「敷居が高い」とは…「レベルが高すぎて無理」という意味?
表参道の美容室は自分には敷居が高い
おしゃれ雑誌で紹介されているのを見ていいなぁと思っても、いざ足を運ぼうと思うと自分みたいなのが行ってもいいのかな?カリスマ美容師に鼻で笑われたりしないかな?と不安になりますよね。
「敷居(しきい)が高い」は自分には「レベルが高すぎて無理」という意味…でよく使われます。おしゃれな店や高級店など自分が行っても大丈夫かなと思う不安な気持ち。
しかし、これは本来の「敷居が高い」ではありません。
「敷居が高い」の本来の意味
「敷居が高い」の正しい意味は「気まずくて家に行けない(会いに行けない)」。喧嘩をしていたり、何か恥ずかしいことがあったりしてその人に会うことを躊躇してしまうことを表しています。
例文で確認してみましょう。
・ご近所トラブルがあってから敷居が高くなった ・約束を反故にしてしまったので敷居高くて挨拶に行けない ・敷居が高いと思っていたが訪れた私を気さくに応対してくれた
ご近所トラブルや約束を反故にしたこと、喧嘩、長年連絡していなかったなど理由があって顔を合わせるのが辛いことが本来の「敷居が高い」。
そもそも「敷居」とは
「敷居」は玄関や和室の部屋と部屋の間にある戸を開け閉めするための溝が付いた横木のこと。この場合は玄関のことを表しています。つまり、「敷居」は家と外との境界線であり、これを越えることは家の中に入ることを意味します。
「敷居が高い」以外でも「二度とうちの敷居をまたぐな!(二度家に来るな!)」といった言い回しがあります。
逆転している認識率
とはいえ、多くの人にとっては本来の意味よりも「レベルが高くて無理」の方がしっくりくるのではないでしょうか。
このような調査結果もあります。文化庁が2008年に行った「国語に関する世論調査」によると、「敷居が高い」を正しく使っている人の割合は42.1%、一方で間違った使い方は45.6%。
割合が逆転しているとはいえ、案外、正しい使い方をしている人って多いんだなぁと思いませんか。しかし、年齢別に見るとまた違った結果に。
なんと10代・20代・30代に限ると70%以上の人が間違った使い方をしています。
辞書にも
2017年発売の広辞苑第七版からは「新しい使い方」も記載されるように。ということで、お馴染みの新しい「敷居が高い」の使い方も詳しく見ていきましょう。
「敷居が高い」の新しい意味
・筋トレ初心者にスポーツジムは敷居が高い気がする ・カリスマ美容師に散髪してもらうのは敷居が高い ・ジャズは敷居が高いというイメージを払拭したい
スポーツジムや美容室など「敷居」とあるように建物(お店等)を訪れるのに、レベルが高そうで躊躇するという使い方が一般的。
また、ジャズや絵画、美容師、モデルなど趣味や人に対して使うことも大いにあります。
「敷居が低い」とは
「敷居が高い」は新しい意味の「敷居が高い」を受けて作られた表現。「気軽に行ける・できる」という意味の表現です。
・フレンチなのに気取らない外観とコスパの良さから敷居が低いと人気に
「ハードルが高い」とは
「ハードル」とは陸上競技でジャンプして飛び越える障害物のこと。「乗り越えるべきもの」と比喩で使われることも多いです。
「ハードルが高い」は「敷居が高い(新しい)」とほぼ同義。もしも、本来の意味からずれた「敷居が高い(新しい)」を使うのに抵抗があるという人はこちらを使うといいでしょう。
「敷居が高い」の類語
本来と新しい意味それぞれの「敷居が高い」の類語表現です。
・合わせる顔がない
・顔向けできない
・面目がない
・難易度が高い ・レベルが高い
「敷居が高い」を英語で
I can’t face him ⇒敷居が高くて彼に会えない
「face(顔)」を合わせられない=「敷居が高い(本来の意味)」。「合わせる顔がない」と訳した方がしっくりくるかもしれません。「I can’t look him in the eye」としても同様の意味です。
I feel self-conscious about entering this expensive brand shop ⇒この高級ブランド店に入るのは敷居が高い
「self-conscious」で「敷居が高い(新しい意味)」を表しています。「hesitate to」で表現することも可能。
どちらの意味も
言葉の乱れとよくいいますが、時代とともに意味も使い方も変わってくるのが言葉というもの。
「気まずくて行けない」だけではなく「レベルが高くて無理」も、「敷居が高い」の新しい使い方として認めていくことが重要です。
また、新しい意味しか知らなかった人は本来の意味・使い方も確認しておきましょう。