男性保育士の実態についてちょっと調べてみよう!
「男性保育士」という職業は今では聞きなれた言葉ですが、ひと昔前は保育士=女性の仕事と捉えられていました。実際に、1999年の児童福祉法施行令が改正されるまでは保育の仕事に就く者は「保母」さんと呼ばれていたのです。保母から保育士へ正式名称も変わった頃から、徐々に男性保育士の人数も増えてきていますが、現在でも資格保有者の多くが女性という現状に変わりはありません。
保育士を目指す男性が増えていく中で、やはり気になるのがお給料面や働く環境でしょう。本記事では、男性保育士に焦点を当てて男性だからこそ抱える悩みや求められる仕事などをご紹介します。これから保育士を目指そうか悩んでいる男性は是非チェックしてみてくださいね!
男性保育士の割合は年々増加
子供を育てるのは女性の仕事と考えられていた時代から、男性も子育てに参加するようになり育児や保育を男性が行うことに違和感がなくなった現在。保育の現場でも男性保育士が年々増加し、多くの子ども達を笑顔にしています。それでもまだまだ女性保育士との人数の差は大きいのが現実です。では、実際に女性保育士と男性保育士はどのような割合なのでしょうか?
保育士人数 | 男性保育士人数 | 割合 | |
1995年 | 305,096 | 2,515 | 0.82% |
2000年 | 361,488 | 4,666 | 1.29% |
2010年 | 47,4900 | 13,160 | 2.77% |
(総務省国勢調査の推移)
[efn_note]参考:保育士 男性の割合|東京福祉専門学校[/efn_note]上の表は、保育士資格を持っている保育士が、実際に保育施設で就業している人数をまとめたものです。こうしてみてみると、男性保育士の少なさが顕著に表れますね。
1995年は男性保育士の割合は、わずか0.82%でした。2010年も割合でみると2.8%と低いですが、15年間で男性保育士の人数は5倍以上に増えていることが分かります。さらに2019年現在は男性保育士の割合が4~5%にあがっているといわれているので、年々増加傾向にあります。
なぜ男性保育士が増えてきているのか?男女雇用機会均等法が見直され、男性も保育や看護の仕事に就きやすくなったという背景や、男性が育児・保育を行うことを支持する世の中にたこともありますが、やはり保育士の待遇面の改善も影響されています。低賃金とも問題視されている保育士の給与について調べてみましょう!
男性保育士の給与実態
厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、男性保育士の平均月給は259,900円で女性保育士の平均月給は230,300円。全職種の男女合わせた平均月給は268,300円なので、若干平均より少ないということがわかりました。
月給以外の年間賞与を比べてみると、男性保育士も女性保育士も平均賞与は70万円以上なのにたいして、全職種の平均賞与は54万円と保育士の賞与は平均以上貰えていることが判明!保育士の待遇は確実に改善されているようです。
男性保育士のお給料は上がりずらい?
多くの一般企業や公務員は年齢が上がり、昇進していく中でお給料もどんどん上がっていきます。しかし保育士はその上り率が少ないといわれているのです。それは保育園の基本的な運営構造によるものが影響されてるからです。保育園の運営は基本的に自治体からの補助金と保護者からの保育料によって成り立っていますので、入園児数の増減によって施設に入るお金にも増減はあるものの急激に収入が増えるといったことはないのです。
さらに保育園の運営元の種類によって国や自治体から入る補助金も異なっており、社会福祉法人系に比べると、企業保育所や認可外保育施設はお給料も低めと言われています。保育士の男性が30代、40代になった時にふと周りの男友達とくらべてみるとお給料額に差がついてきてた!!なんてこともよくある話。男性保育士が30代以降に転職してしまうことが多いのもこのようなことが原因の一つとして考えられています。
保育士の待遇改善
保育士の低賃金問題はとても深刻。資格は持っているのに就業していない潜在保育士が多いことも待遇の悪さが原因に挙げられます。そんな中、いよいよ国も保育士の待遇改善を始めました。
2017年4月から全ての保育士給与を2%(月額約6,000円)引き上げるとしており、さらに消費税増税がはじまる2019年は保育士待遇改善に予算を投じ月給引き上げを進める方針とのことです。
地域によっても独自の保育士待遇改善が進められており、千葉県船橋市では、市内の私立保育園、認定子ども園、小規模保育事業所に勤務する保育士を対象に月額32,110円、期末手当71,640円の手当てが給料に上乗せして支給されています。
新人
男性保育士に求められていること
男性保育士が少ないからといって女性の方が優れているというわけでは決してなく、男性保育士には男性保育士ならではのやりがいや役割が沢山あります。保育園側からも男性保育士を採用する際には、女性保育士とは異なる期待をしている場合も多いでしょう。男性保育士はどんなことを求められているのでしょうか。
①体力勝負の遊びやダイナミックな保育活動
保育士の仕事は体力勝負!日々の保育時間には子どもと全力で遊んだり、抱っこやおんぶなども長時間する場合もあります。重たい荷物をもったり、行事の際には大道具の運搬作業なども職員同士で力を合わせて行います。そんな時に男性保育士がいてくれるとても助かるのです。
保育内容も男性保育士のダイナミックな体操や全身を使った楽しい遊びなどは子ども達からも大人気。特にやんちゃな男の子達は男の先生が大好きです!
男性保育士と女性保育士が協力して保育指導を行うことにより、子供達の活動も幅広くなり充実した保育活動を行うことができます。
②男性だからこそできるお兄さん・お父さん的存在感
シングルマザーが増えている今、お父さんのような存在として包んでくれる男性保育士さんの需要は高くなっています。女性らしい優しい愛情はもちろん大切ですが、女性保育士とは違うアプローチで子供を励ましたり、叱ることが出来る男性保育士の愛情も子ども達にとってとても大切なもの。
トイレトレーニングなどは、男の子には男性保育士が、女の子には女性保育士が担当してあげると子供も保護者も安心ですよね。保育園に男性保育士がいることで、保護者のお父さん方とのコミュニケーションも豊かになっていくでしょう。
③防犯対策や職場の活性化
女性と幼い園児ばかりの保育園は、防犯対策が心配という声も。物騒なニュースが増えている今、多くの保育園で不審者対策やセキュリティの強化をしていますが、やはり女性職員だけではいざという時に不安な面もあるでしょう。男性保育士がいるだけで防犯対策としても心強く、地域の方々にも男性保育士が務めているということで安心感を持ってもらえるのではないでしょうか。
男性保育士にはこんな苦悩も?!
男性保育士は施設側にとっても、子ども達にとっても必要な先生です。保育士はやりがいのある素敵な仕事ですが、現実は楽しいだけでなく男性保育士ならではの苦悩もあるようです。
保護者や地域住民からの警戒
新聞やニュースでは、「保育士や教職員の男性が問題行動」という記事を見かけることも多くなってきました。同じ男性というだけで、冷たい視線を浴びることもあったり、男性保育士を懸念する保護者がいるのも事実です。保育園では排せつや着替えの援助も保育士の仕事ですが、そのような声が聞こえると一生懸命にやっていることも援助しづらくなりますよね。
上司
収入が低い
男性保育士が退職・転職する際に最も多い原因が収入の低さです。年齢が上がるにつれ、周囲の給料との差に悩む男性保育士も多く、特に男性は結婚を考える時に一度はこのままの職場で良いのかと立ち止ることも多いでしょう。年々保育士の待遇改善が進められてきているので、今後の保育士業界に期待したいですね。
職場で肩身が狭い
保育園で働く保育士は、まだまだ女性の方が多く女社会の中に男性保育士が入るような印象をうけます。男性保育士は自然と女性との関わり方が上手になってくるようですが、保育園によっては男性一人という点で肩身が狭い思いをする方もいるでしょう。
そうしたことが不安なら既に男性保育士のいる園や、更衣室やトイレなど男性保育士用に用意されているような環境の整った職場がおすすめ!園長や副園長が男性の施設では上司との話もしやすいという面もあります。
男性保育士が収入アップを目指す方法
低賃金で悩む人も多い保育士といいう職業。保育園で高収入は望めないのでしょうか?男性保育士が収入アップを目指す方法をお教えします!
公立の公務員保育士になる!
保育園には公立・私立・認可外保育園などの種類がありますが、安定性と賃金保証を望むなら、公立の保育園で働く公務員保育士になることです。公立の保育園で働く保育士は地方公務員に属され、各自治体の地方公務員と同等のお給料や福利厚生を受けられます。
月額平均給与 | 主任保育士月額給与 | 平均ボーナス | |
私立保育園 | 229,000円 | 397,212円 | 603,000円 |
公立保育園 | 279,797円 | 518,548円 | (練馬区職員)1,712,104円 |
公立の保育士の方が年齢や経験によっての昇給率も高く、ボーナスや退職金制度もしっかりされているので将来結婚や子どもが出来ても安心して務めることが出来ますね。
新人
キャリアアップを目指す!
平成29年4月から保育士の待遇改善策の一つとして厚生労働省がキャリアアップ研修のガイドラインを打ち出しました。これは研修を受講し知識・スキルを高め、「副主任保育士」「専門リーダー」という役職に就くとお給料が月額40,000円の手当が出るというものです。
7年以上の経験や4分野以上のキャリアアップ研修受講などが条件となっておりますが、新卒保育士でも7年後にはキャリアアップのチャンスがあるということが分かると仕事のモチベーションも上がり人生設計もしやすくなるでしょう。
保育士を目指す男性におすすめの資格取得方法
男性が保育士を目指す際にはどのような方法が向いているのか、保育士資格が取得できる2つのパターンをみてみましょう。
通信講座で勉強
保育士の養成学校でない学部や大学に通っている男子学生さん・社会人で仕事をしながらの資格取得を目指している方は通信講座で勉強するのがおすすめ!通信講座は学校に通わずに自宅学習を自分のペースでできるのがメリットです。保育士試験の要点を抑えた分野ごとのテキストで集中して勉強できるので、完全に独学で学ぶよりも効率的に知識が身につくでしょう。
上司
保育士試験の受験資格をCHECKする!
保育士試験は誰でも受けられるの?受験資格や受験のポイントを解説!
男子生徒OKの保育士養成校に通う
高校卒業後の進路として保育士を目指している男子学生さんには、専門学校や大学の保育科などの保育士養成学校への進学がおすすめです。厚生労働省から指定されている保育士養成学校で単位を取得し、卒業出来れば保育士試験を受験しなくても資格取得が出来ます。
保育専門の短大や専門学校は、以前は女子学校ばかりで男子学生が入学することすらできないということも多かったのですが、近年は男性保育士の増加や保育士の確保が重要視されていることもあり男子生徒の受け入れを開始した学校も増加。学校の選択肢の幅が広がってきている今、保育士を目指す男性にとって保育士養成校での資格取得も良い方法ですね。
・星美学園短期大学(2019年4月より共学化)
・帝京平成大学(保育・幼稚園コース)
・國學院大學(子ども支援学科)
・武蔵野大学(幼児教育学科)
男性保育士が保育業界を活性化させる!
男性保育士が今後増えていくことは、今後の保育士待遇改善や働く環境の活性化に非常に良い影響を与えてくれるでしょう。子どもは男性・女性などの性別は関係なくあたたかい心を持った保育士さんの元で毎日楽し過ごしたいのです。
子ども達の笑顔に囲まれて仕事が出来る保育士は大変なことも沢山ありますがとても素晴らしいお仕事です。男性の皆さんも是非保育士の道へチャレンジしてみてくださいね!