「お手数をおかけしますが」は目上の人や上司、取引先に使える依頼やお願いの言葉
ビジネスシーンで多用される「お手数をおかけしますが」というフレーズは、相手へお詫びと感謝の気持ちを伝えるための表現です。
相手を敬う尊敬語表現なので、目上の人や上司、取引先に対して依頼やお願いの言葉として使用できます。
何かを依頼する際、単に「お願いします」と言うよりも「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」と一言付け加えるだけでより丁寧な印象になるため、ビジネスシーンのみならず日常生活でも幅広く使うことができます。
ですが依頼の内容によっては謝罪の意を込めなければ失礼に当たる場合もあるため、類語を身に付けておき、その場面やシチュエーションに応じたフレーズを選択できるようしておくと安心です。
・ご迷惑をおかけしますが
「お手数をおかけしますが」の意味や注意点
「お手数」の「お」は尊敬を表す接頭語、「手数」は何かを行うのに要する動作・細工・作業などの数や、自分以外の第三者のためにことさらにかける手間という意味です。
「おかけします」の「おかけ」は「かける」を「お〜する」と表現した謙譲語で、あることや物のために時間・費用・労力など費やす・負担をかけることを示しています。
そのため「お手数をおかけしますが」は、相手に手間をかけさせる・負担をかけることに対する恐縮の念を込めた表現となります。
また一見良さそうに聞こえる「お手数をかけさせますが」という表現にも注意が必要です。前述の通り「お手数」は相手の手間や労力を意味しています。したがって「お手数かけさせますが」というと、自分が相手に「お手数」を要求をしているという意味合いになってしまいます。
ほんの少しの違いで意味が真逆になってしまうため、十分注意して正しい使い方を心がけましょう。
「お手数をおかけしますが」はクッション言葉としての役割も持っている
「お手数をおかけしますが」というフレーズは、ビジネスシーンでは依頼やお願いをする場面以外でもクッション言葉として多く活用されています。
「クッション言葉」とは、相手に何かをお願い・お断りしたり異論を唱える場合など、きつくなりがちな言葉の前に添えて使用する言葉です。 クッションという名の通り、言葉の衝撃をやわらげてくれる働きをもつ言葉です。他のクッション言葉には「恐れ入りますが」「申し訳ありませんが」などがあります。
実際には相手に負担がほとんどかからない内容でも、ビジネスシーンでは「お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願い致します」などと使うことが多くあります。
クッション言葉は丁寧で優しい印象を相手に与える効果があるため、ビジネスや人間関係をスムーズに進めることにも役立ちます。ぜひ身に付けて、状況に応じて活用できるようにしましょう。
「お手数をおかけしますが」は自分に対して使えないため注意が必要
「お手数おかけしますが」は目上の相手に対して使う尊敬語のため、自分自身の行動に対しては使用できません。
例えば「お手数をおかけしますが、本日中に連絡いたします」といった表現は間違いとなります。この場合「自分が相手のために手間をかける」という意味合いに捉えられるため、非常に失礼な表現となります。
自分の行動に対してクッション言葉を添える場合は、「恐れ入りますが」や「お急ぎのところ申し訳ありませんが」などを使うと良いでしょう。
「お手数をおかけしますが」の使い方
「お手数をおかけしますが」というフレーズは、お詫びと感謝を伝える際に使う場合とクッション言葉として使う場合があります。ただし使い方としては、必ずしもどちらかだけの役割に分けられるものではありません。ここではどのようなシーンで使い分ければ良いのか、例文をあげてご紹介します。
ビジネスメールでも使える「お手数をおかけしますが」を使用した例文
「お手数をおかけしますが」は、会話内だけでなくビジネスメールでも使用できる表現です。
ビジネスシーンでは依頼や交渉をメールで行うことは少なくありません。ですがメールでのやりとりは、マナーや書き方を誤ってしまうとぶしつけな印象を与えてしまう場合も。そのためできるだけ相手に良い印象を与え、スムーズに自分の要望や依頼を受けてもらうためにも「お手数をおかけしますが」を上手く使いこなせるようにしておきましょう。
・お手数をおかけしますが、ご返信をお待ちしております
相手から返信が欲しいときに「お手数をおかけしますが」を結びの言葉として使う例文です。
「お手数をおかけしますが、ご返信をお待ちしております」
目上の人やクライアントに対して「返信をお願いします」「返信してください」などと伝えてしまうと高圧的で失礼な印象に捉えられてしまいます。そこで「お手数をおかけしますが」を冒頭に付け加えることで、クッション言葉の役割を与えながら「お手間をかけて申し訳ない」という気持ちを丁寧に表現できます。
・お手数をおかけしますがご確認のほどよろしくお願いいたします
相手に確認を依頼する際に「お手数をおかけしますが」を結びの言葉として使う例文です。
「お手数をおかけしますがご確認のほどよろしくお願いいたします」
この表現はクッション言葉の役割と「確認をした上で、返信・返答をお願いします」という2つの意味が含まれています。
「お手数をおかけしますが、ご返信をお待ちしております」と同様、返事を催促するビジネスメールの結びの言葉として多く使われています。
相手への催促をやんわりと伝える表現なので、取引先などの社外宛に限らず上司や目上の人への社内宛のメールにも使えます。ぜひ覚えて活用してみましょう。
・お手数をおかけしますが何卒お願いいたします
相手に依頼やお願いをする際に「お手数をおかけしますが」を結びの言葉として使う例文です。
「お手数をおかけしますが何卒お願いいたします」
依頼の内容によりますが「どうぞ宜しくお願いいたします」より、「お手数をおかけしますが何卒お願いいたします」と表現すると、相手に負担をかけることが申し訳ないという気持ちが強調された丁寧な言い回しとなります。
クッション言葉としてよりも、本来の意味である相手への恐縮の意味合いで使われる表現の一つです。
知っておくと便利!「お手数をおかけしますが」を使ったその他の例文
「お手数をおかけしますが」は、使い方次第でいろいろなシチュエーションで活用できるフレーズです。上記以外の例文も合わせてチェックしてみましょう。
これは自分が相手に何かを頼む際はもちろん、相手から自主的に「これやっておくよ」などと助けられた際にも返答として使うことができます。その場合は前後にお礼の言葉を一言プラスすると、より印象アップに繋げることができるでしょう。
「お手数ではございますが、○日までにご提出をお願いします」
「お手数をおかけしますが」は、より丁寧に「お手数をおかけ致しますが」や「お手数ではございますが」に言い換えてもOKです。ただし使う相手や文章のバランスによっては硬すぎる・まわりくどい印象になる場合もあるので、状況に合わせて使い分けできるようにしましょう。
「お手数をおかけしますが」の類語(言い換え表現)
「お手数をおかけしますが」は相手に何かを依頼・お願いする際に使うフレーズですが、同じような意味を持つ言葉もいくつかあります。
「ご面倒をおかけしますが」
「お手数をおかけしますが」に似た表現に「ご面倒をおかけしますが」というフレーズがあります。
「ご面倒をおかけしますが、ご返信をお待ちしております」
「ご面倒をおかけする」は「お手数をおかけする」時と同様、相手に何かお願いや依頼をする際に使用します。「お手数」と同じく「ご面倒」は尊敬を表す接頭語が付いているため、目上の人やクライアントに対して使用できる表現です。
「お手数をおかけしますが」と比べ、使い方と意味合いに大きな違いはありません。ですが一般的には「お手数をおかけしますが」の方が、丁寧な表現として使われる場面が多いです。
「ご迷惑をおかけしますが」
「お手数をおかけしますが」に似た表現に「ご迷惑をおかけしますが」というフレーズがあります。
「ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承下さいますようお願いいたします」
「迷惑」を使った敬語表現は、自分の行動や状況などが相手に不利益・悪影響・不快感を与えてしまうという意味合いで使われます。そのため「お手数をおかけしますが」と比べると感謝の意味は含まれず、主に謝罪やお詫びの際に使用する表現です。敬語表現であるため、クライアントや上司に対しても使用できます。
すでにかけてしまった迷惑に対する謝罪はもちろん、例文のように将来迷惑をかけてしまうかもしれない場合にも使えるので、相手との関係や状況に応じて使い分けましょう。
また「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」との使い方は間違いになるので注意が必要です。この表現は「不利益や不快感を生じさせてしまいますが、よろしくお願いします」といった、迷惑を押し付けてしまうニュアンスになります。この場合は「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」と伝えたほうが適切です。
「お手数をおかけしますが」の英語表現
「お手数をおかけしますが」を英語で表現すると
となります。
「お手数をおかけしますが」を使った例文です。
⇒「お手数をおかけしますが、ご返信をお待ちしております」
・I am sorry for troubling you but, please check.
⇒「お手数をおかけしますがご確認のほどよろしくお願いいたします」
・I am sorry for troubling you but, I am counting on you.
⇒「お手数をおかけしますが何卒お願いいたします」
英語表現も覚えておくと安心です。
「お手数をおかけしますが」を正しく使って依頼しよう
ビジネスシーンでは相手に何かを依頼する場面は非常に多いもの。多かれ少なかれ、相手に手間をかけてしまうことは避けられません。そんなとき相手への感謝とお詫びの気持ちを表現する「お手数をおかけしますが」を上手に使いこなせれば、相手との関係を良好に保ちながら自分の要望や依頼をスムーズに受けてもらえるでしょう。
また「お手数おかけしますが」は、相手への気遣いを伝える表現でもあるため、社外での依頼や交渉だけでなくあらゆるシーンで万能に使えるフレーズです。ぜひマスターして、マナー上手なビジネスパーソンを目指しましょう。