プルサーマルとは、核燃料のリサイクルのこと!
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「プルサーマル、最近よく聞くけど、いまいち意味がわからない単語」という人が多いのではないでしょうか。
プルサーマルとは、核燃料サイクルを表す言葉。2011年の震災・その後の福島第1原子力発電所事故により社会的に「原発をどうするか」という問題が提起されるようになりました。社会人としては知っておきたい事項ですね。
プルサーマルの意味をチェック
まずはプルサーマルの意味と目的を確認していきましょう。意味が分かれば、プルサーマルをなぜ最近ニュースでよく聞くのか理解できるはずです!
プルサーマル=プル+サーマル
プルサーマルとは、原子力発電で使い終わった燃料の中から、まだ燃料として使用できるウランやプルトニウムを取り出して新しい燃料を作り、原子力発電所で再利用することです。
つまり、原子力発電における燃料のリサイクル。プルサーマルは、プルトニウムのプルと、サーマルリアクターを掛け合わせた造語です。サーマルリアクターとは軽水炉のことで、原子炉の種類のひとつです。
プルサーマルの目的って?
プルサーマルの一番の目的は、核燃料の使い回しを行うことで限りあるウラン資源を有効活用することです。また、余剰プルトニウムを持たないことも主たる目的のひとつ。
プルトニウムは核兵器の原料でもあり、その危険性と「核を持たない国」として、政府は余剰プルトニウムを持たない方針を示しています。プルサーマル計画は、プルサーマルを体系化し、進めていく計画です。
プルサーマルで使うMOX燃料とは?
リサイクルは形を変えて活用されることをいいますが、プルトニウムはウランと混ぜられてMOX燃料という別の燃料として活用されます。MOX燃料を利用することで、天然ウラン資源をおよそ1~2割節約できるとされています。
日本のプルサーマルの現状と問題点をわかりやすく
日本において、プルサーマルは機能しているのでしょうか?その現状と問題点を説明していきます。
プルサーマル計画の現状
プルサーマル計画は1967年にはすでに長期計画としてプランが立てられていました。しかし、その現状は今や厳しいものです。2011年の原発事故を皮切りに、「脱原発」論が提唱されたり、電力会社の原発再稼働を巡る「やらせ問題」が発覚したり、この計画の見通しはいまだ不明瞭です。
きっかけとなった「もんじゅ」の事故
1985年の着工以来、1兆円を超す税金が投じられながら、2016年12月に廃炉が正式決定した高速増殖炉「もんじゅ」。このもんじゅは、福井県敦賀市にある原子炉で、かつては「夢の原子炉」と呼ばれていました。高速増殖炉は発電するだけでなく、使った燃料以上の燃料を生み出す、核燃料リサイクル計画の要とされていました。
ところが、1995年12月起きた冷却剤のナトリウムが漏れ出す火災事故が発生。事故について虚偽の報告がされるなどの不正も発覚し、高速増殖炉計画は頓挫。代わりに大量の放射性廃棄物が残りました。この高速増殖炉によるリサイクル計画の代替となるのが、プルサーマル計画だったのです。
日本国内では4基がプルサーマルを実施
政府はこれまで、プルサーマルの実施を推進してきました。2011年の原発事故までは国内で4基の原子力発電所がプルサーマルとして稼働していました。これ以外にも事前合意が成立している4都道府県でも実施が予定されています。
しかし、震災後の安全確保により停止後、「脱原子力」の動きによって復帰の目処がたっていないという現状もあります。
プルサーマル計画の問題点
プルサーマル計画が頓挫している理由には、震災による「脱原発」の動きだけでなく、いくつかの問題点が存在することも挙げられます。
①燃料による事故の危険性 MOX燃料を使用することで、施設破損や漏出のリスクがウラン燃料よりも高まります。 ②施設への安全性リスク 地震など災害の際に事故が起これば、環境へ放射性物質が漏れるなどの影響が激しいとされています。 ③資源還元率は微々たるもの? ウラン燃料の資源を無駄なく活用されるものとされていますが、還元率はそう大きくありません。 ④日本での実績が少ない 先にも述べたように、日本での実績は4基のみ。今後推進するためにはデータが圧倒的に足りません。
世界の国々はプルサーマルを推進しているの?
国外でプルサーマルの動向はどのようになっているのでしょうか。ヨーロッパとアメリカの例をみていきましょう。
ヨーロッパ
ヨーロッパでは、1963年からベルギー、フランス、ドイツ、スイスなどを中心にMOX燃料が利用されてきており、40年の実績を持っています。しかし、近年では縮小の動きとなっており、2011年の福島原発事故を境に縮小傾向は加速しています。ドイツでは、原発自体を2022年までに全廃すると発表されています。
アメリカ
1960年代にプルサーマルが始められたアメリカでしたが、その後20年間ほど中断が続きました。2005年6月からカトーバ1号機でMOX燃料の試験運転が開始され、その後も他の原子炉での試験運転や新施設建設などが進められています。
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プルサーマルの類語・関連語
プルサーマルの関連語は電力会社にいない限り聞いたことがないかもしれません。ニュースで聞くことが多くなった言葉をご紹介していきます。
高速増殖炉
高速増殖炉とは、もんじゅの項目でご紹介した、発電しながら消費した以上の原子燃料を生成するできる原子炉のことです。「夢の原子炉」とも呼ばれていましたが、技術が追いつかず計画は頓挫しています。
核燃料サイクル・原子燃料サイクル
核燃料サイクルまたは原子燃料サイクルとは、原子力発電を維持するための核燃料のサイクルのこと。発電から放射性廃棄物の処理までの全行程を表します。
使用済み核燃料
使用済み核燃料とは、その名の通り原子炉内で使用した後に取り出した核燃料のこと。 余剰プルトニウム、核廃棄物もこちらに当たります。
社会人として関心を持ちたい原発のあり方
原子力については、ニュースや政治でもよく取り上げられます。社会人なら日頃から関心を持っておき、いざ誰かに質問されたときに答えられるようにしておきましょう。このとき、「プルサーマル」の単語を使えるとなおGOOD!