「粛々と」の意味は「真剣+静か」
法令にのっとって粛々と進めている
「粛々(しゅくしゅく)と」は、政治家の人が好んで使う表現。国会の答弁や関連のニュース、記事などでよく使われています。
「粛々と」は「厳かな様子・態度」のことですが、簡単にいえば、「真剣+静か」。何か神聖なものを前にして心を引き締めているような様が「粛々とした」態度です。
「粛々」が含まれる四字熟語
「粛々」は元々中国由来の表現。元々は鳥の羽ばたき音を表していたものが、いつしか現在の意味になったといわれています。
鞭声粛粛
「鞭声粛粛(べんせいしゅくしゅく)」は相手に気づかれないように馬に静かに馬に鞭を打つ様を表した四字熟語。
戦国武将の上杉謙信が武田信玄との戦で先手を打つために、夜に馬で河を渡ったことを詠んだ歌、「鞭声粛粛夜河を渡る」が元とされています。
正々粛々
「正々粛々(せいせいしゅくしゅく)」は、昭和の初めに国会で政治家が発言したものが最初。語感がいいせいなのか、歴代の大臣や総理大臣に受け継がれているのか、理由はわかりませんがその後も度々使われています。
「正々粛々」と書きましたが前半部分の漢字は不明。「整々」や「静々」と字を当てる場合もあります。意味は「粛々」と同じのようですが、政治家以外の人が使うのはおすすめしません。
「粛々と」の使い方・例文
「粛々と」の使い方を例文を通してみていきましょう。
・開催に向け粛々と手続きを進める ・粛々とした態度で式に臨む ・粛々とした対応が求められる
上記はどれも、真剣な面持ち・態度で物事に臨むことを表しています。「真剣+静か」なので、どんなにまじめであっても「粛々とコーラスを歌い上げる」といった使い方はできません。
「粛々と」には「息をひそめる」ような静かさがあることを忘れないようにしましょう。
「粛々と」は上から目線?
政治家の「粛々と」を含んだ発言が「上から目線だ」と非難され、発言を訂正するなんてことが数年前にありました。
記事にも取り上げられたことがあるので知っているという人もいるかも。非難したのも政治家であり、表面的な言葉以上の意味合いが含まれているのかもしれませんが、「粛々と」には「上から目線」といった意味はありません。
「粛々と」の類語
「粛々と」と似た語感の言葉に「淡々(たんたん)と」や「黙々(もくもく)と」があります。これらは意味合いも近く、場合によっては同じような使い方が可能。とはいえ、違う言葉なので微妙な違いもあります。例文を通して確認していきましょう。
・粛々と準備していく ・淡々と仕事をこなす ・黙々と作業を進める
一言で説明すれば、「淡々と」は「あっさり」。「黙々と」は「だんまり」。
「しつこさ」や「こだわり」がなく、「あっさり」と物事を行う様子が「淡々と」、文字通り「必要以上話さない」様子が「黙々と」です。
同じように集中した作業でも、「粛々と」と表すか、「淡々と」、「黙々と」と表すかでは印象が全く違いますよね。なぜ政治家が「粛々と」が好きなのかわかる気がします。
「粛々と」の英語表現
「粛々と」は英語では「solemnly」と訳すことができます。
The ceremony was performed solemny セレモニーは粛々と執り行われた
日本の政治関連の記事の英訳では「粛々と」が「動じない」「きっぱりとしている」といった意味の「firmly」に置き換えられていることもあります。
ニュースで役立つ
「粛々と」は自分で使う機会はあまりないかもしれませんが、政治関連のニュースや記事で見聞きすることは多いでしょう。その時に「粛々と」の詳しい意味や背景などを知っておくと、政治の見方が変わってくるかも。