「轍」とは「タイヤの跡」という意味
前車の轍を踏む
「轍」は、曲や小説など様々な作品のタイトルで見かけますよね。物だけではなく言い回しの中にも「轍」はよく登場します。
見かける頻度は多いにも関わらず「轍」が何のことかわからない人もいるのではないでしょうか。
「轍(わだち・てつ)」の正体は道にできた「タイヤの跡」。言い回しでは「轍を踏む・踏まない」といった例えで使われます。
「前車の轍を踏む」とは
「轍」を使ったことわざに「前車の轍を踏む」があります。これは転倒した車の轍を後の車が踏んで同じように転倒することを表した言い回し。
転じて「前の人と同じ失敗を繰り返す」という意味で使われます。「前の人」とは前任者や先輩など同じことを以前に行った人のこと。
なぜ「失敗」という意味に?
「轍」を踏むのがなぜ失敗になるのか不思議に思う人もいるかもしれません。
舗装されていない道では深い「轍」ができます。特に雨の日は顕著。深い「轍」にはまるとハンドルがとられて事故につながることもあります。
現代でも豪雪地帯の道路をイメージするとわかりやすいでしょう。
「轍」の読み方は?「わだち」or「てつ」?
「轍」の読み方には「わだち」と「てつ」の二通りがあります。
単体で「轍」を使う場合は「わだち」、「轍を踏む」といった言い回しの中では「てつ」と読まれることが多いようです。
「同じ轍を踏む」は誤用?
「同じ轍を踏む」とよく言いますが、「前車の轍を踏む」ということわざから派生した表現。同じく、「同じ轍を踏まないように」「○○(人名等)の轍を踏む」も同様です。
とはいえ、広く認知されているので問題なく使うことができます。
「轍を踏む」の使い方・例文
「轍を踏む」の使い方を例文で確認していきましょう。
・先人の轍を踏んではならない ・前任者の轍を踏まないように注意する ・倒産したA社と同じ轍を踏むとは愚かなことだ ・一夜漬けで試験に臨んで失敗するという前回と同じ轍を踏んでしまった
基本的に「轍を踏む」と言う場合、「前の人」と同じ行動をして失敗することを指しますが、自分の過去の行動に対して使うこともあるようです。
近年増えている使い方で、これを間違いととらえる人もいるので注意が必要です。
「轍を踏む」の類語
過去の自分と同じ失敗をするという意味のことわざには「二の舞を演じる」があります。気になるようであればこちらに置き換えるといいでしょう。
一夜漬けで試験に臨んで失敗するという前回と同じ轍を踏んでしまった ⇒一夜漬けで試験に臨んで失敗するという前回の二の舞を演じてしまった
「轍」を使ったその他の言い回し
「轍」を使った表現は「轍を踏む」だけではありません。
・故轍(こてつ)⇒前例、昔ながらの方法 ・轍鮒(てっぷ)⇒危険が迫っていること
「故轍」とは
「故轍」は先人の行ったことを「轍」に例えた表現ですが、「轍を踏む」のようにネガティブな意味ではありません。
先人の教えや伝統的なやり方など踏襲すべきものに対して使われます。仏教では昔の聖人の業績を指す言葉。「古轍」と書かれることもあります。
「轍鮒」とは
「轍鮒」は文字通り「轍にいる鮒(フナ)」という意味で、転じて危険が迫っていることを意味する熟語です。
「轍」にできた水たまりであえぐ鮒の不幸な未来は容易に想像できますよね。「轍魚(てつぎょ)」も同様の意味。
「とてつもない」も
「とんでもない」「並外れた」といった意味を持つ「とてつもない」も実は「轍」に関連する言葉。漢字では「途轍もない」と書きます。
「途」は「道」を表しており、「途轍」は「筋道」を表しています。「筋道から外れたこと」=「とんでもない」という意味に。
「轍」から学ぶ
「轍」は本来の意味よりも例えで使われることの多い言葉。凡人から見たら単なるタイヤの跡でも見る人が見ればいろいろと学ぶことが多いのかもしれません。