カニバリゼーションとは『共食い』のこと
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カニバリゼーションとは、同じ会社同士やグループ企業同士の商品で、売り上げの奪い合いをしてしまう状態を指します。
マーケティング分野では当たり前に使われる言葉ですが、それ以外の分野でも耳にすることがあるので覚えておきたいものです。
ここでは、カニバリゼーションという言葉の意味のほか、事例や対策についても簡潔にまとめているので、これを機にしっかり学んでいってください。
カニバリゼーションの意味をチェック
カタカナ用語は、正しい意味をきちんと理解していなければ会話の中で正しく使えません。まずは、ビジネス用語としての意味と英語表現についてチェックしておきましょう。
ビジネス用語のカニバリゼーション
ビジネス用語としてのカニバリゼーションを簡単な言葉で表現すると『共食い』です。わかりやすく説明すると次のようになります。
たとえば、Aというメーカーが硬水のミネラルウォーターを販売していたとします。そこへ新商品として軟水のミネラルウォーターを販売するようになったところ、軟水の売り上げが激増し、硬水の売り上げが激減してしてしまいました。
このように、片方の売り上げが伸びることで、もう片方が減ってしまう状態をカニバリゼーションといいます。
また、ビジネスシーンでは『カニバリ』と略語で使われることも多いです。そのほか、類語としては『自社競争』が挙げられますが、単純に『シェアの奪い合い』や『共食い』などもあてはまります。
戦略的カニバリゼーションとは?
カニバリゼーションは、『意図せず起こってしまう場合』と『あえて起こす場合』の二通りがあります。後者を『戦略的カニバリゼーション』といいます。
こちらは、あえて自社競争をさせ、双方の市場シェアを強固にしようとする手法です。戦略的にカニバリゼーションを起こし、自社シェアを固めることで、他社の参入を防ぐ効果もあるとされています。
具体例:
ミネラルウォーターは、硬水・軟水が好きな人に分かれます。
メーカーAで硬水しか販売していない場合、軟水が好きな人はほかのメーカーのミネラルウォーターを購入します。
しかし、同じメーカーが硬水も軟水も販売すれば、どちらの顧客も獲得でき、売り上げを伸ばせる結果となります。
カニバリゼーションの語源は生物学の『共食い』
カニバリゼーションは、もともと生物学分野において『共食い』を意味する言葉でした。自社同士の市場シェアの取り合いが、この同族同士の共食いを連想させることから、マーケティング用語としても広く使われるようになりました。
そして、カニバリゼーションの英語表現は『cannibalization』です。英語の場合も日本語と同じように、生物学での『共食い』と、マーケティング分野での『競合現象』『自社競争現象』の意味で使われています。
また、『共食いをする』『引き抜く』『~の売り上げを食う』などの意味をもつ『cannibalize(カニバライズ)』という単語もあるので、マメ知識として覚えておくと便利です。
カニバリゼーションの事例3つ
言葉の意味がわかっても、まだはっきりとしたイメージがもてない人もいるでしょう。そこで、ここではわかりやすい事例を用意したので、状況を想像しながらチェックしてみてください。
事例①:コンビニ
Aというコンビニは、大きな道路を挟んで向かい合わせの状態で店舗があります。この道路には中央分離帯があるため、反対車線側の店舗に入ろうと思うと、Uターンしてこなければなりません。
しかし、両側に店舗を置くことで、どちらの道路を走っている車もスムーズに入りやすくなります。これはまさに、戦略的カニバリゼーションといえます。
事例②:絆創膏
絆創膏を製造しているメーカーBでは、小さなキズに無駄なく貼れるSサイズから、大きなキズにも対応できる特大サイズまで、幅広くサイズ展開をしています。さらに、水に強い防水タイプもラインナップされています。
そして、どのタイプも『肌へのやさしさ』『耐久性』は同じにしているため、「このサイズがないから他のメーカーのものを…」といった顧客離れを防止しています。これも、事例①と同様に戦略的カニバリゼーションです。
事例③:ビールvs発泡酒
Cという飲料メーカーでは、長年にわたり缶ビールを販売していました。そして、この夏には『ビールの味やのどごしとほとんど変わらない』という特徴をもった発泡酒の発売を開始しました。
発泡酒は、ビールに比べると価格も安く、人々が手に取りやすいため、売り上げは上々。これまで同社のビールを購入していた人が「ビールと変わらない飲み心地なら安い発泡酒でいいや」という感覚になり、ビールから発泡酒に切り替える状況となりました。
その結果、発泡酒の売り上げは伸びたものの、ビールの売り上げが減少しました。これは、事例①・②とは違い、意図しないカニバリゼーションとなります。
カニバリゼーションの問題点と対策
カニバリゼーションは、意図しない場合には絶対に起こってほしくない現象です。しかし、戦略的カニバリゼーションの場合でも、すべて成功するわけではありません。そこで、ここでは、起こりうる問題や対策方法について簡単にまとめました。
問題点
企業の売り上げを伸ばすには、他社に勝たなければなりません。しかし、カニバリゼーションが起きていると、まずは社内で売り上げのバランスを考えたり、差別化を図ったりしなければならなくなります。
その際、労力や時間を使うことになり、当然のことながら、経費もかかります。これでカニバリゼーションの解消が図れなかった場合には、費やした時間や経費が無駄となり、最悪の場合、経営不安におちいります。
対策
意図しないカニバリゼーションを防ぐために必要なのは、商品を新規開発する際、綿密な市場調査をし、既存商品との差別化を図ることです。
また、起きてしまった場合には、すぐに量産計画を見直し、リニューアルを検討しましょう。そして、発売時には「ここが変わりました!」といった明確な違いが消費者に伝わるような工夫が必要です。
カニバリゼーションの反対語は?
カニバリゼーションの反対語としては、『互いに影響して効果が高まること』を意味する『シナジー』があてはまります。しかし、この場合は、『意図しないカニバリゼーション』で、戦略的カニバリゼーションで成功すれば、『シナジー効果』を得たことになります。
また、シナジーの反対語として『アナジー効果』があります。これは、『たくさんのことを一つの企業が行って、効果が落ちる』といった意味をもつカタカナ用語です。そのため、意図しないカニバリゼーションが起きた場合には、『アナジー効果があった』ともいえるでしょう。
なお、シナジーについては次の記事でもわかりやすく解説しているので、理解を深めるためにもあわせて読んでみてください。
シナジーの意味とは?使い方・例文からビジネスにおけるシナジー効果までわかりやすく解説します
カニバリゼーションの関連語
カニバリゼーションには、セットで覚えておきたいカタカナ用語がいくつかあります。ここではよく耳にする言葉をピックアップして紹介します。
ドミナント戦略
フランチャイズなど、チェーン展開をしている店舗では、特定の地域に集中して出店し、その地域でのシェアを拡大しようとする手法をとる場合があります。これを『ドミナント戦略』といいます。
意図的に同一企業との競争を発生させることになるため、戦略的カニバリゼーションが起こった状態といえます。
キーワードカニバリゼーション
さまざまな情報が飛び交うインターネットの世界では、『キーワードカニバリゼーション』という言葉が目につきます。
Googleで上位にランキングされるため、Webサイトに記事を掲載する場合、SEO対策としてキーワードになる言葉を使って作成をします。
しかし、一つのサイトの中で、検索エンジンがどのキーワードの検索順位をランキングしていいか混乱してしまいます。その結果、同じサイトの違うページがいくつもランキングに載ってくることがあります。これをキーワードカニバリゼーションといいます。
この状態になると、評価や閲覧実績が分散するため、ランキングアップしにくいとされています。
カニバリゼーションの使い方・例文
カタカナ用語は間違った使い方をすると「知ったかぶり」に見え、ちょっと恥ずかしい思いをしてしまいます。ここでは、カニバリゼーションの例文をいくつか用意したので、会話で正しく使えるようチェックしておきましょう。
上司
先輩
意図しないカニバリゼーションには適切な対策をしよう
戦略的カニバリゼーションが成功すると売り上げ増加につながりますが、意図しない場合は売り上げが減るだけでなく、経営が悪化する場合もあります。
「これはカニバってるのでは?」と気づいたときは、早急に対策を練るようにしましょう。