「ひとえに」は”いちずに”や”もっぱら”などの意味を持つ言葉
部下
上司
部下
「ひとえに」とは、“ひとつのことを『ひたすら』打ち込む、あるいは行う”意味の言葉です。別の表現をするなら、「一途に」や「もっぱらに」があります。
若年層にはあまり使われないフレーズですが、年配の人やビジネスシーン、式場や披露宴を始めとしたフォーマルな場所で使われています。必要とされるシチュエーションで正しく使用するために、適切な使い方や類語についても理解していきましょう。
・一途に
・もっぱら
・一心不乱に
・まったくもって
「ひとえに」の漢字表記は「偏に」?「一重に」?
「ひとえに」を漢字で書くと「偏に」となります。「偏」は「かたよ(り)」とも読み、”一方に偏る(片寄る)”意味をもちます。「ひとえに」を「一重に」と誤表記するケースがありますが、こちらの意味は”重ならない”であり、「偏に」とは意味がまったく異なります。
「ひとつのことにただひたすら」の意味である「ひとえに」は、言い換えれば”一方に偏って”とも受け取れる言葉です。「ひとえに」の言葉を示す意味があるからこそ、「偏に」が正しい漢字表記になります。
上司
「ひとえに」の使い方・例文
日常会話やビジネスシーンよりも、披露宴やおめでたい席で使用されるケースが多い「ひとえに」。社会人になれば使用する機会も増えるため、新社会人のために「ひとえに」の使い方を例文でご紹介しましょう。
「ひとえに」を使った例文
「ひとえに」を使うシチュエーションは、個人や全体に向けて使用します。例えば結果に対して、「これもひとえに~」と頑張りや努力を褒めたたえるときに使います。主に相手に向けて使用する言葉のため、自分に使用してしまうと”自分のおかげ”と押しつけがましくなります。
ここでは、ビジネスシーンやフォーマルな場での「ひとえに」を使った例文をご紹介します。
「ひとえに」と「おかげ」を使った例文
課長
部下
課長
部下
誰か、または周りに対して感謝を述べた使い方です。自分自身やチームの成功、好結果を報告するときに使えます。
「ひとえに感謝」を使った例文
部下
課長
先輩
後輩
「ただただ、ひたすら」感謝している表現です。先述の「ひとえに~おかげ」よりも簡略化して感謝を強調する表現です。明確に特定の人物や団体に向けていうなら、「ひとえに~おかげ」を使用するほうが感謝の気持ちを伝えやすいです。
「ひとえに」と「賜物」を使った例文
課長
先輩
先輩
後輩
今の自分の姿、立場は周りの尽力、支えがあるからこそだと感謝を述べている使い方です。指導や支援を贈り物=賜物と表現し、その気遣いに敬意を払うお礼の表現です。
「ひとえに」と「お力添え」を使った例文
課長
部下
先輩
新人
特定の誰かや、周りの助力に対して感謝を述べる表現です。助けがあって物事の好転を明確にしたいときに使用します。
「ひとえに」の類語
ここでは「ひとえに」の類語についてご紹介します。類語のなかには、「ひとえに」よりもシンプルでわかりやすい表現もあります。相手や状況に応じて、適切な類語を使用していきましょう。
ひたすら
ひとつの物事を行っている様子を表現している言葉です。形容動詞と副詞のふたつの意味をもち、どちらも「もっぱらに」と形容される様子です。ちなみに「もっぱらに」とは「専らに」と書き、「専念」や「専心」を意味する言葉です。「ひたすらに」を含め、差し替えて使い分けられます。
新人
上司
一途に
「一途」の読み方は「いちず」です。「途」は「道」を示し、文字どおり一本の道を意味する言葉です。物事を一本道に例え、ひたすらその道を進んでいる様子を「ひたすら」と表現しています。
先輩
後輩
部下
上司
一心不乱に
「いっしんふらん」と読み、「一つの心に乱れがない」様子をあらわす言葉です。すなわち、これをひとつの言葉にして「一心不乱」とする4字熟語です。ひとつの物事に専心、専念、一途に集中している様子を表現しています。
部下
上司
まったくもって
漢字で「全くもって」と書き、「まったく」を強調することで”すべてにおいて~”と全肯定している表現です。
先輩
後輩
「ひとえに」の関連語
ビジネスシーンで使用されている「ひとえに」は、古くから古典資料でも使われている表現です。ここではその一部を関連語としてご紹介します。
「偏に風の前の塵に同じ」
鎌倉時代の軍記物語である「平家物語」の有名な冒頭部分、”祇園精舎の鐘の声~”の一節でも使われています。「風の前の塵」とは、「風が吹いて散っていく塵(ちり)」のように、物事がはかなく、危険が迫っている様子をあらわした故事です。
どんなに強くて勢いがあるものでも、その隆盛は永遠には続かず、”偏に風の前の塵に同じ(すべてはかないもの)”であると詠っています。
ひとえにここゆいづ ねの湯 対山荘
「ひとえにここゆいづ」には、”湯も心もおもてなしの気持ちで溢れています”の意味を込めた”造語”です。この言葉は、静岡県伊豆市にあるホテル『修善寺温泉 ねの湯 対山荘』のキャッチフレーズとして使用されています。
言葉の意味には、”ただ、山に対して在る宿”と”ただ、向き合うこと”の2つの意味が込められており、修善寺ならではの優しさとおもてなしをあらわしています。
『じゃらん』や『ぴあ』の旅行サイトでもこのキャッチフレーズがクローズアップされています。ホテル名の一部と勘違いされていますが、それだけ印象的な言葉であることをうかがわせています。
「ひとえに」の英語表現
「ひとえに」はビジネスシーンにおいても使われる可能性のある表現です。英語で表現する機会にそなえて、事前にメールや会話での使い方を身につけておくと安心できます。
at once
と表現できます。
「ひとえに」の英語表現を使用した例文はこちらです。
⇒ひとえに課長のご指導のおかげです!
・All of this is thanks to your cooperation all at once.
⇒これもすべて、ひとえにみなさんが協力してくれたおかげです!
・All at once thank you for your cooperation this time.
⇒このたびのご協力、ひとえに感謝いたします。
・All at once this is the gift of the section manager’s guidance.
⇒ひとえに課長の日ごろのご指導の賜物です。
・This also is all at once thanks to Mr. ○○’s help.
⇒これもひとえに○○さんのお力添えのおかげです!
「ひとえに」の正しい使い方をマスターしよう!
「ひとえに」は、「一重」と間違われやすい同音異義語です。他人への感謝や自分への努力を”ひたすらに”表現、または行うのは日常生活でもビジネスシーンでもとても大切です。日ごろの感謝や努力を忘れないためにも、言葉の意味を正しく理解してひとえに邁進しましょう!