SPAは意味がひとつではないからややこしい
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SPAは、複数の意味をもっていて、いろいろなシチュエーションで用いられる言葉です。
週刊誌のSPA!は、日本語の連想から誌名が付けられています。一度由来を聞けば、イメージが脳に刷り込まれるような単純明快さがいいですね。でも、ビジネス用語のSPAは、もとが英語などの外来語なので少々厄介。
SPAを正しく使えるように、意味をしっかり押さえておきましょう。
分野別にSPAの意味を確認
ビジネス用語のSPAは、それぞれ別々の意味をもつ英語を略して作られたワードです。当然、略語のSPAが、意味するところも変わってきます。みかけ上同じ言葉なのに、意味がひとつではないのはややこしいですね。
しかし、SPAは、ビジネスで重要な意味をもつ言葉ばかり。ひとつずつもとの語句とあわせて意味を確認していきましょう。
①:経営におけるSPAは「製造小売」
経営におけるSPAは「Specialty Store Retailer of Private Label Apparel」の略で「製造小売」という意味です。
製造小売とは、小売店が自分たちの店舗で販売する製品を自社で企画・製造し、完成した製品をオリジナルブランド商品として販売する形態をいいます。逆に、メーカーが、自社製品を販売するために自社経営の小売店を作る場合もSPAです。
SPAでは、製品の企画から販売まで自社だけで完結するため、中間マージンが発生しません。
②:契約のSPAは「株式譲渡契約書」
契約のSPAは「Stock Purchase Agreement」の略で「株式譲渡契約書」という意味。
株式譲渡契約書は、その名の通り会社の株式を売り買いするときに作成する契約書です。売る人と買う人の合意がなければ成立しないため、売主と買主、さらに立会人の記名押印が必要になります。
③:WebにおけるSPAは「シングルページアプリケーション」
WebにおけるSPAは「Single Page Application」の略。日本語での正式名は、そのままカタカナに直した「シングルページアプリケーション」です。
SPAは、ブラウザを使ったページ遷移(移り変わりのこと)をせずに情報の切り替えをする技術で、Web開発時に用いられるのが一般的。
一般的なWebページでは、Web画面をまるごとひとつの塊としてみています。そのため、閲覧しているユーザーが、何かアクションを起こしてブラウザに変更があった場合は、その都度ページ全体を再読み込みしなければなりません。
それに対して、SPAではWebページを細切れにしてその集合体として考えます。パズルのピースをイメージするとわかりやすいです。ブラウザに変更があったときには、ページ全体ではなく変更があった部分(ピース)だけをピンポイントで読み込みます。
SPA方式を取り入れている企業の例
SPA方式を取り入れている企業は、アパレル業界を中心に増えています。どのようなビジネスでSPAが使われているか、企業の例をみていきましょう。
①:GAP
SPAは、アメリカ最大手のカジュアル・ウエア小売店であるGAPから始まった言葉です[efn_note]参考:アメリカにおける SPA モデルの生成と発展*── ギャップの事例研究 ──|早稲田商学第 420・421 合併号2009年9月[/efn_note]。
GAPは「自分で作ったものを自分で売る」という自社のビジネスモデルを「Specialty Store Retailer of Private Label Apparel」と表現し、これを日本の新聞記者が「SPA」と略しました。
GAPは、それまで店舗で扱っていたメーカー商品を減らし、代わりに自社で開発したオリジナルブランド商品の販売を増やす戦略を選択。
製品生産は、人件費が安いアジアなどの工場に委託し、販促に力を入れることでブランド力を高めました。
②:ニトリ
ニトリは、製品の製造・販売だけでなく、物流まですべてを自社で担う進化したSPAを行っています[efn_note]参考:人が集う場所をデザインするニトリのコーディネート力|NITORI BUSINESS[/efn_note]。
ニトリで販売していて、お客さんが自力で持ち帰るのが難しい家具などの大型商品は、ニトリ独自の物流システムで顧客の自宅まで配達。
ニトリのネットショップで購入した商品を、ニトリの物流システムで注文者が指定した店舗に配送し、そこで受け取ることも可能です。
③:町のお豆腐屋
GAPは、アメリカからきた外来語です。しかし、実は製造小売という販売方法は、日本にも昔からありました。
町のお豆腐屋さんは、自分たちでどんな豆腐を作るかアイデアを考えて製造。できた製品は、自分の店舗で販売しています。規模は小さいですが、立派なSPAですね。
そのほかにも、パン屋さんやお弁当屋さんなどが、同じような形で製造小売業を営んでいます。
SPAの使い方・例文
SPAは、まったく異なる意味をもつ別々の外国語を略して作ったビジネス用語です。
小売業なら「製造小売」、契約する場面なら「株式譲渡契約書」などのように、シチュエーションごとによく使う意味が変わってきます。
それぞれの意味でどのような使い方をするのか、例文でイメージしましょう。
上司
新人
先輩
社長
副社長
新人
先輩
新人
先輩
新人
【海外】イタリアにおけるSPAは株式会社
イタリアでは、株式会社を「Società per Azioni」といいます。
これを略したものが「S.p.A.」。「S.p.A.」は、企業名にくっつけて使います。
【番外編】温泉という意味のSPA
海外では、温泉をスパ「SPA」と呼ぶのが一般的。「SPA」のもとになっているのは「salus per aquam」というラテン語で「水による健康」という意味です。
スパには、温泉だけではなく美容健康系のサービスを提供しているお風呂施設も含まれています。ホテルにスパがあったり、マッサージなどのスパメニューを選べたり。一般的な温泉施設とは違う、贅沢なサービスも楽しめます。
SPAは雑誌の名前ではない!いろいろな言葉の略語
週刊SPA!は、週刊サンケイをリニューアルする形で創刊された総合週刊誌です。週刊SPA!は、響きもよくて印象に残りやすいですが、SPAという言葉にはそのほかにもいろいろな意味がありました。
「製造小売」と「株式譲渡契約書」の2つの意味は、ビジネスマンなら押さえておきたい重要ワードです。
SPAは、Web分野の専門用語や、株式会社、温泉を意味する言葉としても使用されていましたね。
SPAのそれぞれの意味をしっかりおさえて、使いこなせるようになりましょう。