臨むとは「目の前にする」という意味
新人
上司
新人
臨がつく言葉にはほかに、臨月や臨終、降臨、君臨などがあります。言葉を並べてみても臨の字の共通点をみつけるのは難しいですね。
臨という漢字と臨むについて、くわしく学んでみましょう。
臨むの意味
臨むは「目の前にする」というニュアンスの言葉ですが、ほかの意味ももっています。
まずは、臨むのくわしい意味からみていきましょう。
・風景、場所、機会、事態などに直面する
・出かける、参加する(特に公の場などに)
・ふさわしい態度で人に対する
意味がひとつでないのはちょっとややこしいですね。後ほどそれぞれの意味での使い方を紹介します。
臨むの語源・由来
「臨」は「臣」「人」「品」という3つの漢字を組み合わせて作った会意文字です。会意文字は、2文字以上の漢字を合体させて作った漢字のこと。
「臣」「人」「品」は象形文字です。象形文字は、ものの形から作られた漢字のこと。それぞれ何を表す漢字なのかみてみましょう。
漢字 | もとになるもの |
臣 | 伏した目 |
人 | 横からみた人 |
品 | いろいろな器物(器物は道具のこと) |
「臣」「人」「品」を組み合わせて「さまざまな特徴をもつ器物」を「伏した目で上から」「人がみる」という意味を表したものが「臨」です。
「臨」は「見下ろす」「身分の高い者がその場に出向く」「目の前にする」などの意味をもつ漢字になりました。
冒頭で紹介した臨月や臨終は、その事柄が目の前に迫っていること。降臨や君臨は、身分の高い人が下々を見下ろすというニュアンスをもっています。
臨むの読み方
臨むは「のぞ(む)」と読みます。「のぞ(む)」は「臨」を訓読みした読み方です。
「臨」は音読みすると「リン」。「リン」を用いる言葉には「降臨」や「臨時」などいろいろな言葉がありましたね。
臨むの使い方・例文
臨むには複数の意味があります。臨むの使い方を例文でイメージしてみましょう。
新人
ホテルの目の前に向かい合う形で湖があるという意味。
社長
未曽有の危機に直面しているという意味。
先輩
試合に参加するという意味。
上司
厳しい態度で新人君に対するという意味。
臨むの類語
臨むが表す意味はひとつではありません。単語ひとつで臨むのニュアンスをすべてカバーできれば便利なのですが、残念ながらそのような類語はないようです。
言い換えしたいときには、次の語句を使ってください。
際する:ある出来事や事態に出会う
当面する:直接向き合うこと。目の当たりにすること
参加:特定の目的をもつ集まりに、メンバーとして加わること
参列:式や行事などに出席すること
正対:真正面から向かい合うこと
伝えたいニュアンスに近い用語を選べるようになりましょう。
臨むの対義語は「背にする」
「向かい合う」という意味で臨むを使う場合「背にする」が対義語になります。
「背にする」は、そのものが背中にくるようにするという意味です。たとえば「崖を背にして建てられた家」などのようにして使います。
「臨む」と「望む」「挑む」の違い
「望む」や「挑む」は、臨むと意味を間違えやすい言葉です。それぞれの意味と臨むの違いを確認しましょう。
「臨む」と「望む」
「臨む」を「向かい合う」という意味で使うとき、「望む」は似たニュアンスなので間違いやすいです。
「望む」の意味は「遠くを眺めやる」「こうあってほしいと願う」。
臨むには「直面する」という意味があるので、音が聞こえたり匂いが感じられたりするほど対象物との距離が近く、臨場感があるときに使います。たとえば「海に臨む」なら、すぐ目の前に海があるという意味です。
一方、望むは「眺める」という意味合いが強くなり、遠くにあって全体を一望できるものに対して使用します。「海を望む」なら、視界の先に広がった海を見渡すというニュアンスです。
「海に臨む」と「海を臨む」で、使用する助詞が「に」と「の」で異なるので間違えないように注意。
「臨む」と「挑む」
「挑む」とは、「競争を仕掛ける」や「挑戦する」という意味。
「面接に臨む」と「面接に挑む」は、どちらも間違いではありませんが、意味合いが変わってきます。
臨むは何かに直面している、参加するという意味ですが、そこに「挑戦する」というニュアンスはありません。
「面接に臨む」なら単純に面接に参加するという意味になります。
一方、「面接に挑む」なら「やってやるぞ」と挑戦的な気持ちをもって面接を受けるというニュアンスになります。
立ち向かうという意志を強調したい場合には「挑む」を使いましょう。
臨むの英語表現
臨むを英訳するときには次の語句が使えます。
look onto:面する
meet:当面する
attend:臨席する
ちなみに臨むの対義語の「背にする」は「to turn one’s back to」で表現できます。
臨むを使って自分の知識にしよう!
臨むはシチュエーションに合わせて最適な意味を選択しないと、文に込められたニュアンスを正しく理解できなくなります。
バラバラに暗記するよりは、意味と使い方をセットで頭に入れるほうが覚えやすいです。
また、臨むと間違いやすい「望む」と「挑む」についても、せっかく勉強したのだからビジネスシーンで使ってみましょう。
実際に使用することで、言葉がただの情報ではなく使える知識にこなれていきますよ。