してください。一掃との違いを理解し、ビジネスの現場でも正しく使っていきましょう。