杞憂とは?心配って意味で合ってる?
新人
上司
新人
杞憂を「心配」という意味で使っている人は珍しくないですよね。
でも「心配」というニュアンスだけだと、杞憂の意味としては不十分。何が足りないのかわからないままだと、杞憂の使用法も間違ってしまいます。
使いこなせるとちょっと知的な感じも演出できそうな「杞憂」という言葉。日常会話やビジネスシーンでさらっと使いこなせるようになりましょう!
杞憂の意味とは「取り越し苦労」
杞憂の意味は「取り越し苦労」です。「取り越し苦労」もちょっと難しい言葉かもしれませんね。杞憂のニュアンスを簡単に確認しておきましょう。
する必要のない心配というのが杞憂の肝。ただ心配なだけでは杞憂になりません。
杞憂の語源・由来は漢文
杞憂は、哲学者「列禦寇(れつぎょこう)」が書いた道家の思想書「列子(れっし)天瑞(てんずい)」の巻に由来する故事成語といわれています。故事成語は故事から生まれた熟語。
どんなお話が元になっているのか、簡単にまとめると次のようになります。
古代中国、紀元前周の時代に杞(き)という国にひとりの男がいました。
この男は、天が落ちてきたらどうしよう。大地が崩れたら大変だ。もしそうなったら住む場所がなくなってしまうと心配して夜も眠れず、ご飯も食べられなくなってしまいました。
男を心配した人が、天は大気が積み重なったものにすぎず、自分達は1日中その大気の中で何事もなく生活している。どうして天が崩れる心配をしなければならないのだと言い聞かせます。しかし、心配性の男は納得しません。天が落ちることがないのだとしても、大地が崩れたらどうするのだと心配します。
男を心配する人は、1日中大地を踏みつけて歩き動き回っているのだから、地が崩れる心配なんてないと説明します。ようやく心配性の男は安堵して喜び、男を心配していた人も心配の種が消えて安心しました。
杞の国の人の憂い(うれい)なので、する必要のない心配を杞憂というようになったといわれています。
杞憂の読み方は「きゆう」
杞憂の一般的な読み方は「きゆう」です。
しかし、書物などでは、作者が杞憂にルビを振って「きいう」や「うれひ」「おそれ」と読ませる場合があります。
杞憂の面白い読み方に出会ったら、作者のこだわりを楽しんでください。
「杞憂に終わる」の使い方・例文
ビジネス会話での杞憂は「心配していたけど大丈夫だった」という意味合いや「心配しなくても大丈夫」と安心させるニュアンスで用いられるのが一般的。
新人
上司
「杞憂に終わる」は、心配していたことが起こらずに済んだとほっとしているときに使用する言い方です。
「杞憂に過ぎない」は「そんなことは起こらないから安心しなよ」というニュアンス。
内定をもらった後輩
先輩
「杞憂だと思う」も「そんなことは起こらないから大丈夫」という意味合いです。
杞憂の類語
杞憂と同じように、心配のしすぎというニュアンスをもつ言葉はほかにもあります。
杞憂の類語もおさえておきましょう。
強迫観念(きょうはくかんねん):自分の意志に反してある考えが頭に浮かんでしまって払いのけられなくなること
取り越し苦労:どうなるかわからない将来に対して不安になりすぎ無駄な心配をすること
杞人天憂(きじんてんゆう):杞憂と同じ意味の四字熟語
杞人の憂え(きじんのうれえ):杞憂と同じ意味の慣用句
無駄になるというニュアンスはありませんが、心配するという意味合いの言葉には「懸念」があります。
「懸念」について、くわしくは下記の記事で確認してください。
「懸念」の意味と使い方とは?類語との違いや正しい使い分けを解説!
杞憂の対義語
心配し過ぎの反対は、何事も心配せずに楽な気持ちでいること。このニュアンスをもつ杞憂の対義語には、次のものがあります。
楽天:今の状況は天が与えたものと受け入れて、人生を楽観すること
暢気(のんき):ものごとをあまり気にせずのんびりしていること
気楽:心配や苦労がなく暢気でいられること
杞憂は無用の心配ですが、本当に心配しなければならないときもありますよね。
そのようなニュアンスで杞憂の対義語が必要な場合には「現実的な不安」や「必要な懸念」などの言い回しが使えます。
「杞憂に終わる」の英語表現
「杞憂に終わる」を英語で表現するときには、次の言い回しを用いればOK。
Don’t worry about that.(心配しないで)
Chill out.(落ち着いてください)
「worry」は心配するという意味。「Don’t worry」で心配するなというニュアンスになります。
「chill」は落ち着くという意味。
杞憂民にならないように注意しよう!
杞憂民とは「あれこれ心配し過ぎて他人にも心配の押し売りをする人」という意味のネットスラングです。
無用な心配の押し売りは、うっとうしいだけで何の役にも立ちません。本人は親切のつもりかもしれませんが、職場でこれをやったら確実に同僚から嫌がられますよ。
その心配は本当に必要な心配なのかよく考えて「杞憂に過ぎないから大丈夫!」と逆に周囲を安心させてあげられるような人になりましょう。