失業保険は会社を辞めたり、勤めている会社が倒産した時に役立つ制度です。ただし、失業保険は自己都合退職の場合、受け取りまでに時間がかかり、もらえる総額が少なくなることもあります。やり方次第でもらえるタイミングや額が変わることもあるため、できるだけ損せずに失業保険を受け取る方法をチェックしてみましょう。
失業保険とは
失業保険とは、正確に言うと雇用保険の基本手当のことを指しています。失業給付と言われることもあります。雇用保険の制度で会社を辞めて次の会社に入るまでの失業期間にもらえるお金だから、通称「失業保険」となっているようです。ただし、失業期間と言っても「働かなければずっと手当をもらえる」というわけではありません。
給付の条件
失業保険を給付されるためには、いくつかの条件があります。基本的には、離職の日以前の2年間に被保険者期間が通算して12か月以上必要です。簡単に言うと、会社を辞める前に最低でも1年は働いていなければもらえないということになります。
また、退職はしたものの、これから再び働く意志があることも条件です。給付されるためには求職活動などの行動で働く意思を示すことも求められます。
給付金額の計算
失業保険の給付金の日額は、給料の金額によって個人差があります。失業保険の日額は以下の計算で産出されます。
辞める直前6ヶ月分の総所得÷180日=賃金日額(働いていた時の給料の日額)
賃金日額×給付率(約50~80%)=基本手当日額(1日あたりの失業保険の金額)
まずは過去6ヶ月間の総所得から、賃金日額(働いていた時の給料の日額)を出します。そこに給付率をかけたのが1日あたりの失業保険の金額です。給付率は年齢と賃金日額ごとに定められています。また、いくら給料が高くても基本手当日額には上限があります。
給付の条件は、12ヶ月分以上の被保険者期間と働く意志 給付金額は、過去6ヶ月間の給料の金額をベースに計算 給付金額には上限がある
失業保険の自己都合退職と会社都合退職の違い
失業保険は退職の理由によって給付開始のタイミングが異なります。退職の理由は自己都合と会社都合に分けられています。会社都合では待機期間と呼ばれる7日間を過ぎたら開始されますが、自己都合ではさらにそこから待つ期間があります。
会社都合の失業保険受け取りはすぐに
会社都合による退職では、7日間の待機期間後すぐに手当を受け取れます。会社都合というのは、会社の倒産やリストラなど、「自分は辞めたくなかったのに辞めさせられた」といった退職理由がメインです。特定受給資格者と呼ばれ、物心両面で準備期間もなく失業したということで優遇されています。
自己都合の失業保険受け取りは3ヶ月後から
自己都合退職の場合には、7日間の待機期間後、給付制限期間が3ヶ月設けられています。つまり、給付を受けるまで、7日間+3ヶ月間かかるということです。自己都合とは、転職したいといった自分の意志で辞めようと思ったケースが当てはまります。
■自己都合でも特別な「特定理由離職者」
自分の意志で辞めようと思ったケースは基本的に「自己都合」ですが、その理由によっては特別に受け取りのタイミングを優遇されることもあります。正当な理由のある自己都合は「特定理由離職者」と呼ばれ、給付制限期間3ヶ月を待たずにすぐ給付 が始まります。自分の意志では辞めたものの、病気になった、事業所の移転や交通機関の廃止で通えなくなったといったどうしようもない事情で辞めざるえなかった人が対象です。
■定年退職は自己都合だけど受け取りはすぐ
定年退職は、一応自己都合に当たりますが、7日間の待機期間後すぐに給付されることになっています。失業保険は受給期間が1年間と決まっていますが、期間延長などの優遇もあります。定年退職は、自己都合といっても一般的な退職とは全く違うものとして扱うべきケースです。
自己都合退職で失業保険を受け取る流れ
一般的な自己都合退職で必要な手続きや準備書類などを紹介します。受け取れる期間を最大限活かすために、決められた日にハローワークに出向くのを忘れないようにしましょう。
退職前に書類確認を
失業保険の受取準備は、退職前からスタートしています。まずは退職後の手続きに必要となる書類の受け取り方や作成してもらう書類を会社に確認しておきましょう。会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」「離職証明書」を作成し、「離職票」を退職者に渡します。「離職票」は退職後の受け取りとなるため、郵送などの手段を確認しておくことが必要です。
離職票を持ってハローワークへ
退職後、最初の手続きをしにハローワークへ行きます。「離職票」は退職後10日以内に会社が手続きして送ってくれるものです。届いたら、離職理由や給料の金額などの欄に間違いがないかを確認してから手続きを始めましょう。手続きが遅くなると、受給開始も遅れます。
待機期間7日間後「雇用保険受給説明会」へ
手続き終了後は、7日間の待期期間を経て、「雇用保険受給説明会」に出席します。待期期間というのは、基本手当を受け取るために仕事に就かないで待つ期間です。説明会では、雇用保険の概要や今後の手続き方法などが説明されます。
転職活動
退職理由に関わらず、失業保険を受け取るには失業していることと転職活動をしていることが条件として必要です。失業していることを確認する「失業認定日」までに初回は3回、2回目以降は2回ずつの転職活動と活動の記録が必要となります。
ハローワークで求人情報を閲覧し、窓口で相談しても良いですし、民間の転職エージェントの利用やハローワーク以外の求人応募・面接なども転職活動に入ります。初回は「説明会」も活動に入るため、残り2回の活動が必要です。
失業認定日、ハローワークへ
失業認定日にはハローワークへ出向き、転職活動の記録を見てもらい、認定を受けます。さらに、次の認定日を指定されるので、再び2回の転職活動をしつつ次の認定日を待ちましょう。
再び失業認定日、ハローワークへ
2回目の失業認定日には、1回目と同じく認定を受けにハローワークへ出向きます。また次回の認定日を示され、転職活動、認定日と同じルーティンが受給終了まで続きます。
受給日、失業保険が銀行口座へ
2回目の失業認定日の後は、自己都合退職の人にもやっと失業保険が給付されます。受け取りは銀行口座への振込です。受給終了まで認定と需給が繰り返されます。
転職エージェントやスカウトサービスもあり、普通の求人検索もできるdodaはどんなスタンスの転職活動にも良さそうだよ。
自己都合でも失業保険を最大限もらうには
自己都合退職は、会社都合に比べると失業保険の金額も期間も少なくなります。その後の転職がスムーズに行くとは限らないので、もらえるものはできるだけ多く、長くもらいたいものです。失業保険を最大限に活かすためには、退職前後の行動が大切になります。
退職までできるだけ残業する
会社の決まりで残業代が出る場合には、退職前の6ヶ月間はできるだけ残業をして残業代を稼いでおくと良いかも知れません。失業保険のベースとなる給料の金額には残業代も含まれます。そのため、計算に使われる期間の給料の底上げに残業代は有効です。
会社都合・特定理由離職者に当てはまらないか検討する
自己都合で退職した人でも、会社都合や「特定理由離職者」に当てはまる条件はないか検討してみましょう。特定受給資格者の条件の中には自分から辞めた場合でも当てはまるケースもあります。
残業過多、通勤困難な移転、給料減や遅延、ハラスメントなど、理由はいろいろあるので、しっかり調べておきましょう。
参考 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要公共職業訓練を受ける
公共の職業訓練を受けると、訓練期間中は手当支給が伸びます。手当を支給されている間に職業訓練を始めると、そこから訓練終了までは受給が継続されるのです。例えば、残り60日の期間だったとしても、訓練が180日ならば、180日間(+120日分)もらえます。さらに受講手当なども支給される可能性があります。
あえて今は手続きしない選択肢も
自己都合で職業訓練も受けない場合には、給付開始も3ヶ月後、さらにもらえる期間も短いといった条件で給付を受けるしかありません。生活費も苦しくなるし、有利な条件でもらえないなら、あえて手続きをせずにサッサと再就職してしまうのも選択肢の一つです。
雇用保険は手当を受け取らなければ、継続も可能ですし、被保険者としての期間も積み重ねられて次回の受給が有利になります。
自己都合の失業保険は工夫して有利に受け取る
自己都合退職の場合、失業保険の給付は基本的に3ヶ月程度待ってからです。より多くの手当てを受け取りたいなら、自分の退職が会社都合に当てはまらないか検討したり、退職前から工夫を試みたりしてみましょう。有利な条件がない場合には、あえて失業保険を使わずに転職する道を選ぶのもおすすめです。